防御特化と方針変更。
それからしばらく時間が経ち、何度か襲撃を受け罠を設置し続けるのは割に合わないと感じた面々は、入ってきたモンスターを即座に撃破する方式に切り替えた。ここにいる十六人はそれぞれがゲーム一を争うような強さを持っているため、ローテーションしても問題なく撃破することができていた。
一例としてユイとマイが通路から顔を出した所を二つの大槌で叩きつけ、振りかぶる前に飛び込んだ者や何らかのスキルで生き残った者はイズの大砲とフレデリカやミィなどの後衛によって遠距離から撃ち抜かれるといった具合である。
そうして、思ったよりも楽に迎撃ができることが分かった頃、共有スペースで【炎帝の国】と【集う聖剣】の面々がそれぞれ何か話をしていた。
「どうかしたんですか?」
モンスターの襲撃がないことを確認して、メイプルが二つのギルドの話を聞きに行く。
両ギルドとも話していた内容は同じなようで、この夜のうちに一度ダンジョン攻略のために外へと出るべきかもしれないとのことだった。
「今夜のモンスターも弱いわけでないが、ここまでの迎撃で倒せないほどではないと感じる。俺達が今日強制的に転移させられたことを考えると、明日の朝にも何か起こる可能性も考えられる」
「ペインの言う通りだ。夜は昼に比べると危険、とのこだが。二日目の夜と三日目の昼……三日目の方が危険な可能性も十分ある」
「な、なるほど……」
ゲーム内で一、二を争う大規模ギルドとしてはメダルは手に入れられるだけ手に入れたいものである。ある程度戦力を確認できたため、四人で問題ないと判断し、探索に向かおうというわけだ。
「あ、そうだ!じゃあ私達も手伝えますよ!」
それを聞いてペインとミィは少し驚いた表情を浮かべる。そして少し考えて、メイプルにはおそらく打算はなく、本当に一フレンドとして手伝おうという純粋な申し出だということに思い至る。
「ああ、私達としても前衛が増えるなら心強い。それに、メダルはそれぞれに分配されるようだからな。メイプル達にもメリットはあるが……」
「危険を冒してまで外に出るかは他のギルドメンバーとも相談するといい。申し出には感謝するが、今ですら拠点を借りているからな」
二人は【楓の木】として力を貸してくれるなら、喜んで受け入れると返して、仮に外に出た際の戦略などを考え始める。
メイプルは言われた通りに、一旦【楓の木】の面々を集めると先ほどの話を始めた。
「まあ、アリかもね。確かに、三日目に何か起こらない保証はないし。今のモンスターなら勝てるっていうのも納得かな」
「僕達も、貰えるメダルは貰いたいからね」
「「私達も今度は頑張ります!」」
「私としては三日目の朝までにここに戻れるならいいと思う」
「同意見だ。カスミとイズがメダルを手に入れてくれたが、今日は探索自体は全くしてないからな」
「早めに集め切るのは賛成ね。三日目にあと一枚探している余裕はないかもしれないもの」
全員が賛同したことで、メイプル達も手を貸し、【楓の木】【炎帝の国】【集う聖剣】のメンバーを分けて、探索を開始することにした。
「ダンジョンがありそうな場所にマークを付けたマップがあるから、見せますね」
「はぁー、サリーちゃっかりしてるねー。んーどれどれー?」
「今見せるって」
サリーが予選の時に作成しておいたマップを全員に送信する。これを元にどの辺りに向かうかを決めなければならない。
「こうして見ると……特殊なオブジェクトがある場所はマップの端に偏っているな。俺達はこの辺りは調べてきた」
「二日目以降のことが考慮されているのだろう。よりモンスターが強力なマップ端へ向かう必要を考えるとやはり今で正解か……」
ペイン達とミィ達の情報も考慮し、リスクとリターンを考慮し、バランスをとりつつ多くの場所も探索できるよう、四つの四人組を作ることとなった。これで四組全てに書くギルドのメンバーを入れて東西南北に分かれ、ダンジョンを探すのである。
こうして機動力や耐久力、攻撃能力を考慮して、各組ごとに強みを作ると、全員で拠点からフィールドへと出ていくのだった。