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防御特化と塔五階2。

イズがメッセージを送り全員がどういう状況かを把握して、現状の共有を行った結果、誰かが倒されるまで探索をする方針でいくこととなった。


「とはいえ、私も戦闘はできれば避けたいわね……」

攻撃もできるとはいえ、最新のイベントの折り返しまで来ると、小さなハンマーを構えていても仕方がないのである。

しかし、そんなイズを見逃すつもりはないようで辺りの地面から、わらわらと大量のゾンビが現れる。


「この量は……うぅ……素材の分は取り戻せなさそうね」

イズは覚悟を決めて【魔法工房】を展開すると爆弾の量産体制に入る。


「効果増強の結晶と……火炎放射器なんてどうかしら!」

所持金を素材に変換でき、どこでも自由に生産を始めるイズの攻撃アイテムが尽きることなどそうそうない。


「せっかく溜め込んだ分が……ああお金も消えていくわ……」

炎と爆風が濃い霧を照らす中、イズは遠い目をしながら爆弾を放り投げるのだった。



イズが一人になったのと同じようにして、マイとユイは霧の中で二人きりになってしまっていた。


「ど、どうしようお姉ちゃん!クロムさんどこか消えちゃったよ!」

ほんの少し前にいたクロムは濃い霧に包まれて、一瞬の内に消えてしまった。二人が慌てて追いかけてみてもその先には霧が広がるばかりである。


「とりあえず……何とか生き残ろう?きっとすぐまた合流できるよ」

そうして二人が不安そうにしていると、イズからメッセージが届いた。


「イズさんからメッセージ……えっと……ユイ!警戒してて」


「うん、任せて!」

マイはメッセージを送りイズと手早くやりとりをし、情報共有を行う。


「ユイ、えっと……カナデさんとカスミさんは一緒で、クロムさんとイズさんは一人みたい。何かのトラップのせいかもって」


「私達はどうしたらいいの?」


「誰かが倒されるまでは進んでみるみたい。だから私達も出口?……とにかく皆を探そう」

守ってくれていたクロムがいなくなった今、自分達の身は自分で守るしかない。


二人はイズから貰った、一定時間武器に炎属性を付与するアイテムを使い、さらに【ドーピングシード】で【STR】を底上げして一撃でモンスターを倒せるだけの準備をする。

そして、背中合わせでぴったりとくっつくと二本の大槌を構えた。


「後ろは任せたよお姉ちゃん!」


「うんっ……頑張るね」

二人は炎を纏った大槌二本をいつでも振り下ろせるようにしながらすり足でじりじりと霧の中を進んでいく。


「ユイ、足元も気をつけてね」


「んー分かってるけど、急に出てきたらどうしようもないよ」

二人が生き残るためには先手を取られてはいけないのである。一度攻撃を避けられるだけで、一気に形勢は悪くなってしまう。


「うーん……あ!お姉ちゃん、いいこと思いついたよ!」


「……な、何?」

マイはユイの自信ありげな表情を見て、ユイの名案に少し不安を感じながら話を聞くのだった。



その頃、不安そうにしている二人と比べて、カナデとカスミは余裕を持ってモンスターをなぎ倒して進んでいた。


「これだけ数で押してくると左腕も活躍できるなっ!」

カスミが刀を振り抜くのに合わせて、具足を纏った腕が巨大な刀を振るう。

属性を持たない左腕も、普通のモンスターならば容易に斬り伏せることができる。


「防御は任せて。カスミなら手数も十分だし」

カナデはモンスターに優先順位をつけて近づくものから的確に足止めをしつつ、カスミの回復と防御に回る。


元々五階でのアタッカー担当の二人である。多少モンスターに囲まれたところで大きな問題ではない。

カナデの対応力は【楓の木】でも随一であり、カスミは安定感があり、長期戦もできるアタッカーだ。

数で攻めるゾンビやゴースト相手ならば蹂躙できるだけの力を持っている。


「増えてきたら広範囲魔法を頼む」


「おっけー。ふふ、んーどれにしようかな……」

カナデはふわふわと浮かんでいる本棚に並んでいる本を眺めて笑みを浮かべる。


「私を巻き込まないようなもので頼むぞ」


「勿論!そういうのは使わないよ」

カナデは本棚の一角に並んでいる漆黒の装丁の本をチラッと見ながら答えた。


「ならいいんだ。どこへ向かえばいいかもよく分からないが、とりあえず新しく何かメッセージが来るまでは探索といこう」


「そうだねー。皆無事だといいけど」


「この様子だとクロムは一人だと厳しそうだな……死にはしないだろうが……」

カスミはそんなことを話しながらも次々にアンデッドモンスターを斬り捨てていくのだった。



そんなカスミの予想通り、クロムはゾンビ相手に苦戦していた。


「ああ、面倒な!次々湧いてくる!」

攻撃を大盾で受け止め、一体一体鉈で斬っていくしかないクロムはすぐに囲まれては何とか脱出するを繰り返していた。


「そこまで機敏じゃないのが救いか……」

ただ、苦戦しているとはいえ、クロムは死にはほど遠い位置にいた。


「回復は追いつくな。さてどうすっか」

削られても削られてもじりじりと回復して体勢を立て直し、一体ずつ数を減らし進んでいく。

その姿はアンデッドモンスターよりも遥かにアンデッドらしかった。


「早く合流したいぜ……二人も心配だ」

離れてしまったマイとユイのことを心配しながら、近づいてくるモンスターの首を斬り払う。

それに合わせて減ったHPがまた上限まで回復する。

ダメージ無効に復活まで持っているクロムは雑魚モンスターではそうそう落とせない。


「……俺も、結構やれるな?」

クロムは何だかんだ戦えると再認識し、やはりメイプルの戦闘は大盾使いのそれではないと思い直した。


こうして四組ともそれぞれの強みを押し付けて、モンスターの群れをやり過ごすのだった。

一部スキル描写の修正

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