防御特化と攻略後。
魔法陣に乗り塔から出ると、運営からメッセージが届き、塔攻略の祝福と報酬についてが綴られていた。
二人は塔を攻略しきり、銀のメダルを五枚手に入れたのである。
「これでギルド戦の時と合わせて十枚か」
「早速選ぼうかなあ」
「そうだね。スキルとかも変わってるかも」
「じゃあ、選び終わったらギルドにいるから」
「おっけー……五層でいいよね?」
「……うん」
二人は十枚のメダルを使用すると、スキル選択用の空間に転移した。
そしてしばらくして、サリーがギルドホームにやってくるとメイプルはすでに選び終わってソファーに座っていた。
「ん、メイプルもう終わってたんだ」
「どれにしようかなーって思ったけど分かりやすいのにしたよ」
「まー、私も方針は決まってるし」
「えへへ、私はこれ!」
そう言ってメイプルは自分のスキルをサリーに見せる。
【不壊の盾】
30秒間ダメージ半減。
三分後再使用可能。
「なるほど、今回結構ダメージ受けてたしね」
「本当は無効があれば良かったんだけど……」
「それはあったら教えるよ。私は【水操術】っていう水を操るスキルにした」
「水魔法……とは違うんだよね?」
「スキルレベルも上げていけるタイプだから、面白いスキルにならないかなって。あと凍らせて足場にするのにちょうどいいし」
「どんな感じになるか楽しみだね」
そんなことを言っていると、メイプル達がいると確認したのか、ギルドホームに残りの六人のメンバーもやってきた。
疲れてはいるものの嬉しそうなその表情を見て二人は何となくその理由を理解する。
「お!メイプルにサリー!十階勝ってきたぞ!」
クロムが嬉しそうにそんなことを言う。
「ふふっ、私達もです」
「何とか一発突破しました!」
「おぉ!それはすごいな。かなり強かったろ?」
「すっごい燃やされましたよ!」
「先を越されてしまったか、惜しかったのだけれどな」
「スキルももう決めたのかしら?」
その言葉に二人は取得したスキルを教えることで返す。六人はもうすぐ七層が解放されるため、それをクリアしてから決めるとの事だった。
「じゃあ次は皆で戦って七層ですね!」
「……め、メイプル。私は塔の時と同じ感じで……」
六層のボスがどんなものなのかなど考えなくてもわかると言うものである。
サリーが戦える相手ではない。
「うん、七層行ったらまた探検しよう?」
「全員での戦闘かー、これならちょっとは楽できそうかな」
「私達頑張りますね!」
「……頑張りますっ!」
全員が目標を達成して、次に目指すは七層ということになった。
そしてしばらく経って、メンテナンスが入り七層が実装された日。
メイプル達は少しでも早く集まってダンジョン攻略を始める予定である。
六層のギルドホームに集合した八人はボスの能力を確認し、いよいよダンジョンに向かうこととなった。
「……その、サリーは大丈夫なのだろうか?」
カスミの目線の先にはソファーに倒れ込み頭にマフラーを巻きつけて、隙間から死にそうな顔を覗かせるサリーがいた。
「いつもはあんなに強いのにね」
「早く攻略してやるしかないな」
八人はフィールドへ出る。
するとすぐにメイプルが【暴虐】を発動させた。
「じゃあサリー?」
「うん、お願い……」
メイプルががぱっと開けた口の中に入っていくのを見て、流石に残りのメンバーが言及する。
しかし、サリーの意思は固かった。
「ここの方がまだいいので……」
そうしてサリーは口の中に収まった。
尚の事早く倒した方がいいと、七人はメイプルの背に乗ってフィールド、そしてダンジョンを駆け抜けていく。
そうしてサックリとボス前についてしまえば後は簡単である。
「属性なしの攻撃は効かないからまずこれを使ってね」
「今日はいいバフスキル引いてるんだよね」
「アイテムも使うといい」
いつも通り戦闘前にマイとユイに全力でバフを盛り、メイプルの【身捧ぐ慈愛】下で敵に麻痺を入れるだけである。
「塔と比べればこの程度!」
「サリーのためにもすぐ終わらせないと!」
ボス部屋の扉を開けるとそこには巨大なゴーストがいた。
おどろおどろしい見た目をしているそれは通常フィールドにおいては確かに強力なボスだった。
しかし、塔を突破してきた八人もとい七人にとってこの程度は敵ではない。
「麻痺入ったぞ!」
カスミの斬撃で麻痺が入ると、メイプルが背中にマイとユイを乗せて走ってきて、そのまま二人を下ろす。
「「いきます!」」
動けなくなったところに強力な一撃が次々に叩き込まれていく。
それに耐えられる程のボスがこんな場所にいるはずもなく、ボス部屋突入から一分と少しで巨大ゴーストは爆散した。
「ドロップ素材は回収したわ」
「なら上に上がろう……本当、サリー大丈夫か?」
全員が心配そうにする中、次の層が見える手前でメイプルはサリーを口から出し【暴虐】を解除する。
「大丈夫?」
「二度と六層行かない……」
サリーは立ち上がると目の前に迫った次の七層に不安そうな顔をする。
「きっと違う感じだと思うよ?」
「そうだね……よし!行くぞ行くぞ……っ!」
サリーが覚悟を決めたところで全員で七層の景色を確認する。
そこに広がっていたのは広大な大地と自然、そして駆け回る多様なモンスター達だった。
ここはモンスター達が住まう層。
中には友好的なものもいる。すなわち七層はモンスターを仲間にできる階層なのだった。




