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防御特化とのんびり2。

ケーキを食べ終えた二人は満足気に店を出て、二人で町を見て回ると、今度はフィールドに出ることにした。


「一層ならメイプルは鎧とかなしでも大丈夫でしょ?」


「ふふふ、もちろん!VIT四桁あるもん!」

メイプルは念のために目立ちにくい短刀だけは装備しておいて、大盾などはしまったままである。

あんな派手な大盾を出せばメイプルだということはすぐに分かってしまう。


「戦闘は私に任せてよ。一層のモンスターなんかには負けないからさ」


「うん、任せる!」

二人は町の出口まで歩いてきたものの、さてどっちに向かおうかと考える。


「どこ行こうか?」


「メイプルの思うままっていうのでもいいけど。そうだなあ……」

サリーはそう言ってマップを開く、するとメイプルもそれを覗き込んでくる。


「前に一層を探索した時に、こことここは行ったよね。あとここ地底湖でしょ?」


「うんうん」


「面白いイベントとか秘境っぽい所とかは一箇所に固まってあるわけじゃないと思うんだよね」


「確かにそうかも!」


「じゃあ、行ってない場所……この辺りかな。こっちの方を中心に行ってみない?」


「うん!そーしよー!」


「決定!じゃあ久しぶりに、乗ってく?」


「乗ってく!」

シロップの空中浮遊も【暴虐】もメイプルを象徴する移動手段である。それを使わないとなれば、移動方法はこれに決まる。

メイプルが背に乗って、しっかり肩に手を置いたことを確認してサリーは駆け出していく。


「最初は本当に遅かったもんね!」


「今はちょっとは克服できたよ!」


「今だとメイプルの背中に乗ることの方が多いしね」


「恩返しって感じで!」


「はいはい、モンスターは出来る限り避けていくよ!」

サリーのAGIも上がっているため、一層にいた頃よりも遥かに速く風を切って駆けていく。


「ふふっ、目的地までしばらくお待ちくださいっ!」


「はーい!」




こうして二人はまず目星をつけた場所までやってきた。陽の光が差し込み鳥の声が聞こえてくる森の入り口で、サリーは立ち止まってメイプルを下ろし、マップを再確認する。

「ここかな。かなり広い森になってるから何かあるかもね」


「全然他の人いないね。今でもこんなに綺麗なのに!」


「町から結構遠いから一層にしてはモンスターも強い方なんじゃない?」


「なるほどー。人がいない間は【身捧ぐ慈愛】使う?」

サリーがそう簡単に攻撃を受けるとは思えないものの、HPとVITは一層から変わっていないためレベルが上がれど一撃死なことに変わりはないのだ。


「のんびり歩き回る予定だし、お願いしようかな」


「はーい!」

メイプルは【身捧ぐ慈愛】を発動させると、サリーをその範囲に入れて森の中へ入っていく。サリーの言うように森はかなりの広さなため、マップを見つつ同じ場所を歩き回ってしまわないように探索する。


「あ!リスだよサリー!」


「飛びかかってきてるけどね!」

森の中で動き回っているようなものは大抵がモンスターである。通常より少し大きいリスは素早い動きで茂みからメイプルに飛びかかるが、メイプルは両手を広げてそれを受け止める。ふわふわとした毛並みをしたリスは絶えず引っ掻いてくることを除けば可愛らしいものである。


「キャーッチ!」


「服の耐久値だけは気をつけてね?」


「あ、そうだね。じゃあ……ここに乗ってて!」

メイプルはリスを頭に乗せると手を離す。忙しなく頭の上から首辺りまでを動き回って攻撃しているものの、有効打はないようだった。


「町の近くは昆虫系のモンスターが多かったし、見る分にはこっちの方がいいね」


「うん!他にも飛びついてこないかなあ……あっ!」

メイプルの頭に乗せていたリスは有効打がないと悟ったのか、頭から飛び降りて茂みの中へ逃げ去ってしまう。


「そっかー、逃げちゃうもんね」


「まあ、レアモンスターって感じでもないしまたしばらくしたら飛びかかってくるんじゃない?」


「ふふん、いつでもおっけーだよ!」

メイプルはまだ見ぬモンスターにそう声をかけるとまた森を歩き回る。


「んー、普通の森……かな?何かありそうな大きさだけど」


「今でものんびりしてて楽しいよ?お散歩って感じで!」


「そう?ならよかった。何か食べながら行く?」

そう言ってサリーはインベントリから片手で持てるサンドイッチを取り出してメイプルに手渡す。


「ありがとー!いただきまーす!……ん、サリー見て見て!」


「え?あ、蝶……?」

緑溢れる森の中で光を受けて青く輝くその羽は分かりやすく目立って見えた。


「レアモンスターかな?さっきまでは小動物タイプばかりだったし」


「飛んでっちゃうよ!行ってみよう!」


「おっけー!」

サリーはメイプルを背に乗せると、ひょいひょいと木々の隙間を縫うように走り、青い蝶を追いかける。しかし、その距離は一向に縮まらない。


「妙に速い……一層のモンスターに追いつけない筈ないんだけどね!」


「頑張れサリー!」


「任せて、見失わないように……!」

そうしてしばらく進むと木々の向こうから溢れる光が強くなり、二人は開けた場所に出る。

そこには少し大きめの木を中心に色とりどりの花が咲き誇る花畑が広がっており、二人が追いかけてきた青色の蝶が他にも何匹も飛んでいた。


「おー!」


「特にイベント……って訳でもないのかな?」

サリーはメイプルを下ろすと二人で花畑の方に歩いていく。メイプルは花畑の中心で楽しそうにくるくると回ると今度はしゃがんで足元の花を確認する。


「むぅ、摘んで帰るのは無理みたい」


「そっか、じゃあ記念に写真でも取っておく?」


「うん!サリーもこっちこっち!」

木をバックに花畑も入るようにして、二人は一枚写真を撮る。サリーが画像を確認して、メイプルにそれを送った所でメイプルがもたれかかってきた。


「メイプル?」


「…………」

反応しないメイプルにサリーは何かが変だとステータスを確認する。すると、メイプルには睡眠の状態異常が掛かっており、サリーは原因を探るため辺りを見渡す。


「あの蝶かな……?」

よくよく見ると、陽の光によってキラキラと光る鱗粉が散っていることに気づいたサリーは、おそらくそれが原因だろうと予想する。


「やっぱり一層から中々厄介なのがいたんだね。まあ、メイプルなら大丈夫かな」

睡眠以外にも何か状態異常があるかもしれないが、メイプルのHPには現状変化はなく、サリーは【身捧ぐ慈愛】の範囲内にいれば問題ない。


「でも、こういうタイプのモンスターがいるなら何かありそうだけど……当たりかな?」

メイプルを木の幹にもたれさせると、サリーは木の上に見えたキラッと光る何かを確認するため【身捧ぐ慈愛】の範囲に気をつけて木に登る。


「林檎……って言ってもこれは……」

蝶の羽と同じ様な青色をしたそれは文字通りの青リンゴである。食欲をそそるものではないが、宝石に似た綺麗さがあった。


「【睡眠の果実】……素材かな?でもまあ、いい記念品になりそうだね」

サリーはそれを二つ採取すると木から降りていく。するとちょうどメイプルが睡眠から復帰した所だった。


「サリー大丈夫!?」


「メイプルのおかげでね。これは今見つけたお土産」


「すごい!綺麗だね!」


「メイプルの分と私の分両方あるから記念ってことで」


「おおー!じゃあじゃあ、今回の冒険の目標に行った場所ごとに記念品を手に入れることも追加しよう!」


「いいね。どうする、もう少し花畑を満喫していく?」

そう言ってサリーはメイプルに睡眠耐性ポーションを見せる。メイプルはそれを受け取ることで返答とするのだった。




多少厄介と言えどもモンスター自体は一層のものなため、予想通りメイプルに有効打を与える様なモンスターは現れず、二人は気の済むまで花畑を堪能し、森を後にしていく。


「よかったねー。やっぱりまだまだ行ってないところいっぱいあるなあ……」


「何だかんだで一番新しい層にすぐ移動してるからね。それはそれで開拓していく感じが楽しいんだけどさ」


「次はどうするー?」


「んー、本当に何も決めずに出てきたしね。見たい景色とかある?ほら、海が見たいとか山が見たいとか」


「んー、じゃあ空に浮かぶお城に行きたい!」


「……!なるほどね。いいよ、いつか行こうって約束だったしね」


「えへへ、寄り道は時間がある時に目一杯しとかないと!」

いわゆる浮遊城。層も増え、さまざまなダンジョンや地形が追加された今ならどこかにそういったものがあってもおかしくない。


「となると、流石にノープランの探索は切り上げかな。情報が出てないか探しに行こう。後は必要なものとかあるかもだしね」


「うん!」


「じゃあ、帰りも乗ってくでしょ?」


「はーい!」


「帰り道にも何かあるかもしれないしね」


「何もなくてもいいけどねっ!」


「……それは嬉しいな」

二人でこうしているだけで十分だというように笑いかけるメイプルにサリーも笑い返して、二人はまた町へと戻っていった。


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― 新着の感想 ―
[一言] その浮遊城、鋼鉄製で100層まであったりしない?
[良い点] 親友っていいなぁ
[一言] 睡眠中というメイプルの意識が無い状態でも 【身捧ぐ慈愛】のスキルが途切れずに発動し続けるのか。
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