防御特化と三体。
カスミが白蛇を連れてギルドに帰ってくるとちょうどギルドメンバーが集まってマイとユイを囲んでいるところだった。
「あ、カスミさん!」
「ん?ああ、それが二人の相棒か」
カスミの前に子熊を連れたマイとユイが歩いてくる。それに反応するように、カスミの首元にいた白蛇がすいっと体を動かす。
「あっ、カスミさんも決まったんですね!」
「ああ、名前はハクにした……少し単純過ぎただろうか?」
カスミは名付けは得意じゃないんだと少し恥ずかしそうに頬を掻くが、ハクは嬉しそうにするすると動き回っている。
「いいと思います!」
「はいっ……合ってると思います!」
マイとユイにそう言われて、さらに照れ臭そうにするカスミを見つつ、まだ相棒となるモンスターを見つけていない三人もそれぞれにどうしようかと考える。
「おー、これであとは俺とカナデとイズだけか」
「そうねー。私のアイテム作成にも目処が立ったし、そろそろ工房の外に出ようかしら」
「僕も早く探さないとなあ。この層の醍醐味だしね」
「情報は結構集めてきたから……求めてるものがあればいいんだけど」
サリーもツキミとユキミを撫でつつ、集めてきた情報をざっくりと話す。
どこにどんな種類のモンスターがいるかや、何かありそうな地形、時間帯や所持スキルによって遭遇できるかが変わるレアモンスターで、情報が分かっているものなど、情報の中には足で稼ぐものもあった。
「私とメイプルはこの層の要素はもう終わってるから、手助けする役をね」
「そう言えば……メイプルがいないな」
カスミがキョロキョロとギルドホームの中を見渡すものの、メイプルの姿はどこにもない。
「テストも一段落したし、ログインしてるっぽいけど……」
噂をすればなんとやらというようにギルドホームの扉を開けて、メイプルが入ってきた。
メイプルは中に入ってきてすぐツキミとユキミ、そしてハクに気づいたようで目を輝かせて近づいていく。
「かわいいーっ!三人のモンスター?」
メイプルは三人の相棒をそれぞれ愛でるだけ愛でて、にこにこと楽しそうにする。
「ギルドホームもどんどん賑やかになっていくね!」
「確かに、モンスターをギルドホームでも出せるようになったしね」
そう言うサリーの足元には朧が、メイプルの足元にはシロップがいる。八人だけのギルドも、駆け回るモンスターが増えたことで、メイプルの言う通り賑やかにもなるというものである。
「あ、そうだ。全員集まってるし情報共有してたんだけど、メイプルからも何かある?」
「うーん、ち、ちょっと言いにくいんだけど……触手出せるようになったよ!」
「今なんて?」
予期していない言葉にサリーが思わず聞き返すと、メイプルは律儀にもう一度繰り返してくれる。
どうしてそうなったのか、モンスターを仲間にすることが目的の層で何故自分がモンスターになってしまうのか、その場の全員の頭の中をそれらがぐるぐると回った結果、全ての言葉を飲み込んで、まず見てみるのが早いと言う結論になった。
そうして訓練場に来て、七人はメイプルの何らかのスキルを待つ。
「よーし、【水底への誘い】!」
メイプルがスキルを発動すると同時に、大盾を持つ腕が、大きな青黒い触手が何本も絡むようにして伸びるものに変わり、左目の白目部分は黒く、黒目部分は黄色に染まる。
メイプルがどうだろうかと左手を動かしてみると触手が解けてまるで指のように五本に分かれ、何かを握るようにまた収束する。
七人はそれを見て顔を見合わせ、コソコソと話し始める。
「そうはならないだろ」
「そうね、分かるわ」
「知らないままフィールドで出会ったら刀を抜いていた」
大人組が久し振りの人の域を逸脱する行為にリアクションも忘れて話し始めたところでメイプルも話している内容を察したのか、手と触手をぶんぶんと振って弁解する。
「これにはふ、深いわけがあって……いやっ、そんな深くないかも……でも仕方なかったんだよぉっ!」
メイプルがこんな異形の片腕を手にしてしまったのにはもちろん理由がある。
それは少し遡っての話である。




