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防御特化と王城。

宿、すなわち九層のギルドホームへと一度入った一行は、クエストが示している王城とやらに向かうことにした。


「ねえねえサリー、あれだよね?」


「流石にそれで合ってるはず」

ギルドホームからでた八人が目指すのは遠くに見える白く美しい大きな城だ。

そこに続くように幅の広い道が伸びており、他のプレイヤーはもちろんのこと、たくさんのNPCも歩いていて、今いる場所は賑わうメインストリートといったところだろう。


「町自体はかなり広いな。四層なんかの時も広いと思ったんだが」


「ここはそれ以上のようだ。町を一通り見て回るだけでも中々時間がかかりそうだ」

八人は城へと続く階段を登りながら、眼下に広がる城下町を眺める。高い外壁の側まで続く町並みと何本かの大通りが確認できた。歩いてみればこの町のあちこちに様々な店を見つけることができるだろう。


「まだもう一つあるっぽいから、行けるところは多分これの倍だね」

サリーが言うように逆側のエリアにも町らしきものは見えた。対比させているというのなら大きさや構造も似ているものになるだろう。


「おー……皆で協力して見て回らないと!」

フィールドも広いが、それはそれとして拠点となる町の広さはこれまでにない規模となるだろう。フィールド探索も大事だが、ヒントやクエストのきっかけが町の中にも転がっていることはここまでの層で確認できている。


「今回は僕は町の中担当かな」


「今回も。じゃないかしら」


「あはは、そうだね」


「これだけ広ければ戦闘以外でも退屈しなそうだな」

そうやって話しているうちに階段を上り終えた八人は、遠くに見えていた城の正面までやってきた。開かれた城門からは建物へと続く道が見えており、その両側には整備された庭園が見える。

門の前には町へ入ってきた時と同じように兵士らしきNPCが両側に立っており、メイプル達が近づいていくと話しかけてきた。


「旅の者か。面白い時期に来たものだ」


「何かあるのかなサリー?」


「さあ?時期っていうと何かイベントとか?」


「案内する。ついて来るように」

そう言うと兵士は先導して城の中へと入っていく。ここはついていく他ないとメイプル達は先を行く兵士の後を歩いていった。

城は中まで作り込まれているようで、入ってすぐのエントランスからいくつもの通路が伸び、壁や床、天井に至るまで、綺麗な装飾がなされていた。


「他の廊下も歩いていけるのかなあ?」


「クエストの進み次第で、とかじゃない?作っておいて入れないってこともないと思うし」

廊下を歩き、階段を上り、メイプルが物珍しそうにキョロキョロと周りを見ていると、先導していた兵士が一つの大きな扉の前で立ち止まった。


「この先だ。入るといい」

兵士は短くそれだけ言うと、その手で扉を開け、ようやくメイプル達にも中の様子が分かった。

部屋はボス部屋よろしく縦に長く伸びており、見るからに強そうな兵士がずらっと両サイドに並んでいる。そしてその最奥には玉座に腰掛け、王冠を被り、白い髭を蓄えた一人の年老いた男がいた。


「王様かな?」


「見た感じそうじゃない?こんなに簡単に通しちゃって大丈夫なのかとは思うけど……」

メイプルとサリーがひそひそと話していると王様の方から声がかけられる。


「旅の者よ。良い時期に来てくれた」


「サリー、やっぱり何かあるみたいだね」


「うん。聞いてみよう」


「近々、隣国と一年を左右する祭事が執り行われる。旅の者もこれに参加することが可能となっている」


「なるほどー」


「それがイベントかな?あ、クエストも進んだね」

サリーの言うように、この国に入った際に自動的に受注したクエストが一段階進行し、【陣営を決定する】というものになった。

このクエストには時間制限があるようで、それがイベントの開始を示すものであるだろうことはメイプルにも理解できた。


「入国時に光を浴びたことで、現在は我らの陣営となっておる。……当然、変更も厭わない。そういう取り決めである」

同じように逆側の国へ入れば光を浴びて陣営が更新されるというわけだ。さらにどちらにも属さなかった場合はどちらかの陣営に割り振られるということも伝えられる。その上で、戦闘に参加するかはあくまで自由となっている。


「これは力を示すためのもの。例年、命の心配もなく、魔術によって顕現する現実の複製の中での城攻めとなっておる。我が国に属するというのなら、その力期待しておるぞ」

つまるところ次のイベントは、このフィールドと同じ場所をイベントフィールドとして互いの国の最奥にある城を落とすことが目標となるわけだ。

地形を生かした戦闘も、隠密しての潜入も、物量による正面突破も可能となり、戦略の幅は広い。

もっとも以前のギルド対抗とは違い、その規模は何倍にも膨れ上がっている。ことなるギルドのメンバー相手に指揮を取るというのも難しいだろう。連携といっても口で言うほど簡単ではないのだ。


詳しいルールまではまだ分からなかったものの、これで戦闘形式や最終目標ははっきりとした。どちらの陣営にも属さないプレイヤーとは九層に来ていないプレイヤーも含めるようで、既に到着しているプレイヤーのアドバンテージは地形や設備の詳しい情報を手に入れ準備ができることにあるだろう。


「何かあれば来るが良い。来るものは拒まんからのう」

王がそう言うと八人を案内してきた兵士がまたメイプル達を部屋の外へと誘導する。

そうして部屋から出たところで兵士は前を向いたまま言葉を発する。


「私としては味方になることをすすめるぞ。向かいの国の王も強力だが我らが王はさらに強い、実際見てみるまでは実感も湧かないことだろうが」

自分の国のトップを良く言うのは当たり前といえば当たり前だが、それを差し引いてもその言葉には真実味があった。この口ぶりだと城攻めの際には王様とも戦うことになるだろう。


「王様強いんだね……」


「お爺ちゃんはゲームだと結構強かったりするね。戦闘スタイルとか分からないし、今回のところは実際やってみるまで分からないけど」


「そういうものなんだ」

サリーの解説にメイプルはなるほどと頷く。そうしてそれぞれが感想を口にしているうち、メイプル達は入り口まで戻ってきた。


「戦闘に備え準備も進められている。城を出て町を見下ろせば正面に目立つ大きな建物が見えるはずだ。手を貸すつもりがあるのならそこへ出向くといい。依頼がいくらでも貼り出されているはずだ」


「はーい!」


「となると次はそっちだな」


「そうね。クエストも次に進んだみたいよ」


「いくらでもということなら、おそらくそこから分岐していくということなのだろう」


「NPCも戦闘参加するみたいだし、僕らが今後もし逆側につくなら敵陣営を強化することになっちゃったりするのかな?」


「ありうるね。でも、まずはその依頼っていうのを見てみないとかな」


「やりやすいものがあるといいんですけど……」


「私もお姉ちゃんもクエストってあんまり受けたことないですし」


「まあ、多分問題ないと思うぞ。一応九層のメインとして用意されてるものだからな。全く進められないようなものにはなってないだろ」


「はい!」


「が、頑張ってみます……!」

得手不得手がはっきりしているマイとユイなどは、クエストとして提示されているものをクリアできないことも十分ありうる。モンスターの撃破ならいくらでもできるが、他の能力値を要求するようなものはどうにもならない。


「じゃあまずは行ってみる感じで!」


「だね。それに、このメインクエスト以外にもイベントはきっと盛り沢山だよ」

城下町は広く、フィールドはさらに広大だ。これまでの層のことを考えても、隠しイベントはどこかにいくつもあるのだろう。


「そうだね!クエストだけじゃないもんね!」


「ふふっ、面白いもの一つでも多く見つけられるといいね」


「うん!建物は……あれかなあ?」

メイプルは遠くからでも分かる、周りより大きく、高さもある立派な建物を指差す。


「みたいだね。クエストに目的地も出てるし、間違いない」


「よーし、急ごっサリー!」


「はいはい。転ばないようにね」

そうして、メイプル達は建物目指して足早に長い階段を下りていくのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 我、悪い王様じゃないよ(ぷるぷる)
[一言] メイプルがいるのに、「隠し」を毎回用意する…… 次は何になるかなぁw
[一言] 城攻めかぁ 楓の木で上から城に強襲とかしたら防衛側阿鼻叫喚じゃねぇかな(
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