防御特化と本戦。
アニメも7話まで来たということで、早いものです。
楽しんでいただけていれば幸いです。
メイプル達がそれぞれ相棒となるモンスターのレベルを上げる日々を過ごしているうちに、いよいよ本戦開始の日がやってきた。
全員で最後に方針を確認しつつ、フィールドに転移する時を待つ。
八人が挑むのは最高難度のフィールドであり、最後まで生存することで5枚のメダルを手にすることができる。
「フィールドのモンスターを倒したりすれば別でメダルも手に入るみたいだし、生き残るだけじゃなくてもっとかき集めたいよね。本戦の仕様を考えても……八人でずっといるかどっちか選べってことだろうし」
サリーの言うように、別途メダルを集められればその分だけ戦力強化につながる。そして、本戦フィールドで手に入れたメダルはパーティー全員に配られるのだ。たとえばメイプルがメダルを一枚手に入れたとして、それは他の7人にも一枚ずつ追加される。
八人でばらけてそれぞれ強力なモンスターを倒すことができれば多くのメダルを得られるが、死亡して生き残った時にもらえるメダルの数を減らす可能性も高くなる。
「強力なモンスターが出てくる時間があると書いてある。そのタイミングで集まれるようにしながらも、基本は拡散する方が私達が得られるものは大きいだろうな」
「ああ、生き残るのも大事だけどよ。どーんと稼ぎたいよな!」
「まあ、ばらけるって言っても僕らの中の相性を考えて半分に分けるくらいがベターかな」
カナデの言うことに全員が賛成して、チーム分けはメイプル、サリー、ユイ、マイの四人とカナデ、イズ、クロム、カスミの四人となった。
メイプルはいきなり奇襲されダメージを受けた時に一撃死してしまう三人と組むのがベターなため、チーム分けは一瞬で終わった。
「本戦も頑張ろうねお姉ちゃん!」
「うん、ユイもね」
「そろそろ時間かしら?……言っていたら転移みたいね」
「よーし!それじゃあ皆最後まで生き残ろー!」
メイプルが最後にそう言ってぐっと拳を突き上げ、七人がそれに反応する中【楓の木】の面々は光に包まれて転移していった。
八人を包む光が消え、予選の時のフィールドにやってきた。【楓の木】の初期位置は辺り一面砂と岩しかない砂漠とも荒地ともいえるそんな場所だった。
「見通しがよくてよかった。周りにプレイヤーはいない、か……」
「ああ、だが早速のお出ましだぞ!」
周りの砂が大きく波打ち、砂中から八人をまとめて一飲みに出来そうな口を持つ巨大なワームが次々に姿を現わす。それらはメイプル達を感知するとそのまま大きな口を開けて一気に頭を寄せてくる。
「よーし!【身捧ぐ慈愛】!」
メイプルが全員を守るためにスキルを発動させ、砂煙が上がる中、全ての攻撃を引き受け無力化する。そんな中、全員がそれぞれテイムモンスターを呼び出し、一気に攻勢に出る。
「設置している時間はないわね……フェイ【アイテム強化】!」
イズが強化した攻撃力アップアイテムを地面に叩きつけ、赤い光が八人を包む。それを確認するやいなやユイとマイがテイムモンスターに跨って飛び出す。
「「【パワーシェア】!【ブライトスター】!」」
マイとユイの指示に従って、ツキミとユキミから球状にエフェクトが弾け、接近してきていたワーム全てにかなりのダメージを与える。
しかしそれでもまだかなりのHPが残っており、さすが最高難度といった様子である。
「逃すかよっ、カスミ!サリー!」
「ああ!【血刀】!ハク【超巨大化】【麻痺毒】!」
「朧!【拘束結界】!」
カスミ の側にいたハクが急激に巨大化し、素早く動いて怯んだワームを締め上げ、麻痺させて動きを封じる。朧も同様に一体の動きを止める。
「ネクロ【死の炎】!」
そうして動きが止まったところで、さらにネクロを纏ったクロムから炎が噴き出し、ダメージを加速させる。
と、ここでマイとユイが、ツキミユキミと共にめちゃくちゃに殴りつけていたワームが流石に耐えきれずに爆散し、残りのワームは不利を悟ったのか何なのか砂に潜って逃げていった。
再び砂煙が舞い、それが収まった時にはフィールドには静寂が訪れていた。
「おおー!すっごい!皆のモンスター強いね!」
「全部は倒せませんでしたけど……メイプルさんが守ってくれているので戦いやすかったです」
「私とお姉ちゃんが攻撃してたモンスター以外にも倒れてましたし、どの子もすごい強いんですね!」
ユイがそう言ってマイと一緒に尊敬の眼差しを向けると、攻撃していたサリー、カスミ、クロムは不思議そうにする。
「ん?いや、俺はそこまでの手応えはなかったけどな」
「ああ、私もだ。確かにハクの攻撃力は高いが……」
「ふふふ……ソウ!こっちこっち」
不思議そうにする面々を見てカナデは可笑しそうに笑うと、ソウを呼ぶ。【超巨大化】したハクの影から現れたのは、白い髪にピンクのメッシュ、フリルとリボンがたくさん付いた洋服を着た、ユイと全く同じ見た目をしたソウだった。
「えっ!?わ、私!?」
「そう、ちょっとその攻撃力借りさせてもらったよ。流石の威力だったなあ」
ソウはスキルで姿形やステータスを反映した状態で行動していたのである。擬態先がユイとなればその攻撃力は相当なものだ。
「おー、カナデのテイムモンスターも強いね。戦略の幅が広がる広がる……」
「と言っても、っと時間切れみたいだね」
カナデがそう言うと同時にユイの姿をしていたソウは光に包まれ透明なスライムに戻ってしまう。
「ずっとは続かないしクールタイムも長いけど、面白いでしょ?直前に記憶したパーティーメンバーかそのテイムモンスターに化けられるんだ」
これならカナデ達四人の方の攻撃能力も問題ないだろうと、四人は改めて辺りを見渡す。
「あ!サリー、メダル落ちてたりするかな?」
「んー、ちょっと探してみるね」
特にそれらしいものは見つからず、あの程度は雑魚モンスター枠ということらしかった。
「気を抜くとすぐ死んじまいそうだな」
「これが最高難度ということなのだろう。よし、まずは少し落ち着けるところを探そう。ハクの上に乗ってくれ」
全員、一旦テイムモンスターを指輪に戻すとハクの背に乗ってズルズルと砂漠を抜けていくのだった。




