防御特化と湿原。
砂漠からはそのまま森と湿原に繋がっており、周りにモンスターもいなかったため、ちょうどいいとここで分かれることとなった。
サリーはマップを再度確認し、方針を伝える。
「マップにパーティーメンバーの位置は映ってるし、ここで分かれて強いモンスターが出る時間の少し前に集まる感じでいこう」
「ああ、いいんじゃないか。なら俺達は森の方へ行こう。メイプル達は湿原の方を頼む」
「分かりました!きっちりメダル見つけてきますね!」
「おう!こっちも、それっぽいモンスターを見つけて狩ってみる」
メイプルがぶんぶんと手を振る中、クロム達四人は予定通り分かれてメダルを探しに向かった。
「さて、と【身捧ぐ慈愛】は発動しっぱなしだし、このまま探索行こうか」
「うん、そうしよう!マイとユイも大丈夫?」
「「大丈夫です!」」
「じゃあ行こー!」
テイムモンスターを仲間にしたことで、マイとユイの移動速度はシロップに乗るより速くなっている。ツキミの背中にマイとサリーが、ユキミの背中にユイとメイプルが跨ってそのまま湿原へと進んでいく。
「でも今回のフィールドも広いよねー。うーん、どこを探せばいいのかな……」
「ふふふ、こんなこともあろうかと……っと、これ見て」
サリーが三人にメッセージを送る。そこには予選の時のサリーのマップの写真が添付されていた。
「同じマップって話だったし、何かそれっぽいものがあったところをマークしておいたんだ。少しは役に立つはず。もちろん向こうにも送っておいた」
「やるぅーサリー!えっと今いるのがここだから……」
三人は今のマップと送られた画像を見比べて近くにあるマークを見つける。
「あ!メイプルさん湿原にもありますよ!」
「本当だ!」
「そそ、だからまずはそこから行ってみない?マイ、細かい場所は教えるから」
「はい、分かりました。ツキミ!」
最初の目的地を決定した四人はそこに向かって歩を進めていく。周りは障害物がほとんどなく、池と背の低い植物が続くばかりである。
「湿原の真ん中の方だよね」
「そう、ま、そう簡単に通してはくれないみたいだけどね!」
歩みを進める四人を囲むように池と地面から水と泥の人形が次々に起きあがる。それらはズルズルと足を引きずりながら距離を詰めてくる。
「ど、どうしますか!」
「任せて、シロップ!【沈む大地】!」
メイプルがシロップに命じるとシロップを中心に地面の性質が変わり、地面から現れた人形達はまた地面へズブズブと沈んでいく。
「メインの目標も生き残ることだし……マイ、ユイ今の内に逃げちゃおう!」
「そだね、魔法攻撃もないし移動速度も遅い……逆に捕まったらやばいタイプだと思う!足場は私が作るから!」
「「分かりました!」」
二人は【スターステップ】を発動させ移動速度を上げると、サリーが空中に作った足場を使って人形達を飛び越えた。
「この調子で進もー!」
「メイプルのスキルは強力なモンスターが出るまで残しておきたいし、頑張ってもらうよ二人とも!」
「「はいっ!」」
こうして、シロップのスキルで足止めをしているうちにサリーが空中に足場を作ったり【氷柱】でツキミとユキミがよじ登れる場所を用意したりして、交戦を避けて、サリーがマップにマークをつけていた場所まで辿り着いた。
そこにはひときわ大きい池が広がっており、その中央に小島が一つ浮かんでいる。
小島にはピンク色の小さな花が咲いており、他の場所とは違う雰囲気を漂わせている。
もちろんその大きな池にも大量の水人形と泥人気が蠢いているため、メイプルの持っていた双眼鏡で遠くから見ているという状況だ。
「どうサリー?前来た時と何か変わってる?」
「予選では流石にここまでモンスターはいなかったかな。地形は変わってないよ」
「確かに……何かありそうですよね」
「どうしますか?」
「そうだね。いきなりやられるとメダルは何も貰えないからね」
通常モンスターも強力なこのフィールドでより強力なボスモンスターの住処に自ら突撃することは、生存することで貰えるメダルを逃す可能性を高めることにもなる。
「でも!攻略してもっとメダル取るって決めたもんね!」
メイプルがそう言い切ると、三人も同じ気持ちだというように頷く。
「多分、ユキミ達だと小島に行くまでに戦闘になると思います」
「だーいじょうぶ!こういう時は、シロップに任せて!」
背中に乗って移動できるテイムモンスターは【楓の木】にもいる。しかし空を飛べるのは【楓の木】ではシロップだけなのだ。
「本当は飛べないはずなんだけどね……じゃあそれで空中から行こうか。途中見てた感じだと撃ち落とされる心配もなさそうだし」
攻略が決定したところでメイプルはシロップを呼び出し、【巨大化】させてその背に乗る。
そうして、地面を這いずるモンスターをやり過ごして、花の咲いた小島の上へとやってきた。
「このままシロップ下ろせそうだし、行っちゃうね」
メイプルがそのままシロップを小島に着陸させると、その瞬間小島が光り始め、四人はそれが今までに何度も体験した転移の前兆だと気づく。
「大丈夫!【身捧ぐ慈愛】もあるから!」
向こうで何がきても大丈夫だとメイプルが胸を張る。そんな中四人の姿はぱっと消えて湿原からいなくなった。




