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防御特化と塔二階2。

メイプル達は広い図書館を進んでいく。

まるで迷路のように入り組んだ図書館は、右も左も同じような景色ばかりで、奥へと進んでいるのかどうかも分からないようなものだった。


気分を変えるとばかりにメイプルは装備を変更して、六層の屋敷で手に入れた緑の洋服を着ている。


「どれくらい広いのかな?」


「んー、どうだろうね。結構進んではいるんだけど……あ、また来たよ」

暗い廊下の先から数冊の本が飛んでくるのを確認したサリーがメイプルに声をかける。

メイプルは言わずとも分かるというように兵器を向けた。


「ふふー【攻撃開始】【ポルターガイスト】!」

メイプルがそう言うと撃ち出されたレーザーは、メイプルの手の振りに合わせてぐんと軌道を変えて、本を追いかけて焼いていく。

高難易度の塔なだけあってすぐに倒れることはないものの、複数のレーザーのどれかが命中してHPを削り取る。


一本道の通路はメイプルにとってこの上なく戦いやすい場所なのである。


「おー……器用になった……ちょっと違うか」


「一本ずつ動かしてるだけだから簡単!こう、剣を振るみたいに!」

メイプルはそう言って手をぶんぶんと振ってみせる。

真っ直ぐ飛んでくるだけの本は次第にHPを失っていき、やがて光に変わって消えていった。


「遠距離攻撃は流石だね。すごい不思議だけど……不思議だけど」


「でも、この攻撃はそこまでダメージが与えられないし、私がまだまだ下手だから速いモンスターには当たらないんだよね」


「そこはまあ、要練習ってことで。当てやすい攻撃ではあるはずだし」


「そうだね……もう、全部いなくなった?」

メイプルが目を細めて通路の先を見つめる。

サリーも同様に確認し、何もいないことを確かめた。


「うん、完璧」


「よーし、なら進もうっ!」

時折現れる本を蹴散らしながら、二人はさらに進んでいく。

曲がり角が来る度にサリーが慎重に先を確認し、戦闘はできる限り避けていた。


「いいよ、メイプル。メイプル?」


「どう?賢そうに見える?」

サリーがメイプルの方を向くと、メイプルはインベントリから取り出したのだろう眼鏡をかけており、その手に一冊の分厚い本を持っていた。

そして壁となっている本棚からは本が一冊抜き取られている。


「……その一言がなければ?」


「うっ……そう?むぅ、そっか」

メイプルは抜き取った本をパラパラとめくりながら呟く。

サリーはメイプルの近くまで来てその本を覗き込んだ。


「真っ白?何も書いてないんだ……」


「何か書いていくー?あっ!?」

メイプルがそんなことを言っていると、本はぱっと光になって手から消えてしまう。

そして、少しして元あった場所にすうっと現れた。


「持っていけないんだね……残念」


「持っていけたら変に悪用されるかもしれないしねー。ねえ?」

サリーがそう言ってメイプルの方をじいっと見る。

メイプルはその視線の意味に気づき、すっと目をそらした。


「そんな……えっと、たまーに、変なことが起こったりするけど。うーん……狙ってるけど、狙ってないよ?」


「確かにそう、だね。うん、確かに」

サリーはメイプルが話してくれた今までの行動とその結果を振り返って納得したように頷いた。

狙っているが、狙っていない。

これは確かにその通りだったのである。


「っとと、ごめんごめん!えっと、先に進めそうなんだっけ?」


「あ、そうそう。そうだよ。今のところ敵の気配もなしかな。だけど……ここからちょっと暗くなってるから気をつけて」

二人は話し合って、メイプルが明かりを持つことにした。

その気になれば、盾を増やすことも武器を増やすこともできるのだから適任だと言えた。


メイプルがインベントリからランタンを取り出して通路を照らす。


「サリー?これ光、いつもより弱い?」


「……そういう場所、なのかな。分からないけど……なら【ファイアボール】!」

サリーが魔法を発動すると普段よりも小さな火球が通路を飛んでいく。


「一部の魔法とかスキルとかが弱体化してそうだね。光とか炎とかかな?メイプルは……攻撃面は大丈夫じゃない?」

サリーがメイプルのスキルを思い出しながらそんなことを言う。

メイプルのスキルは光か闇かといったような構成であり、攻撃を担うスキルは名前からして明るいものではない。


「そう言えば……【身捧ぐ慈愛】は変わってなさそうだけど、どうしてかなあ?」

メイプルが二階に入ってから使い続けている【身捧ぐ慈愛】はその見た目に変化はなかった。


「もっと進んだら変わるかも。ちょっと攻撃を受けないようにしておこうかな」


「できる、よね?」


「もちろん。だから、範囲攻撃はきっちりその盾でガードしてね」


「任せて!」

二人はできるだけ危険を潰すように、より一層慎重に薄暗い通路を進んでいったのだった。



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