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防御特化と塔四階2。

二人はそうしてしばらく川を下っていたが、森から何かが襲ってくることもなく平和だった。

メイプルの【身捧ぐ慈愛】が守ってくれているのもあって、サリーは背中の上で寝転がっている。


「メイプルー、水中はどんな感じ?」


「魚とか、色々いるみたい?たまに引っ掻いて倒しちゃう……」

メイプルは、不幸にも何かが巻き込まれた証拠として、ほんの少し経験値が入ってくる度に、六本のうち二本の足を合わせて申し訳なさそうにする。


「水の中に入るのは危ないし、私は釣りでもしてみようかな。珍しい素材とかあるかもしれないし」


「釣り……私でももうちょっと釣れたらよかったのになあ」

ステータスが偏っているメイプルでは、一時間やっても一匹程度しか釣り上げることができないのである。


「メイプルは潜るのも厳しいしね。ま、適材適所って事で……よっと!」

サリーは水中に釣り糸を垂らすと、のんびりと釣りを始める。しばらくすると、見たことのない魚が釣れるが、特に特殊な効果はないただの美味しい魚だった。


「あ、そうだサリー。他の皆も四階は泳いでるのかな?」


「どうだろ……水の中はモンスターでいっぱいなんでしょ?メイプルと同じ下り方はしないんじゃないかな。ほら、確か町のショップにはボートとかもあったし」


「ボートかあ……いいなあ……ねえねえサリー今度乗ろう!」


「いいよ、っとまた釣れた……ん?」


「どうかしたのサリー?」


「気のせい……じゃない。流れが速くなってきてる!」

水の流れが速くなるのとともに川の途中に大きな岩があるのも見え始める。ボートなどがぶつかればただでは済まないだろう。


「サリー、落ちないように捕まってて!ぶつかっても多分大丈夫!」


「避けるものだと思うんだけど……まあいいや。来るよ!」

サリーが蜘蛛糸でメイプルに体を固定して、落ちて【身捧ぐ慈愛】の範囲から外れないようにしたところで、水に押し流されて、泳ぐまでもなくメイプルの体が下流へと進む。


「よーし!やっぱり大丈夫!どうっサリー!」

体の大きさのせいもあり、避けることができずにことごとく障害物に衝突するものの、メイプルにダメージはない。そんなメイプルは激流の中を滅茶苦茶に流されながらも得意げに背中のサリーに話しかける。


「うっ……の、乗り心地はなかなか……メイプルっ!前前!」


「へ?わっ!わーっ!?」

大岩に連続して衝突し、メイプルがバランスを崩して水中に沈んでいく。

サリーは咄嗟にメイプルから糸を外すと岩に張り付いて難を逃れた。


「やっば……メイプル、どこ!?」

サリーは空中に足場を作り、糸を使い遠くの岩へと飛び移ってメイプルを捜索する。

しかし、黒い巨体はどこにも見当たらない。

さらに、サリーが空中を進むと、それに反応するように水中から水の矢が次々に放たれる。


「邪魔、しないでっ!」

サリーは体をひねって水の矢を避けると岩の上へと着地する。


「とりあえず水は飛んでこなくなったけどっ、水中はモンスターだらけだし、潜れない……ん?」

焦るサリーの視界に、黒い塊が岩にぶつかって跳ね上がったのが映る。

サリーはもう一度空中を駆けると、水の矢を避けながら水中に糸を放つ。


「捕まって……よしっ!」

確かな手応えを感じたサリーは、岩に体を固定すると力を込めて引き上げる。

すると、水中から人に戻ったメイプルが姿を見せる。


「よっ、と!大丈夫メイプル?」


「うぇぇ……溺れた……ありがとサリー」


「窒息で【暴虐】が解けちゃったか。ん、まあ無事でよかった」


「ぐるぐる回って……どこ流れてたか分からなかったあ……」

メイプルは目が回った様子で岩の上にペタッと座り込む。


「まずは休憩しよっか。メイプルも大変だったし、どうやって川を下るかも考えないとダメだしね」

メイプルの背中に乗って進むことはもうできない上、空を行くと矢が飛んでくるのである。


「そ、そうだね……まずは休んでから……うぅ、川の水止められたらいいのに」


「そんな蛇口みたいな……でも、確かにできたら楽だねー」

メイプルが落ち着くまで、二人は岩の上で一休みすることにしたのだった。

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