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防御特化と最終日。


メイプル達が拠点まで戻ってくると、そこにはすでに残りの十二人がいた。全員無事に戻ってこれたようで、メイプルはその姿を見ると嬉しそうにぶんぶんと手を振ってぱたぱた駆け寄っていく。


「皆お疲れー!上手くいったね!」


「ああ、メイプル達も上手くやったようだな。私達も……少し面倒なダンジョンだったがなんとかなった」


「僕らのとこはペインを強化する戦略がハマったから、それなりに楽だったかな」


「「私達も皆さんが強くて上手く行きました!」」


「よかったー!あ、えっと一緒に探索してくれてありがとうございます!お陰でメダルもザクザクです!」

メイプルが嬉しそうに【集う聖剣】と【炎帝ノ国】にお礼を言うと、むしろ礼を言うのはこちらだと、ペインとミィが返す。


「元々、俺達だけで向かって一枚でも得られれば上々だったんだ。こちらこそ、助かった」


「ああ、共闘も存外いいものだった」

笑顔を見せる二人を見て、メイプルも嬉しそうにより笑顔になる。


「三日目も頑張りましょうね!」


「勿論だ」


「ああ、俺達も最後まで生存できるよう尽くすとするさ」

ライバル関係であるとともに、メイプルにとってフレンドでもあるペイン達ミィ達を応援することは至極当然のことだった。


「夜中の見張りは俺がやろう。拠点とメダルの礼だと思ってくれ」


「私も同じだ。間借りしている分の働きはさせてもらう」


「えへへ、ありがとうございます!」

それでも何かあったらいつでも飛び出してきますからと言い残して、メイプルは共有スペースへ駆けていくのだった。




交代で警戒しつつ全員がゆっくりと休むこともでき、状態も良好なまま三日目の朝を迎える。

メイプルはベッドから起き上がるとぐっと伸びをして、隣のサリーの部屋へ向かう。

部屋から出たところで、ちょうどサリーも外へと出てきてメイプルと鉢合わせる。


「おはよー。今日で三日目だね」


「うん、メダルはもう十分集まったし私達は生き残ること重視でいこう」


「あ、そうだ!マップとメッセージは……」


「メッセージ機能は止められたままだね。ただ、マップはまたちょっと変わってる。まあ見たら分かるよ」

メイプルがマップを開くと、そこには無数の青い点が表示されており、いくつか赤い点も表示されていた。


「これは?あ、書いてある。えーっと青い点がプレイヤーで、赤い点が特殊モンスター?」


「うん。誰かと合流して生き残るか、特殊モンスターってやつ?マップに写ってるくらいだし、多分ボスクラスの強さだと思うんだけど、それから逃げるか。ここまで生き残ってるなら通常モンスターくらいどうにかできるだろうし」


「ふんふん、なるほどー」

メイプル達はよっぽどのことがない限り今日は外には出ないだろう。マップに写っているのがプレイヤーという単位であり、ギルドメンバーの位置が特定できないため、【集う聖剣】と【炎帝ノ国】も外に出る理由が薄い。

つまり、きっちり準備をして全力で迎撃する、メイプル達の一番得意な戦法を貫けばいいのである。


「三日目は一日目二日目と比べて終わりまでが短いのも気にはなってるんだよね。ただ生き残らないといけない時間を短くしたとも思えないし」


「大丈夫だよサリー。皆と一緒に戦えばきっと勝てるよ!」


「……ふふっ、それもそうだね。考えすぎても仕方ないか」

ある程度は目の前の出来事にその場その場で対応する柔軟性も必要である。しばらくすると各部屋からそれぞれに起きてきて、いつ戦闘が起こってもいいように準備を始める。

メイプルとサリーはマルクスが設置した視界をスクリーンで確認しにいく。

昨日の夜、せっかく外に出たのだからと、拠点外にもいくつか設置しておいたため、さらに確認できる範囲は広くなっている。


「便利だなあ……私もこんなスキル探すかあ」


「サリーなら使いこなせそうだよね。あ、モンスター映ったよ」


「入ってはこないみたいだね……ちょっと変わったのかな?」

三日目になっても外は薄暗いままであり、悪魔型モンスターはあちこちを徘徊している。そうして共有スペースでしばらく映像を見ていると、興味深いものが映る。


「あ、サリー!あれっ!」


「ん?あれは昨日の……」

外の様子が分かる映像の一つ、そこに突然紫の靄のようなものが発生し、しばらくするとそこに見覚えのあるゲートのような紫の光が現れる。

二人が目を離さずにそれを観察していると光からずるりと二日目に大量発生した偽メイプルが現れて、のしのしと歩いていく。


「こっちに移ってきたってこと?」


「かもしれないけど……もしかしたら、増えた?」

あれの奥がダンジョンに繋がっているのかは不明だが、サリーには移動してきたというよりは増えたという方が自然に思われた。難易度を上昇させる際、分かりやすいのはHPなどステータスを高くするか、敵の数を増やすかである。


「他の場所でも増えてるとしたら……ちょっとまずいかもね。流石に対処できる数に限度はあるし」

メイプル達が複数体のモンスターを相手取るにはスキルや魔法が必要になる。それもそれなりの質を持ったものでなくては一撃で倒しきれず二度手間三度手間になってしまう。

ペインやミィの奥義といえる【聖竜の光剣】や【殺戮の豪炎】なども連発できるものではない。


「場合によっては外へ出る必要があるかもね。ほら、この洞窟がモンスターでぎっちり埋まっちゃうくらい襲ってきたら倒しきれなくて困るけど、外なら逃げるって手も取れるし」


「確かに……」

ただ、これもその時が来てみないと分からないことだとサリーは説明し、インベントリから林檎を取り出す。


「ま、何事も臨機応変にね。あ、メイプルも食べる?」


「うん、もらう!どこかで取ってきたの?」


「いや、いつもメイプルがこういうの持ってきてるし、たまには私からも何か渡そうかなって」


「んふふ、じゃあ私もお返しに……」

そうやって朝の時間を和やかに過ごす。他のメンバーもモンスターが襲ってこない間は平和なもので、それぞれに時間を過ごしていた。

しかし、今は生存を目標とするイベントの途中である。いつまでも、のんびりとさせてくれる程モンスター達も甘くはない。

モンスターの襲撃はまた刻一刻と迫っていたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 赤い点の特殊モンスターを狩りに行こうぜ! って言うような血の気の多い奴はさすがにいなかったか…
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