防御特化と霧の主。
当然フィールドには多くのプレイヤーがいるわけで、全く誰とも合わないような場所を探すとなると難しい。順調にモンスターを倒し、生存を続けるプレイヤー達三人は、霧の深い森の中へと足を踏み入れる。
それなりの量のモンスターを倒したため、他のプレイヤーから離れて時間を過ごそうとしたのである。霧の深い森は奇襲の可能性が上がるため、好んで入るような場所ではない。だからこそその心理を逆手に取ろうというわけだ。
「この辺りならいいだろ」
「いやあ、よかった。ギルドメンバーと会えたのは幸運だったな」
数というのはそれだけで力になる。パーティーを組むことができなくとも、意思疎通ができ連携が可能な味方がいるというのは大きなアドバンテージだ。
「ああ、そうだな。お前もそう思……え?」
「どうかしたか……あれ?」
三人で霧の森に入ってきたはずが、気づけば二人になってしまっている。何も言わずどこかにいくはずがないと、二人は手分けして辺りを探してみるが、いたはずの仲間は見当たらない。
「おい!やっぱりいないぞ……嘘だろ」
少し目を離した隙に先程までいたもう一人の仲間も消えてしまい、男は狼狽えて辺りを見渡す。
「あ、何だ……?」
すると、霧の向こうに赤い二つの光が見える。そして、それを見た途端、麻痺のエフェクトが走り体が動かなくなった。
「くそっ!やべぇ……」
男は死を悟り、なんとか体を動かそうとするが、麻痺の効果時間が終わらないことにはどうしようもない。そして霧を掻き分けて姿を現したのは巨大な白蛇だった。男は覚悟を決めるが、衝撃は意外なことに背後からやってきた。
「【一閃】」
スパッと横薙ぎに振るわれた刀は男を深く斬り裂きそのHPをゼロにする。
それを確認すると、男を切った人物。カスミは白蛇のハクの元に歩いていって、頭に飛び乗り座り込む。
「またモンスターが湧いているみたいだ。そっちに行こう」
ハクは木と木のあいだをするすると抜けて森の中を巡回する。実のところこの霧もハクが生み出しているものだった。
「はあ……ハク、すぐ大きくなったなあ。味方なら頼もしいぞ」
ハクはレベルを上げるとシロップの【巨大化】と同じようなスキルで【超巨大化】というものを覚えたのである。
それを発動し、霧を発生させるスキルを使えば広いエリアを這いずり回って縄張りとすることができるのだ。
カスミはこの森に入ってきたプレイヤーを見つけてはハクの力で麻痺させ斬り捨ててきた。もちろんモンスターも同様である。ぐるぐると森を周り見つけたものからハクと二人で葬る。
移動もハクに任せているため楽々である。
しばらく進むと、この森に出る大型モンスターである五メートルはある猪と、それと戦うプレイヤー達がいた。時間が経過するにつれ、メッセージで連絡を取り合い合流する者も多いのだ。
「よし、いたな……いくぞハク!」
プレイヤーごと猪ももらってしまおうと、カスミはハクを加速させ、そのまま横から猪の胴に噛みつかせる。
「【武者の腕】【血刀】!」
霧の中から唐突に現れたカスミに反応できないまま、液状になった刀に斬り裂かれる。体勢を崩しているところにそのまま突っ込んできたカスミの刀と両脇の腕の振るう刀はそれぞれが一人ずつプレイヤーを一刀両断した。
「ハク!【麻痺毒】!【四ノ太刀・旋風】」
カスミは猪の方を振り返り、噛み付いて麻痺させられた猪の頭に連撃を叩き込む。
ハクはそれ程多くのスキルを覚えてはいない。ただ高いステータスとその巨体が武器なのだ。
ハクはそのままスルスルと動き猪を締め付けてダメージを与える。
三人が削っていたのもあって、すぐにHPをゼロにすることができた。
「よし、今回も上手くいったな。っと、バフは近くのプレイヤーの位置が分かるものか……」
カスミはハクの頭に乗ると、マップ上のプレイヤーアイコンに向かっていく。見つけたプレイヤーは倒してしまうことが【楓の木】の順位を上げることにつながるのだ。
「ははっ、ここは私達の縄張りだからな。入ってきた者は倒してしまおう。な、ハク」
ズルズルと音を立てて霧の中に白蛇が這いずる。そしてしばらくの間、霧の中には悲鳴が絶えないのだった。




