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防御特化と触手。

カスミがハクを仲間にするよりも少し前の話。テストも終わったメイプルはまたゲームにログインしていた。

といっても、メイプルにはシロップという相棒が既にいるため、自分自身にはこれといった目的はない。


「どこから行ってみようかな?」

メイプルは七層のマップを確認しつつ、今日の計画を練る。サリーにも言われたことだが、イベントが始まるか、新しいエリアが実装されるまでは情報収集に専念するのである。


「ギルドとして強くなるのもギルドマスターの役目だよねっ!」

メイプルはそういってやる気を出す。本音を言えば、やる気の源の七割ほどは単純に皆が可愛い相棒を連れているのを見たいというものだったが、それもまた立派な動機である。


「なんだか第二回イベントを思い出すなあ」

七層は第二回イベントのマップのように様々な地形や環境が広がっており、多くの種類のモンスターが生息している。

氷系のモンスターを仲間にしたい人は雪山へ、炎系なら火山へというわけだ。


「うーん……山を登るのは大変だし……」

そうしてしばらくマップを見ながらうんうん唸っていたメイプルだったが、向かう場所を決めたようで一つ大きく頷いてマップを閉じる。

シロップに乗って空を飛んでいく中で、下をちらっと見ると、すでにモンスターを仲間にしたのか、隣に動物を連れて戦闘をしているプレイヤーを見かける。


「もうどんどん仲間にしてるんだね!シロップと会った時のこと思い出しちゃうなあ」

メイプルは鳥のモンスターを仲間にすれば空も飛べるのかもしれないなどと考える。


「皆も空飛べるようになるかもね!あ、でも他のプレイヤーの人も飛んでたらのんびりお散歩できないかな?」

多くのプレイヤーが機械で空を飛んでいた三層のことを思い出しながら、シロップは空を進んでいく。そして、メイプルは目的地にたどり着いた。

メイプルの目の前に広がるのは砂浜と広い海である。遠くにはいくつか島も見え、海も深そうだった。


「すっごい……今までで一番遠くまで行けそうかも!」

メイプルはシュノーケルを身につけるとシロップを空に飛ばすのと同じ要領で海にプカプカと浮かべて沖へ出ていく。


「ボートだと大変そうだけど……シロップならどこでもすいすいだし!」

推進力が【念力サイコキネシス】なため障害物がなくても加速できないが、向かい風や高波でも一定の速度は出せるのだ。

さらに言えばメイプルの労力もなく、のんびり探索するのには最適である。


「それっぽいお魚はいないかな〜」

メイプルはシロップの甲羅の端の方に寝そべり、顔だけを海に突っ込んで水中の様子を探る。

水中にもモンスターはいるようで、メイプルの予想通り、魚にも仲間にできるマークが付いていた。


「ぷはっ!仲間にできても水から出てこれるのかな……?」

そう疑問に思ってから、きっとサリーのスキル【古代ノ海】のように水を纏って空中を泳ぐのだろうと、メイプルは一人納得する。


「イルカとかクジラとかもいそう!でも、もしいたらレアそうだなあ……」

メイプルはとりあえず珍しそうなモンスターを探そうと、海の上をすいすいと移動して水中を確認する。

そうしてかなり探索したところで、メイプルは一旦休憩しようと、ヤシの木が一本生えている程度で特に何もない近くの小島に降り立ってシロップを指輪に戻す。


「ふぃー……イルカもクジラもいないなあ……」

メイプルは額に手を当てて遥か遠くなった砂浜を眺めると、寝転がって大の字になり気持ちよさそうにぐっと伸びをする。


「んー、この後はどうしようかなあ」

メイプルがそうして風を感じながらのんびりとしていると、近くで水から何かが飛び出したような、ざばっという音がする。


「うぇっ!?いた!?」

メイプルが急いで飛び起きて音の出た方を向くと、ちょうど禍々しい真っ黒な触手が水を滴らせながらこちらにずるりと近づいているところだった。表情などもちろんないが、それが自分を狙っているということくらいメイプルにも分かる。


「えっ!?……ちょっ、わ、わわわっ!」

メイプルは咄嗟に逃げようとするものの、逃げ切れるわけもなく、がっしりと胴を掴まれて抵抗できないまま持ち上げられる。


「こっちだって……!【暴虐】!」

メイプルはそのまま水に引き込まれるのに対抗しようと【暴虐】を発動し化物対化物の構図になったところでメイプルは気づいた。

引きずり込まれる先は水中などではないことに。


綺麗な水の中にヘドロのようなどす黒い靄が広がっており、触手はそこから生えていたのである。

メイプルが何とか引き剥がそうとしたところで惜しくも時間切れとなり、メイプルは水中の靄の中へと姿を消したのだった。


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