防御特化と蛇2。
投稿できたと思っていましたができていませんでした。
イズからはアイテムを補充してもらい、カスミは日を改めて蛙の元を訪れてみた。
すると会話にも進展があったようで、蛙が新しいことを話し始める。
「本当に行くとは命知らずなやつだ……止めても聞かねえんだろうし、一ついいことを教えておいてやる。ケケッ、思い出したんだ、逃げ切ることができたのはな、きっと上手く頭を叩いたからだ。眉間を狙うといいぜ」
それはいいことを聞いたとばかりにカスミの表情が明るくなる。
ただ、睨まれてからではもう攻撃することはできない。となると、この情報が役立つのはこちらから攻撃するというケースになる。
「顔には近づきたくないところだが、覚えておこう」
カスミはそれ以上新たな情報がないことを確認すると、再び七層へと向かう。
「さて、三度目の正直といこうか」
カスミは【心眼】を発動し頭の位置を確認すると、濃い霧に覆われた森の中を足音を立てないように進んでいく。
頭から離れてしまえばそれで一撃死の危険は避けられるのだ。
「何かあるとすればやはり始点か?」
カスミは今はわずかに流れるだけとなった小さな川を遡って、上流へと向かう。
【心眼】が切れる度深い茂みや小さな洞穴、登れる木の上などに避難して、安全を確保しつつ再使用可能になるまで時間を稼ぐ。
そうして、着実に一歩ずつ川の始点へと近づいていく。
「……っ!何だあれは……」
カスミはすっと木の後ろに隠れて様子を窺う。カスミの視線の先には大小様々な蛇がまるで警備でもするかのように一つの洞穴の周りで動いている光景が広がっている。
大きな白蛇はその洞穴の大部分を塞ぐようにとぐろを巻いている。
川はその中に繋がっており、その中に何かがあることを予感させる。
カスミの【心眼】にはほぼ隙間なく、何匹もの蛇の攻撃予測が見えている。
つまり、強度に差はあるかもしれないがどの蛇に見られても動きは止められるだろうということだった。
「ここさえ突破できれば……どうするか?」
ズルズルと這いずっていた音も止み、白蛇もここから動く気配はない。となれば、【心眼】が使えるようになるまで待ちつつ考える余裕もあるということだ。
「上には……行けるな。よし。なら……覚悟を決めるとしよう!」
カスミは木の上に飛び、葉をかき分けて眼下を確認する。上から見ても隙間はなく、どうにかして白蛇をどかす必要があるのは間違いなかった。
「いくぞ……っ!【超加速】【跳躍】【三ノ太刀・孤月】!」
カスミは木から飛び出すと、スキルによって空中で更に加速してそのまま刀を振り下ろす。
【三ノ太刀・孤月】は何も二段ジャンプの為だけのスキルではない、その後にきっちり高威力の斬りつけがある。
カスミは寸分違わぬ狙いで白蛇の眉間を深く斬りつける。連撃ではないため、動きは自由になるものの、地面につくよりも早く白蛇が頭を上げてカスミを睨もうとする。
しかしそれは洞窟を塞いでいた頭がずれるということでもある。
「それを待っていた!」
カスミのその言葉と同時に、大きな爆発が起こり、カスミにかなりのダメージを与えながら洞窟の中に吹き飛ばす。カスミはそのまま転がるようにして奥へ進み、白蛇の視界から逃れることに成功した。
「くっ……メイプルもよくこんなことをやるものだな……」
カスミはポーションでHPを回復しながら立ち上がる。やったことは単純で、メイプルが【機械神】の武器を爆発させて空を飛ぶように、イズの小型高威力爆弾を爆破させてダメージ覚悟で自爆して軌道を無理やり変えたのである。
「他にやりようはあったかもしれないが……ははっ、最善策をとれるまで待っているわけにもいかないのでな」
カスミは警戒しつつ、さらに奥へ進んでいく。そこにはこんこんと水の湧く川の始点があった。そして、そこには一匹の小さな白蛇がいたのである。その蛇には仲間にできるマークが付いており、カスミが出方を伺っていると、するりと動いて巻きつくようにしながら体を登ってくる。蛇はカスミの首元で落ち着いたようで、動きを止めてチロチロと舌を出す。
同時に水が湧くのに合わせて、光を放ちながら指輪が一つ浮き上がってくる。
カスミはそれを拾い上げると嬉しそうにぐっと握った。
「名前は……町に着くまで待ってくれ。さて外は……」
カスミが外を窺うと、深い霧は消えていて、蛇もいない静かな森が広がるばかりだった。
「ふぅ……これなら楽に帰れるか……お前もあんな風に大きくなるのか?」
カスミは首元の蛇の頭を撫でつつ、成長後のサイズなどに不安と期待を胸に抱いてギルドホームへと戻るのだった。




