防御特化と真下。
「よっと!とうちゃーく!」
「地下か……あの小島の真下って感じなのかな。地面と天井も水気が多くて泥っぽいし」
「本当ですね……わっ、すごい数の分かれ道……」
四人が辿り着いたのはまさに地下ダンジョンといった風な周り全て茶色に囲まれた場所だった。スタート地点は円形で広くなっており、そこから六本の道が伸びている。道幅を気にする必要はなさそうだが、サリーの言うようにどこもかしこもじっとりと湿っており場所によっては水たまりもできている。
「泥人形とかもでてきそうですね。今回は倒さないとダメかもしれないです!」
「そうだね、その時は一撃で決めてくれると助かるかな」
「「任せてくださいっ!」」
道は多いものの、どこから行くかなど考えていても答えは出ない。四人はとりあえず一つ道を選んで進むことにした。
「うう、足下もべちょべちょだね」
「そうですね……本当に汚れたりはしないのでよかったです」
「っと、早速でたよ!」
サリーの言った通り、地面の水たまりや泥から音を立てて人形が起き上がってくる。
ただ動きは遅く、マイとユイの二人でもたやすく捉えることができる。
「「【ダブルストライク】!」」
人形が何かするよりも先に、二人の攻撃が命中し通路を塞ぐようにして湧き出した人形はバシャッと音を立てて弾け飛び、水と泥で辺りを汚す。
「おー!さっすがー!」
「……いや、終わってない!」
弾けた水や泥は光となって消えることはなく、それら全てが新たに人形として形を作る。一気に数倍に膨れ上がった人形が一気に群がってきて、迂闊に攻撃できないで躊躇しているうちにマイとユイが攻撃を受ける。
「メイプル!大丈夫!?」
両方の種類の人形から攻撃を受けているため、効果があるなら【身捧ぐ慈愛】によってメイプルに何かが起こっているはずである。
「えっと……ちょっと待ってね?んー……」
サリーはメイプルと、その間にもべちゃべちゃと攻撃されているマイとユイを交互に見て、肩の力を抜いた。
「あ!移動できなくなってる!あとは……スキルがもう一度使えるようになるまでの時間が進まなくなるんだって」
「移動不可とクールタイムのカウント停止……パーティーによっては全滅してもおかしくないレベルだね……攻撃のダメージもそれなりにあるだろうし、数も多いし」
「サリーさん!こ、これどうやったら倒せますか!?」
「とりあえずいろいろ試してみようか……」
メイプルは動けなくなっているが、ただそれだけである。元々移動できなくともできることは多いのだ。今なら【身捧ぐ慈愛】さえあればそれでいい。
そうして、メイプルが無限に時間を稼いでくれる中でこの人形の対処法を探っていく。そして、泥人形の方は火の属性、水人形の方は雷の属性を付与した攻撃で攻撃すれば分裂せずにダメージを与え、倒すことができると分かった。逆にそれ以外の攻撃を加えるとそれだけで分裂してしまうようだった。
そしてメイプルが守ってくれることに任せて、片っ端から検証した分、めちゃくちゃに人形が増えてしまっていた。それは通路を完全に塞いで、天井まで埋まってしまって身動きが取れない人形も出ているほどである。
雪崩のように崩れきた人形にのしかかられながら、マイとユイは間違って攻撃しないように何とか這い出てきた。
「おっけー、とりあえず確認も終わったし……このめちゃくちゃ増えた人形処理しようか……」
「「はい……」」
「す、すごいことになっちゃったね……」
別の道に行こうにも、メイプルが移動できないため、結局再度移動不可をかけ直されてしまう。
全て倒し切らなければメイプルが動けるようになる日は来ないのである。




