表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
221/574

防御特化と塔三階5。

日を改めて、メイプルとサリーは再び三階へとやってきていた。スキルの使用可能回数なども回復して準備は万端である。


「よーし、今日はボス倒すぞー!」


「うん、そうだね。三階は敵も面倒だし……あの先にいるかは分からないけど」

二人はもう一度【万年氷】を探しには行かず、そのままあの溶岩の噴き上がるエリアへとやってきた。

目の前では以前と変わらず溶岩が溢れかえっている。


「じゃあ、使ってみようか。多分ここのためのアイテムだし」

サリーが【万年氷】を使用すると、足元を吹雪が吹き抜けて溶岩を黒く固め、そのまま氷で覆っていく。

そうして一瞬のうちに、溶岩の溢れる地面は氷の大地に変貌した。


「えっ……と、予想以上に固まったけど、急ごうメイプル!溶けたら面倒だし」


「あ、うん!そうだね!」

メイプルは最早当然と言わんばかりに、浮かぶ盾に挟まって移動する。

ただ、盾に挟まったメイプルの移動速度は歩いている時と大した差はなく、半分程進んだところで、地面の氷を突き破ってボコボコと溶岩が噴き出し始める。


「メイプル行くよ!降りて降りて!」


「あっ、うん!分かった!」

メイプルは盾の隙間からするりと抜け出ると、サリーに糸で繋がれて、引き摺られるように溶岩地帯を抜けていく。

しかし、そうしているうちに天井近くまで伸びる火柱が復活してしまった。


「うぅ……み、【身捧ぐ慈愛】!」

メイプルは躊躇しながらも【身捧ぐ慈愛】を発動させてサリーを守る。

そうしてダメージに備え目を閉じて、ぎゅっと身を縮こまらせるが痛みはなく、かわりに浮遊感がやってきた。


「これなら、噴き上がるまでに抜けられる!」


「……?お、おおー!」

メイプルが六層で手に入れて、サリーにあげた靴に付与されていたスキル【黄泉への一歩】。

これによって、サリーは空中にいくつも足場を作り上空へと逃げ、安全地帯へ文字通り飛び込んだのである。


「メイプルのお陰で落下ダメージはないし、よかった」


「ありがとう、サリー!ふー……お陰で燃えずに済んだよ……」

メイプルは背後で今も煌々と光る溶岩を見て安心したようにそうこぼした。

二人はそのまま先へと進み、特に何の障害もなくボス部屋の扉を見つける。


「お、本当にここにあった」


「予想通りって感じだね!」


「まだ行ってないルートもあるけど、氷も使ったし……」


「うん、行こう!私は準備万端だよ!」

そう言ってメイプルが腕をぐるぐると回しているのを見て、サリーはそれならと扉を開ける。

こうして中へ入った二人には地面に広がる溶岩によって、足場が飛び石のようになって制限されている広間が待っていた。


「うぐぐ……私は飛んでるね」

メイプルはそう言うと二枚の盾に挟まってすっと浮き上がる。

サリーにとってもやりにくいフィールドである。


「私もきっついけど……さてボスは……来るよ!」

二人が警戒している中、地面が揺れて最奥の溶岩だまりが大きく飛沫を上げて形を成していく。

そうして現れたのは煌々と燃える溶岩でできた巨人だった。


「サリーサリー!すっごい強そうだけど!?」


「氷は残しとくべきだったかもね!やるしかないけど!メイプル、溶岩の大技が来たら使って!」


「まっかせて!ちゃんと上から見てるよ!」

メイプルはそうして盾に挟まれたまま高度を上げていく。

溶岩系の敵はメイプルに固定ダメージを与えてくる可能性が高いため【身捧ぐ慈愛】も使いにくいのだ。


「【氷柱】……駄目か。おっけ」

サリーは【氷柱】が使えないことを確認すると、安全地帯を器用に飛び移りながら距離を詰める。


「【古代ノ海】!」

そうして移動するサリーの周りに、第二回イベントで手に入れたスキルによって、ふわふわと宙を泳ぐ青い光を纏った魚が現れる。


「【ウォーターボール】!」

サリーは途中の雑魚にしたようにまずは水属性での攻撃を試みる。

巨人の動きは遅く、水魔法も、魚が撒き散らす【AGI】低下の水も当てることは容易だった。


「あいつが移動する度に足場が……っと、くっ!」

巨人が地面を這うように進む度足場が溶岩で消えていく。

しばらくすると次の足場が出てくるが飛び移るタイミングはシビアである。


そんな中、巨人は溶岩の腕を振り上げ、サリーの方へ叩きつけてきた。


「……!」

サリーは空中に足場を作り、無理やりにそれを回避する。

しかし、叩きつけられた地面から放射状に火柱が噴き上がり、サリーに追いつかんとする。


「ちゃんと見てたから、ねっ!」

サリーに火柱が直撃するかどうかというタイミングで、メイプルがそれはさせないと降りてくる。

サリーと火柱の間に滑り込んだメイプルは浮かぶ二枚の大盾の上に乗ったまま、手に持った漆黒の大盾を斜め下に向けてぐっと構え、火柱を受け止める。


「サリー緊急避難!緊急避難!」


「う、うん、ありがとう」

サリーがメイプルの大盾に飛び乗ると、メイプルはそのままエレベーターのようにすうっと上昇していった。


「わっ、下ですっごい暴れてるよ」

メイプルが下を見ると地面をずるずると動き回り、腕を叩きつけては火柱を生み出していた。


「火柱も届かないみたいだしとりあえず作戦会議だね」


「じゃあ足場も不安定だし、シロップ呼ぶね!」

メイプルはシロップを呼び出すと巨大化させ、落ちないように慎重に大盾から乗り移った。


「対空性能が低い敵なら確認してから作戦立てられるのはやりやすい……普通ではないけど」


「さあさあ、どうぞこちらへ」


「ん、じゃあお邪魔しまーす」

こうして二人は燃えるフィールドの上でのんびりと作戦会議を始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ