防御特化と塔十階3。
短めです。
燃え盛る炎が収まった時、サリーは無傷でいたものの、その目の前で【暴虐】がボロボロと崩れ落ち、メイプルがサリーの方に転がり出てきた。
サリーはメイプルを抱えて、ボスから距離を取る。
ボスには大技の硬直時間があったようだが、二人としてもそれどころではない。
「あ、危なかった……」
「ごめん、まだこんな隠し技があったなんて」
「一気に攻撃するのは危ないのかも?【暴虐】なくなっちゃった……」
「【身捧ぐ慈愛】は解除しておいて。範囲攻撃がくるとメイプルを回復する前にやられるし」
「うん、頑張って避けて!」
「任せて、それが取り柄だしね」
メイプルは改めて兵器を展開し、大盾を構える。
サリーもダガーを構えて再度集中力を高める。
「行くよメイプル【幻影世界】!」
「【攻撃開始】!」
銃撃を開始するメイプルの姿が三人になり凄まじい量の銃弾がボスに対してばら撒かれる。
ボスと距離を取っているため、分身作成に対応した攻撃は届かないが、ボスは目の前に炎の壁を作りメイプルの攻撃を防御する。
「うぅ、壊れて!」
メイプルの願いが届いたのか炎の壁は消えていくが、銃弾を避けるように斜め上に飛び上がったボスがそのままメイプルに飛び込んでくる。
「【ピアースガード】!」
メイプルは少しでもダメージを稼ぐために上に銃口を向け、【悪食】を直撃させる準備をする。
炎の勢いが増し巨大な火柱のようになった剣が分身もろともメイプルを斬り裂く。
炎のダメージは貫通攻撃とはまた別のため防げないが、剣のダメージは無効化し、なんとか持ちこたえる。
分身が消えたことは気にせずに、メイプルは大盾を振り抜いて肩から胴体にかけてを大きく抉り取った。
「もうっ一回!」
メイプルが再度振り抜いた大盾は炎の刃で跳ね除けられ、そのままの勢いでボスが突っ込んでくる。
メイプルにそれを完璧に対処するすべはない。
それでもメイプルは作戦通りというように笑った。
「サリー!」
「【クインタプルスラッシュ】!」
メイプルの射撃に乗じてすっと離れ、朧の【瞬影】で姿を消して完全に狙いから外れたサリーはボスの背後から攻撃のチャンスを待っていた。
【ドーピングシード】を限界まで使用したサリーの最大連続攻撃。スキル【追刃】の追加効果も合わさって片手ごと十回の計二十連撃が無防備なボスの背中に突き刺さりメイプルを攻撃しようとしていた剣が止まる。
凄まじいダメージを受けたことにより、優先する行動が変化しボスは地面に剣を突き立てる。
先程二人を焼き尽くした業火を生む魔法陣が再び展開される。
「【クイックチェンジ】!」
「【ヒール】!」
「【イージス】!」
メイプルが急いでポーションを飲み、それでも足りないHPをサリーが回復で補い、全てのダメージを無効化する光のドームを展開する。
大技には大技で、即死級攻撃には絶対の防御を押し付ける。
その外側で炎が轟音とともに吹き荒れる。
「チャンス!」
「うん!」
今度はその硬直を見逃さず、メイプルが銃撃を、サリーが連撃を繰り出し、残りHPを三割程度まで減らした。
すると衝撃波が発生し、ダメージはないものの二人を遠ざける。
サリーはすぐにメイプルの元まで来ると、HPを回復して、ボスの様子を窺う。
メイプルは装備を元に戻し、シロップも呼び出して攻撃力を確保する。
「上手くいったね!」
「最後まで油断しちゃダメだよ」
二人の眼前で、ボスは地面に突き立てた剣から炎を迸らせる。すると地面が砕け、炎の柱が何本も立ち上がり、フィールドを一変させる。
ボスの背後には炎の剣が五本浮かんでおり、纏わせた炎もより勢いを増している。
「……ここから本番って感じ」
「負けないよっ!」




