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防御特化と塔二階6。

遅くなって申し訳ないです。


メイプルとサリーは一通り対策を考えると立ち上がった。


「結局ほとんど私のスキルのことだったねー」


「メイプルのスキルはボスが使った方が似合うくらいだし……対策を考えておかないと私は絶対やられるし」

メイプルには効果がないことが分かっているが、サリーはどの攻撃を受けても駄目なのである。

メイプルの攻撃手段一つ一つについて考える必要があった。


「メイプル、ちゃんと短刀と大盾は外した?」


「うん、外したよ!毒耐性がなくなったら私も駄目そうだし……」

メイプルはスキルを奪われてしまわないように黒い短刀と大盾を外し、イズに作って貰った白い短刀と大盾を装備した。

鎧はもう既にスキルが奪われてしまっているためそのままである。


防御力は最初の予定より下がってしまっているものの、【蠱毒の呪法】もあるため【毒竜ヒドラ】を渡さないためにはこうするしかなかったのだ。

【悪食】もメイプルに対してどれ程の効果があるか分からないため、二人は安全策をとったのである。


「あのボスのステータスがどれくらいか分からないし。弱体化?……うん、弱体化するとはいえメイプルの防御が抜かれたら誰でもそうだし仕方ないよ」


「そうだね。大丈夫だといいなあ……」

メイプルが少し不安そうにボス部屋の扉を見つめる。


「じゃあ、メイプル。開けるよ?」


「……よーし!いいよ!」

メイプルはぺちぺちと自分の頬を叩いて気合いを入れ、ぐっと盾を構える。

それを見たサリーが一気に扉を開けて、二人は中へと入った。


中に入るとボスのHPは全回復しており、炎を放つ本とスキルを封印する影を呼び出す最初の動きに戻っていた。


「最初から使ってはこないみたい。メイプルはスキルが奪われるようになったら、いつも確認して持っていかれたものを教えて!」


「うん!分かった!」

再確認という風にサリーがメイプルに呼びかけて走り出す。

メイプルもそれについて行くように、ぱたぱたと走って行く。


「序盤は変わらないなら、問題ないっ!」

サリーは前回と全く同じようにボスのHPを削り取っていく。

メイプルは基本的に【挑発】で炎を放つ本の注意を引く以外は特にすることがないため、サリーに【カバー】ができる位置に立っていた。


「むー……久しぶりにちゃんと【カバームーブ】を使わないと。この距離なら届いたはず……も、もうちょっと近づいておこうかな」

位置を微調整しながら、サリーがダメージを与えていくところを見ていたメイプルは、せめて封印は受けないようにしようと足元を確認する。


サリーは集中力が切れてしまう前にHPを減らそうと激しく攻撃を続け、そのかいあって早くもボスが奪ったスキルのページを開いた。


「メイプル!」


「【カバームーブ】【カバー】!」

行動の変化を見逃さずにバックしてきたサリーにメイプルが追いつく。

直後、メイプルの体に弾丸が直撃した。


「ちゃんと見ておけば大丈夫だね!」

大きな音を立てながらメイプルが弾丸をその身で弾く。


「そう……みたい?一度奪ったら頻繁には奪ってこないのかな」

それなら問題ないと、サリーはメイプルの背中にぴったりと張り付いたままで前進する。


「うう……すっごい量!」


「前回はちゃんと見る時間もなかったけど、周りの雑魚モンスターは一旦消えてるね」


「あ、本当だ!これなら楽だね!よかったー……」

ボスの近くに来るにつれて上から撃たれるようになり、メイプルは盾を傘のように上に構えてサリーを守る。


「これは……体で受けてもいいメイプルにしかできないね」


「ふふふ、この程度の攻撃なら大丈夫!スキルも取られてないし!」


「そうだね。うん、追加で奪われないならパパッと攻撃していこうかな」


「しっかりついていくよ!」


「ん、お願い。じゃあ……いくよ!」

サリーがメイプルからぱっと離れてボスに攻撃を仕掛ける。

無理と言っていたものの、サリーは飛んで来る弾丸を当然と言わんばかりにダガーで弾きながら駆ける。

そして、耐久値を減らさないように盾をかばってメイプルがついていく。


「【ダブルスラッシュ】!」

【剣ノ舞】の青いオーラが散り、ボスのHPがガリガリと削れていく。

サリーが何本も伸びる氷の柱を利用して上手く弾丸を避ける。

それはメイプルから見ても相当練習したことが分かるほどのものだった。


「……っ、サリー!」


「大丈夫!気づいてる!」

HPが削れたことで、ボスはもう一つのスキルを並行で使用し始めた。

地面が黒く染まり二匹の化物がずるりと出てくる。


そして、それに紛れるように再びスキルを奪う鎖が反応できなかったメイプルを縛った。


「ううっ……予定通り!予定通りだもん!」


「メイプル、【捕食者】そっち行ったよ!」

メイプルが縛り上げられたことでターゲットになったようで、弾丸に加えて捕食者も近づいてくる。


そして、一匹が足から胴までを大きな口で噛み、二匹目は飲み込むようにメイプルの頭に噛みついた。

メイプルは思わず目を閉じたものの、ダメージはないことに気づきゆっくり目を開ける。


「お、おー……口の中ってこうなってたんだ!結構一緒に戦ってたけど知らなかったなあ……」

メイプルはそのまま奪われたスキルをサリーに伝える。


「【蠱毒の呪法】と……【フォートレス】と【身捧ぐ慈愛】!あと【絶対防御】!でも大丈夫そうだよ!」

メイプルは前が見えない状態でサリーの方に叫ぶ。

サリーはこっちも何とかなっていると返し、そしてメイプルの耳に魔法の音や氷柱の伸びる音が聞こえてくる。


「脱出しないと……えーっと、よし!」

メイプルはインベントリを開くと、そこから次々爆弾を取り出した。

爆弾はそのまま地面に落ちていき、飛んできた弾丸によって連鎖爆発を引き起こしたのである。


「どーだっ!私だってスキルがなくても攻撃できるんだよ!」

メイプルは化物の口の中でドヤ顔をみせる。

こうして、燃え上がる炎の中で鎖は断ち切られたものの、メイプルも何度も支えられてきた化物二匹はメイプルを噛んだままだった。


「……も、もう離してくれてもいいよ?」

メイプルのその声に反応したというよりは、拘束が解けたことが決め手となって、二匹は離れてサリーの方に向かっていく。


「そ、それは駄目だって!」

メイプルが開放され周りを確認すると、そこでは溢れかえる小さな本によって炎や水、風の刃に石の弾丸などが飛び交っていた。


そしてさらに、本からは白い翼が伸びている状態である。

ボスからの攻撃も激しくなっており、サリーがどこにいるかがメイプルにはすぐに分からなかった。


「えっ!?」

メイプルが急がないとと焦りながらボスの方を見た時、ボスの上に表示されたHPバーが一気にガクンと減少して、ボスは一気に光となって爆散した。


「えええっ!?」


「よっ……と。つ、疲れた……」

その光の向こうからサリーがすたっと地面に降りてきてその場に座り込む。

それを見たメイプルは急いで駆け寄っていく。


「た、倒しちゃったの?」


「そうだよ、【身捧ぐ慈愛】が持っていかれたのもあって何とかなったかな。回復は使われないで済んでよかったよー」


「うー、ちゃんと戦いたかったなあ!噛まれてたから何も見えなかったし……」


「誘った身としてはさ、たまには私もメイプルより活躍して、いいとこ見せたいし……なんて。捕まった時に助けないでいたのはちょっとわがままだったかな……?」

サリーは少し申し訳なさそうに目をそらしつつそんなことを言う。

するとメイプルは少し考えてから何か思いついたようにぱっと顔を上げた。


「なるほどなるほど!じゃあ……一階は私が頑張ったし、三階ではどっちがボスを倒すか勝負だね!」

メイプルがそんなことを言うとサリーは少し驚いたような表情をする。


「……うーん、勝てるかな?」


「ふふっ、無理だったら私が勝っちゃうよ!」

メイプルはそう言って自信ありげに笑う。

それを見て、サリーもいつも通りの調子に戻ったようだった。


「……よーし、なら負けないよ。次はきっちりサポートもしてボスも倒す!」


「じゃあさ、もう三階に行っちゃおう!善は急げ……とはちょっと違うけど」


「思い立ったが……っていうやつかな。行こうか!」

サリーも賛成するとメイプルはぱっと三階に向かって駆け出した。


「……よし、次はちゃんと落ち着いて戦おう」

サリーは反省してメイプルの後を追いかける。

そして三階にたどり着いた二人の前に広がっていたのは、今までとは違い比較的広い空間とゴツゴツした岩の壁、そして赤く燃える溶岩だった。


「また全然違う感じだねサリー」


「そうだね……通路タイプばかりじゃないみたい、道はいくつかあるけど」


「とりあえず一つずつ見てみる?」

サリーが観察する中、そう言ってメイプルが歩き出す。


そして足元からごぽっと噴き出た溶岩がメイプルの足をじゅっと焦がした。

そして、ほんの僅かにメイプルのHPバーが減少する。


「「あっ……」」

二人はそうしてぴたっと固まったのだった。


皆様が応援してくださっているお陰で三巻の方も重版となりました。

ありがとうございます!


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