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防御特化と試練3。

戦闘体勢を取った直後、レーザー装置から二人に向けて極太のレーザーが放たれる。【身捧ぐ慈愛】があるとはいえ当たらないに越したことはないと、素早く飛び上がったサリーはそのまま唯一レーザー装置がない転移の魔法陣がある通路の前に着地する。部屋の中心ではレーザー全てをその身で受けて、視認できなくなったメイプルがいる。


「大丈夫?」


「うん!作った武器は壊されちゃったけどダメージはないみたい!わっ!?」

そう言っていたメイプルが凄い勢いで背後のサリーの方に吹き飛んで来るのを見て、サリーは咄嗟に受け止める。が、しかし、メイプルの勢いは止まらずそのまままとめて吹き飛んでしまう。


「ちょっ!?壁ないし転移の魔法陣に突っ込まれる!」


「えっ!?えっ、て【天王の玉座】!」

度々メイプルにストッパーとして使われる玉座は今回もいい働きをしてくれた。瞬間的に現れ不動の壁になることでメイプル達はそこに激突し、ノックバックのまま魔法陣に放り込まれて強制退場という幕切れは阻止することに成功した。


「さて、どうしようかな……」


「前もこうやって壁に押し付けられちゃったんだよね」

二人の後ろには転移の魔法陣、前方は通路になっており、真っ直ぐ先程の広間に続いている。真っ正面には兵器を展開する機械神がおり、今もノックバック効果のある弾を撃ち続けているため、二人は玉座に押し付けられている状況である。もし、広間に戻れば射線が通るようになったレーザー兵器も攻撃を再開することだろう。


「んー、この後もボスがいそうだし……出来る限り節約して切り抜けたいところだけど」


「考えてても大丈夫みたいだからじっくり考えよう!」


「いつもの戦闘中作戦フェイズだね」

サリーは慣れたものだと現状を把握していく。メイプルの防御力のお陰で時間はいくらでもある。作戦フェイズを挟むことで、きっちりと意思を統一してこの後の行動に移れるため、これも隠れたメイプルの強みと言えるのかもしれない。


「【身捧ぐ慈愛】は通路を出て少し外まで続いてるし……試すのはアリかな」


「うん。さっきのを見てる感じだと、レーザーにはノックバックの効果はないみたいだし機械神の弾さえ当たらなければここから動けるよね」


「うんうん」


「私が避けて通路を走りきる。上手くいったら【変わり身】で入れ替わって真後ろが通路にならないようにしよう」


「分かった!」

【身捧ぐ慈愛】があればもう一度吹き飛ばされてくるだけで、失敗しても死んでしまうことはない。


「よし、行くよ【氷柱】!」

サリーが目の前に氷の柱を立てるとそれが銃弾を遮り、ノックバックからは解放される。しかし、狭い通路の中央に障害物を置いたことで、両脇に銃弾が集中し、このままでは結局ここからは動けない。サリーは頬を一つ叩くと、大きく息を吐く。


「頑張って!」


「任せて」

サリーが【氷柱】を解除すると正面から高速の弾丸が次々に飛来する。


「ふっ……!」

サリーは小さく息を吐き体を捻り銃弾を回避する。全く隙間などないように見える場所を、まるで銃弾がサリーを避けて曲がっているかと錯覚するように、発射時の僅かな時間差が生んだ隙間を駆けていくのだ。

避けられないものはダガーで弾き、何百もの弾丸をないもののように足を止めずに進んでいく。


「その銃メイプルの方がよっぽど使い込んでるかもね」

最後にスライディングで弾幕を躱し、横っ飛びに移動すると【変わり身】を使用してメイプルと位置を入れ替え、脱出させる。


「おおー!すごい!一発!」


「そのままそっちまで行くから、しばらく撃たれててくれると助かる!」


「おっけー【挑発】!」

メイプルは銃弾とレーザーの照準を自分に向けさせると、それを身体で受け止める。ダメージがないことは分かっているため、問題はない。そうしているうちに狙われなくなったサリーが歩いて通路から出てくる。


「ふー……脱出完了と。じゃあ反撃といきますか」


「サリー!どうするー!」

銃弾がぶつかる音にかき消されそうになりつつメイプルはここからどうするかを聞く。


「まずはレーザー装置から!ダメージはないけど邪魔だし!」


「うん、前見えなくなっちゃうもんね!」


「私に攻撃が向いたらその瞬間にメイプルもレーザー装置を狙って!」


「分かった!」

絶え間ない攻撃さえなくなればもう一度兵器を展開することもできる。こういった状況ではメイプルの耐久力に兵器の耐久力が追いつけず、展開してすぐバラバラにされてしまうため、まともに使えないのである。

サリーはメイプルの前に氷柱を作り、何があった時のために、はみ出してしまわない部分展開程度ならできるようアシストすると一番端のレーザー装置から順に破壊していく。


「【クインタプルスラッシュ】!」

【ダブルスラッシュ】が十六連撃に化けたように【クインタプルスラッシュ】は四十連撃になる。一撃一撃のダメージは少ないものの、本来四十回攻撃するのにかかる時間と比べると圧倒的に短い時間でダメージを出し切れるのが強みと言える。

結果、凄まじいバーストダメージが出てレーザー装置は一気に爆散する。


「なんだ、案外脆いね。次!」

これなら次々壊していけると、二個目の装置を破壊したところで、攻撃対象がメイプルから破壊工作を続けるサリーに移ったのか、兵器と機械神が一斉にサリーの方を向く。


「いいよ。一つずつ壊して回るのも面倒だし、ちょうどよかった」

サリーはそう言うと自分のいる場所に収束してくる何本ものレーザーを飛び上がって躱し、そのまま空中に足場を作って着地すると、飛んできた弾丸を全てダガーで撃ち落とす。

火花が散り、金属同士のぶつかり合う音が響く中、ダメージエフェクトは一切発生せず、そのままレーザーをひらひらと躱しながら、攻撃を引きつける。そうして、ようやく完全にフリーになったメイプルは兵器を展開する。


「【全武装展開】【攻撃開始】!」

メイプルは各砲口をそれぞれのレーザー装置に向けると一気に攻撃を開始した。

機械神がいくつものレーザー装置を用意できたように、それと同じ名前の力を持つメイプルにも似たようなことができる。

メイプルがきっちり攻撃力を有しているのは大きく、これによりサリーの攻撃参加が難しくとも敵の撃破に持っていけるのだ。

同時に攻撃された残るレーザー装置は纏めて爆散し、部屋の中には機械神本体だけが残される。


「メイプル!何か起こる前に一気に決めるよ!」


「うん!」

再びメイプルに銃口が向けられたのに反応し、サリーは一気に懐まで入ると、再度連撃を繰り出す。


「【セクスタプルスラッシュ】!」

ずっと使い続けている基本の連撃スキル。モーションもシンプルで追加効果もないが、サリーにはこのスキルで十分だった。

攻撃に合わせて炎と水が舞い散り、ダメージを加速させていく。ただ、何十という連撃を叩き込めば当然連撃中でも銃口はサリーに向くだろう。


「【カバームーブ】【ヘビーボディ】!」

それはメイプルも分かっていることであり、高速移動によってサリーの隣までやってくることで【身捧ぐ慈愛】により攻撃を引き受ける。さらにまだまだ使い慣れない【ヘビーボディ】でノックバックを無効化する。代わりに移動できなくなるものの、サリーがギリギリまで接敵していてくれたため、問題なくメイプルも攻撃に参加できる。


「【水底への誘い】!」

メイプルは片腕を触手に変形させると機械神の胴体を握り潰すように飲み込んでサリーの連撃のそれを上回るダメージを出す。いくつもの砲口はゼロ距離射撃によって機械神の体に穴を開け、一気にHPが減少する中、機械神はより大量の兵器を展開する。


「っと、先に倒し切る!【跳躍】【ピンポイントアタック】!」

サリーは高く飛び上がり機械神の真上を取ると、空中で体勢を整えてダガーを振り抜く。それは頭部から順に体を半分に裂き、今にも火を噴かんとしていた大量の兵器は、機械神の死亡とともに崩れ落ちていくのだった。


「ナイスー!」


「うん、メイプルも。あと悪食は五回だね、兵器の残量は大丈夫?」


「うん!まだまだ余裕だよ!」


「じゃあ【ヘビーボディ】が切れたら真ん中あたりまで戻ろうか」


「はいはーい!それまでに出てきませんように……」


「なんとなく何がくるか予想はできてるけど。メイプルと二人で戦えるのはちょっと楽しみ」


「頑張ろうねー!」


「当然。何がきても負けないよ」


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― 新着の感想 ―
[良い点] オプション付きとはいえ過去に一度ソロで倒しているボスなのでそれほどの苦戦はしませんでしたね。 [気になる点] 氷柱を帰還魔法陣の手前に出せばノックバックで押し込まれなかったのではないだろう…
[一言] ヘビーボディなんだかんだ習得してたんですね… 3代目機械神の前にはコピーされた機械神(2代目?)も形無しですね
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