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防御特化と坑道。

来た道を戻り、メイプル達は遠くから見えていた建物の前までやってくる。それは大規模ギルドのギルドハウスよりもなお大きく、これならクエストを受けるため多くのプレイヤーが集まっても問題はないだろう。


「おじゃましまーす!」

メイプルが扉を開けると中の様子が窺える。中は外観通り広い空間になっており、依頼書らしき貼り紙がされた掲示板とNPCが立っている受付カウンターがいくつも目に入ってきた。

依頼前に落ち着いて相談するためのものとして椅子やテーブルも置かれており、奥には料理やポーションなどそれぞれが売られていることを示すプレートが壁に設置されているのも見える。

階段を上れば二階、三階にも続いており、ここはまさに全プレイヤー共同の巨大ギルドといった様子だった。


「おおー!広いねー!」


「奥によく使うような店も揃ってるみたいだし、ここ中心で動いても大丈夫そう」


「後で品揃え確認しておかないとな」


「そうね。層ごとに新しいアイテムも増えるもの」


「あとはクエストがどうなっているかだが……」

これだけプレイヤーがいるだけあって混み合わないようカウンターと掲示板それぞれの前でクエストを受けられるようになっている。メイプル達は早速現在受けられるクエストについて確認することにした。

とりあえず掲示板の前に行くと目の前に青いパネルが出現し、そこにクエスト名がずらっと並ぶ。さらにそれを選択することでより詳しい内容も見ることができる。


「おおー、いっぱいあるね!」


「これなら全員自分に合っているクエストを選べそう。戦闘、採取……物資運搬とかもあるよ」


「城へ行くのを指示してきたメインっぽいクエストは、ここでクエストを受けることとだけ書いてあるからどれ受けても問題ないんじゃないか?」


「そうね。だからきっとこれだけ種類も多くしているのよ」


「それを確かめるためにも皆で別のを受けてもいいかもね。僕らの人数である程度クエストとその後の進展を把握したいならさ。ほら、隣の国もあるなら尚更」


「では早速どれか受けてみるとしよう」


「私達ができそうなのは……」


「どう?お姉ちゃん、何かありそう?」

それぞれクエストの内容を確認すると、クリア条件を達成できそうなものを選んで受注する。


「おしっ、何か変化があるまではクエストをこなしてみるか!」


「受けた中で他の人でも楽にクリアできそうなら共有していく感じでいきましょう」


「じゃあ皆頑張ろー!」

こうして八人はそれぞれが受けたクエストが示す場所へと向かっていくのだった。



同じクエストを受けたメイプルとサリーは二人で町から少し離れた高い山へとやってきていた。山肌は傾斜がきつく、木々は切られて水と氷が重力に逆らって浮かんでおり、その間を縫うように足場が組まれ、山の中へと大穴が続いている。

どうやらここは坑道になっているようで、NPCが歩き回っており、中から煌めく結晶を掘り出してくる様子が見てとれる。


「NPCが多いのも九層の特徴みたいだね」


「今まで町の外はプレイヤーばっかりだったもんね!」

王国を中心に城壁外にも建造物は存在する。今回のような坑道もその一つというわけだ。そうしてNPCが忙しなく動き回る中、作業服を着て、指示を出している筋肉質で大柄な男の上にクエスト進行用の表示があるのが分かった。


「あの人に話を聞けばいいのかな?」


「行ってみようか」

とりあえず近づくと、それに気づいた大男は二人の方に向き直って話し始める。


「おう!あんたらが依頼を受けてくれてくれたのか!助かるぜ。こっちだ」

そう言うと男は山肌に沿って歩いていき、しばらく行ったところで上を見ていくつかある坑道を指差す。


「この中に魔物が住み着いちまってな。ちっとばかし数が多いんで作業ができない状態だ。腕に自信があるんだろ?こいつをなんとかしてもらいたい」


「はい!」


「中にいるのは冷気を使うヤツだ。氷漬けにされねえように気をつけな」


「分かりました!」

メイプルが元気よく返事をしたところで、大男は元の場所へと戻っていく。モンスターが中にいるというだけあってこの辺りにはNPCはいないようで、先ほどより遠くから聞こえるようになった作業音だけが響いている。


「中にいるみたいだけど、どうする?」


「シロップに乗って近づいて一個ずつ入ってみるのはどう?」


「うん、そうしよう。上下移動は慣れたものだね」

メイプルはシロップを呼び出すと【念力】によって浮かび上がらせ、山肌に開いた穴の一つにそのまま横付けする。


「シロップありがとー」

メイプルは坑道に降りたところで一度シロップを指輪に戻す。巨大化したシロップに乗ったまま入れるほど広い造りではないのだ。


「ダンジョンってわけじゃないんだね」


「そうだね。その分狭いし……私はちょっと戦闘しにくいかも」

足場の状況も悪く、二人が並んで歩くので精一杯の道幅では機動力を活かしたサリーの戦闘スタイルは良さを発揮しきれないだろう。


「じゃあ私の出番だね!」


「そういうこと。頼んだよ」


「まっかせて!」

今回のクエストはシンプルにモンスターの討伐である。奥に出てくるモンスターを一定数討伐すればクリアとなるといったものだ。


「【身捧ぐ慈愛】【砲身展開】!」

メイプルはいくつもの砲口を前方に向けながら先頭を歩いていく。サリーの回避を狭い通路が阻害しているため【身捧ぐ慈愛】も発動し、攻撃、防御ともに準備は万端だ。

そうしてしばらくあるいていくものの、それらしきモンスターは出てこない。


「まだ特に気配はないね」


「うん、前はしっかり見てるよ!だからだいじょう、わあっ!?」


「メイプル!?」

前方の警戒をしていたメイプルが、サリーの目の前で派手にすっ転ぶ。流石にこれくらいでは兵器も壊れはしなかったものの、メイプルはサリーの手を取って何があったのかと立ち上がる。


「……前だけじゃなくて下も警戒しておかないとダメだったね」


「……?あっ!凍ってる!」

触れてみるとつるつるとした手触りが返ってくるうえ、よく見ると光が当たった部分は凍っていることを示すように光を反射していた。


「戦闘中に転んでたら隙を突かれるし、ここからは慎重に歩こう」


「うん!びっくりしたー……見えないところから攻撃されたかと思っちゃった」

戦闘中の足元には警戒することにして、メイプルとサリーはさらに奥へと慎重に歩を進めるのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 見えないところから攻撃されても、果たして傷を負わせる事ができる者が居るだろうか・・・・・・・
[一言] メイプルはまたなんか…..
[一言] ここ数日の投稿ありがとうございます。 作品が読める喜びは良いですね。
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