防御特化と塔四階3。
感想返信は金曜夜にまとめてします。
遅くなってすみません。
そうして二人はしばらく岩の上で釣りをしながら休憩する。モンスターは釣れないようになっているのか、危険な魚も釣れず、サリーはイズに渡すような素材を次々手に入れていく。
メイプルは相変わらず、全く釣れないままである。
「むぅ、ダメだあ」
「ステータス変わってないしね。で、どう?元気になった?やっぱりシロップに乗っていくしかないと思うけど」
「ボートとか持ってないもんね」
メイプルの背に乗ることで、水中のモンスターを無視して突破できてしまったため、二人はボートなど持っていない。
正攻法を試すには一度、塔から出なくてはならないのである。
「うう……あの水の矢って貫通攻撃かなあ……」
「メイプルなら間違いなく空を飛ぶし、可能性は高そうだよね。わざわざ矢の形してるし」
貫通攻撃や、対空手段が全くないとは考えにくいのである。ただ、サリーが試したところ、ある程度の威力の攻撃を当てれば崩れて消えて行くことは分かっていた。無理矢理進むことは可能ということである。
「【身捧ぐ慈愛】は使いたくないけど、使わないとシロップは守れないし……」
「盾に乗って行く?ただ、上手く防御しないと当たっちゃいそうだけど。あ、それに貫通攻撃じゃないかもしれないし」
「そうしよっ!できれば一回も当たらない方向で……」
「足場無理矢理作って何とかするよ。あ、でもメイプルも頑張って攻撃してね?」
「まっかせて!ふふ、銃弾と矢で勝負だね!」
メイプルは装備を変更すると、兵器を展開して、空中に浮かぶ二つの白い手に大盾を持たせる。
「足場は『闇夜ノ写』かなあ、壊れちゃったら困るもんね」
メイプルは耐久値が高く、壊れても元に戻る『闇夜ノ写』を水面と並行にセットすると、サリーと並んでその上に乗る。
「あとの一枚は……サリーの後ろで!」
メイプルは大盾の上に正座すると、目の前に大盾を構える。
足場の大盾の両側には水面に向けた銃口や砲口が並んでいる。
「おお……完全装備だ」
「全部撃ち落とせば気にしなくていいし!」
「これでも抜けてきた分は何とかするから心配しないで」
「うん!じゃあしゅっぱーつ!」
メイプルは盾をゆっくりとスライドさせて、岩から離れていく。
それに合わせて、水面からは水の跳ねる音と共に水の矢が、メイプルからはお返しとばかりに銃弾が放たれた。
「いけー!どんどん進めー!」
「制圧力ならこっちが上だね!」
水中のモンスターも撃ち抜きながら、二人は順調に進んでいく。
サリーの出番もないままに、二人の川下りは続いていた。
「この程度の矢なら問題なしだよ!」
「シロップに乗ってたらまた変わってたかもね。ただ、よっと!ちょっと激しくなってきた?」
サリーがすり抜けてくるようになった水の矢を叩き落としながら話しかける。
「そうかも?足場の盾からバシャバシャ音してるし」
「だねー……ん、メイプル!前に何かいるよ!」
「よーし!それも撃ち抜くよっ!」
メイプルが銃口を向けた先には、水面から飛び跳ねては水の中に戻りを繰り返して近づく50センチほどの魚が何匹もいた。
「……トビウオ?」
「川だけどね。敵……かな?」
魚はメイプルが撃ち出した銃弾を器用に避けて、近づいてくる。
「矢がなかったらもっと撃てるのにっ!」
そんなことを言うメイプルの真下から、飛び跳ねたモンスターが刃物のようにギラリと光るヒレで勢いのままに攻撃する。
ほとんどは盾に弾かれて水中に戻っていったものの、一部はメイプルの銃や砲を切り落として抜けていったのである。
「あぁぁああ!わ、私の武器っ!」
「メイプル、矢っ!」
メイプルの兵器が壊れたことで、抑え込んでいた水の矢が二人目掛けて飛んでくる。
サリーは何とかしようと、咄嗟にメイプルに蜘蛛糸を括り付けて、足場を作れる見えない階段を上るように空へと駆け上がった。
それを追うように数え切れないほどの矢が新たに撃ち出される。
「メイプル再展開!あと……」
「分かってるっ!【毒龍】!」
メイプルが放った毒の塊はちっぽけな水の矢など全て飲み込んで、足場にしていた大盾から水中まで毒の海に沈めていく。
「よしっ【攻撃開始】!」
サリーが足場を作れなくなったのに合わせて、二人は大盾の方にそのまま落下する。
メイプルは、再度飛んできた水の矢を再展開した兵器で迎撃するとサリーを抱いて背中から大盾の上に着地した。
「大盾も毒塗れだ……」
「また、近場の岩で休憩したいかな。あっちこっちについてる毒も怖いし」
サリーとしては空中に足場を作ったことで下がったステータスを元に戻しておきたいのもあった。
「川下りって大変だね……」
「でも、もうかなり下ったよ。ほら、滝もあんなに遠いし」
「おっ、じゃあゴールも近いかな?」
「かもね。そうなるとボス戦だけど」
「うー、結局もうひと頑張りかあ」
メイプルはスルスルと盾を動かして、中継地点かのように近くの岩へと向かうのだった。




