表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
393/574

防御特化と九層2。

九層にやってきた八人はさてどうしたものかと思い悩む。というのも、目の前には今までとは違い二つの町が見えているからだ。

片方は自然豊かで、所々水や氷でできたオブジェクトが重力に反して浮かんでいるのが見えるエリアが広がっており、その奥に白を基調とした町が見える。

もう片方は荒地が広がっており、空に雷、大地に炎が走っているのが特徴的なエリアで、奥には黒を基調とした町が見える。


「どっちに行こう?」


「多分機能とかに大きな差があったりはしないだろうけど……雰囲気は違うだろうし、気に入った方に行くのがいいよ」


「まだまだ何も分からないからな。入ってすぐどっちかの町から出られなくなるってこともないだろ。両方見に行けるんじゃないか?」

これといって選択に関するゲーム側からのメッセージもない。現状どちらかの町を拠点として選択するということはなさそうだ。


「じゃあ……こっちの森の中の方から!」

メイプルはそう言って流れる水と豊かな森、そしてその合間に大きな氷の橋や階段なども見える方のエリアを指差す。


「ああ、ならそっちから行くとしよう」


「両方行って色んな素材を集めてこないといけないかもしれないわ」


「確かに、僕らが手に入れられる素材に差があってもおかしくないね」

エリアが二つに分かれており、それがある程度の広さを持つように作られているため九層も探索する場所は多いだろう。


「じゃあまずはこっちですね!」


「ユイ、あんまり走ると危ないよ?」


「行こうかメイプル」


「うん!とりあえずここから降りないと!」

八人は丘を降りて森の方へ進んでいく。

森の中は所々小川が流れ、水が湧き出しており、水溜りも多い。そうしてぴしゃぴしゃと音を立てながら歩いていると、まるでサリーの【水の道】のように、空中に水の塊が浮かんでいるのを発見する。遠くから見えていたのはこれのようで、今までの層にもこれに似たモンスターはいたものの、今回はそうではないようだ。


「モンスターじゃないみたいだな。こういう地形ってことか」


「向こうには氷の塊も浮かんでいる。柱も見えるぞ」

上から見えていたものはどうやらモンスターがいる証というわけではないようだ。

逆側のエリアにおける溢れる溶岩等に対応しているということなのだろう。


「町は近いし、寄り道はギルドホームに着いた後でかな?」


「そうだね。まずは町まで!」

町までの道には特にモンスターもおらず、八人は丘の上から見えた町まで辿り着くことができた。


「遠くから見た時も思ったけど、今まで町とはまたちょっと違う感じだね」


「すごい壁……ねえねえサリー、町を囲ってるのかな?」


「多分ね。役割的にもそれが自然だし」

町の周りは背の高い壁でぐるっと囲われており、さらに堀がその周りを囲っている。高い場所から降りた今、町の中は堀にかけられた跳ね橋の向こうの入り口からちらっと見えるだけだ。

フィールドとの境界が今までよりはっきりとしているのは大きな違いだろう。

八人が跳ね橋を渡っていくと、正面の入り口上に設置されたクリスタルから淡い光が照射される。しかし、現状特に何かがあったわけではないようでそのまま進んでいくことができた。

そうして跳ね橋を渡り切ったところで、入り口両側にいるがっちりと鎧を着込んだ衛兵らしきNPCから声がかけられた。


「旅の者か。宿を取ったなら中央の城まで行くように」


「分かりました!」

メイプルは元気に返事をすると、そのまま一番乗りで町の中へと入っていく。

ここまでに何層かあった層ごとの特殊なテーマに則って作られた町とは違い、九層のこちら側の町は美しい西洋風の建築物が並び、不思議な力で形状を留める水と氷で装飾された町並みの向こう、中央の少し高くなった場所に白亜の城の建つ、そんな城下町が九層の拠点の一つだった。

八層が完全に水没しており町の形状も特殊だったこともあり、普通の町も随分久しぶりに見たような気がしてくる。


「っと、ちゃんとクエスト形式で表示されたな。今までとはちょっと違うみたいだ」

クロムの言うように全員の受注中クエストの部分には【王城へ向かう】という表記がされている。


「今回はこれをこなしていくような層の可能性があると思うがどうだろう。向こうからやって来たクエストだ、放っておいてもいいことはないんじゃないだろうか」


「そうねー。これを進めてくれって感じよね」


「じゃあ、ギルドホームに着いたら皆で!」


「はい!」


「行きましょうメイプルさん!」

次はクエストだと前を行くメイプルとそれに着いていくマイとユイ。五人はそんな三人を見守りつつ後を追う。あの三人なら走っていかれても見失うことはないだろう。


「メインクエストに当たるものは皆同じかな?枝葉がどこまで広がってるかだけど……」


「僕は手が空いたら逆の方見てこようかな?どっちも知れた方が作戦は立てやすいだろうし」


「なら私もそうしようかしら。メイプルちゃん達がこっちを探索してくれるならこっち側の素材は集まるでしょうし。できるなら全部早めに手に入れたいわ」


「じゃあイズさんとカナデはそうしてくれると助かります。このフィールドそのものが対人戦に使われることも考慮して」


「俺とカスミも探せるものは探すぞ。堅実さは俺達で担保だ。で、偶然に助けられる必要があるようなものはあの三人に任せればきっと問題ない」


「問題ない、というのも変な話だが……そう思えてしまうな」


「いつも通り楽しくやってくれていれば、きっといい結果も転がってくると思います」


「だな」

前を行く三人を見つつ、対人戦への備えについて五人は話す。メイプル達は確かに強力だが、それにかまけてはいられない。良い結果に繋げるにはそれ相応の準備も必要なのだ。

元々入念な準備をするのが嫌いでないサリーは、今回も作戦を用意するためいち早く準備に取り掛かるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] ギルドホームって最初に向かった方の街に生えるんでしょうか? 以降の話でも両方にあるような描写は無かったので
[一言] 更新されて良かった…
[一言] 更新ありがとう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ