防御特化と塔四階。
短めです。
二人はスキルの確認を終えると、そのままの勢いで四階へと向かうことにした。
「そのまま行くの?メイプル」
「【暴虐】解除するのもったいないし……」
サリーが前を歩きながら、後ろを化物の姿のメイプルがついていく。
そうして二人は話をしつつ、ボス部屋の奥にあった四階へと続く階段を上る。
「あ、そうだ!スキルを大盾にセットしないと」
「さっきの……ええと【大噴火】だっけ?私はMPと硬直が厳しいなあ」
【大噴火】
消費MP50。発動前に三秒間硬直。三分後再使用可能。直線上に高威力の溶岩を放ちつつ、一分間地面に防御無視のダメージフィールドを生み出す。
「メイプルなら硬直はどうにかなるし。ダメージフィールドを上手く使えば、防御が高いボスとも戦えるかもね」
「うん!でも、自分で踏まないように気をつけないと……」
「ふふっ、爆発で飛んでる時とかは特に気をつけてね?」
サリーはそう言ったところで、何か思い当たることがあるようにメイプルの方を振り返った。
「……んー、メイプル。思ったんだけどまだセットしない方がいいんじゃない?」
「そう?」
「この塔を登り切ったらメダルも貰えるし、そのスキルを見てからでいいと思う」
今回塔を登り切れば、銀のメダルも十枚に届く。そこに、より強力でMPを要求するものがあるかもしれないのだ。
メイプルの装備へのスキル付与は不可逆なものなため、急ぐべきではないのである。
「攻撃力は足りてるでしょ?」
「攻撃も防御もバッチリです!」
「なら今は置いておいて次へ行こう。ほら、もう次の階の光が見えてきたよ」
薄暗い階段を上った先に見えたのは音を立てて落ちる水とその向こうに広がる森である。
四階の入り口は滝の裏に開いた穴に繋がっており、眼下には幅の広い川が流れていた。
滝と崖の隙間から外を確認すると、塔の中だというのに、上を見れば空があり遠くには海らしきものも見えていた。
「おー!すっごい広いよ!」
「だね、とりあえず……降りようか?」
穴からは足場が続いており、そこから川へと降りられるようだった。
ただ、これは人のサイズに調整されたものである。メイプルは今の姿では通れない。
「メイプルなら、飛び降りても大丈夫かな?」
「うん、このくらいの高さなら問題なさそう」
サリーが崖に沿って降りる中、メイプルは滝に突っ込むように飛び降りて、大きな音を立てて滝壺に叩きつけられた。
しばらくすると、滝壺の底から何事もなかったかのように化物がにゅっと頭を出す。
「結構深いよ!このままだと泳がないと駄目かも!」
「んー森の方には入れないようになってるし……このままだと川を下っていくしかなさそうだね。シロップに乗って飛んでいく?途中何かあったら困るけど……」
「【暴虐】を解除しないと駄目だけど……どう?」
「そっか。じゃあいいや、勢いのままガンガン進みたいし!」
サリーは貴重な攻撃力を優先することにした。
三階であれだけ空を攻めることができるつららを落としてきたというのに、空中を行くことで四階をスルーできる筈がないと考えたのである。
「おっけー!あ、ねえねえサリー、背中に乗る?水の中はモンスターがいるみたいだし……」
「そうなの?」
「すっごい噛まれてるよー」
そう言ってメイプルが六本ある足のうち一本を水から上げると、何匹かの魚が噛み付いた状態でビチビチと動いていた。
「じゃあ、乗せてもらおうかな。流石に水の中の警戒は大変だし」
「ふふふー、川下りと行きましょー!」
メイプルはサリーを背中に乗せると、六本の足を器用に動かしてゆっくりと川を下りはじめたのだった。




