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防御特化と塔一階2。

通路を左へ右へ、階段を上に上にと進んでいく二人だったが、複数回の戦闘で最高難易度とされるモンスターの強さを感じていた。


「面倒だなあ」


「だねー。どれも強いよ……」

物理攻撃を無効化するもの、魔法を無効化するもの、一定条件を満たすことでしか倒せないものなど一癖あるモンスターが勢ぞろいである。


サリーの【剣ノ舞】も壁を素早く飛び回るモンスターと戦った時に限界値まで上がっていた。


メイプルを筆頭に強いプレイヤーが来るのだから、それ相応の敵が出てくるのも当然だった。


そんな二人の前にまた新たなモンスターが現れる。それは雲が人の形をとったようなモンスターだった。


「サリー!また何か来たよ!」


「見たことないモンスターだね。気をつけて!」

メイプルは【身捧ぐ慈愛】を使っている状態で、さらに大盾を構えてサリーの前を歩く。

サリーはその後ろで飛び出すタイミングを見計らっていた。

そんなメイプル達に気づいたようで雲のモンスターも戦闘体勢に入る。


一瞬の静寂の後にモンスターの体が緑色に輝き、通路を埋める程の風の刃が飛んでくる。


「メイプル!」


「うん!」

メイプルはここまでの戦闘で残り七回となった【悪食】を温存するために盾を下ろす。

最も速く届いた風の刃がメイプルの体に当たる。

メイプルにダメージは通らないが、しかし、メイプルの体がぐんっと跳ね飛ばされる。


「わっ!?」


「【ウォーターウォール】!」

サリーはそれを見て瞬時に水の壁を張り時間を稼ぐと、ノックバックにより吹き飛んだメイプルの方に走る。


メイプルが吹き飛べば【身捧ぐ慈愛】の範囲から外れてしまうのだ。

サリーといえど逃げ場のない攻撃は避けられない。


「メイプル、【ヘビーボディ】!」


「あっ!そっか!【ヘビーボディ】!」

サリーの声に、思い出したようにメイプルがスキルを発動する。

そして、スキルの効果でその場から動けなくなる替わりに、ノックバックを受けなくなったメイプルの元にサリーがざざっと駆け込んでくる。


「んー、あれじゃあ近づけないよ?」


「一本道っていうのも運が悪いね、とりあえず今の内にノックバックをどうするか考えないと」


「……それなら【天王の玉座】!」

メイプルがそう言うと白い玉座が現れる。

そして、ノックバック無効が切れたところで、メイプルは吹き飛ばされてすとーんと玉座に着席した。


「これなら弾かれても大丈夫!」

サリーが受けている風の刃のノックバックも引き受けてメイプルが笑う。


「なら、あとは元凶を何とかしないとね。メイプル、一回撃ってみて?」


「ん、了解!【砲口展開】っ」

メイプルの両肩から支柱が伸び、二つの大きな砲口がモンスターに向けられる。

それらは白く輝くレーザーを撃ち出し、いくつかの風の刃を吹き飛ばしながら雲のモンスターに迫る。しかし、レーザーはモンスターの張った風の障壁に受け止められて消えてしまった。


「うん、おっけー。障壁は正面だけだね」


「でもどうにもならないよ?」


「私が注意を引くからその隙に撃って」

サリーはダガー二本をしまい、糸を壁に張り付けて準備を始める。


「サリーは攻撃避けられるよね?」


「もちろん。風の刃が撃ち落とせるって分かったしね」

メイプルとサリーはそれぞれの動きを決める。

そして、それが終わるとサリーは糸を伸ばして壁をぐんぐんと上っていく。


「【氷柱】!【ファイアボール】!朧【火柱】」


「【攻撃開始】!」

サリーは途中でいくつか足場を生み出すと、風の刃を撃ち落としては、スルリとその間を抜けてモンスターの近くまでいく。

メイプルもレーザーを放って、風の刃を吹き飛ばしサリーをアシストする。


二人は最初こそ驚いたものの、きっちりと動きを決めたならば攻略できない相手ではなかった。


サリーは壁をつたってモンスターの真後ろに降りてくると、青いオーラをなびかせてモンスターに向かって斬りかかる。

サリーの攻撃は風の障壁に受け止められるが、サリーはそのまま攻撃を続ける。


「【氷柱】!【右手:糸】【黄泉への一歩】!」

そしてサリーの方へモンスターが向き直り風の刃が飛んできたその瞬間。

サリーは氷の柱に糸を伸ばし、メイプルに貰った靴のスキルで空中に足場を作り離れていく。


「あーあ。絶対にこっちなんて向いちゃいけなかったのにさー」

サリーがそう言った直後、通路に爆音が響いて炎が舞う。

煙を貫いて、吹き飛んできたメイプルがモンスターに一気に肉薄する。

メイプルを押しとどめていた大量の風の刃も強力な障壁もそのがら空きの背中にはないのである。


「【攻撃開始】っ!どう!?」

ゼロ距離から放たれるレーザーと、振り抜かれる全てを飲み込む大盾がモンスターのHPを一瞬にして消し飛ばしていく。


「とどめだよっ!」

振り抜いた大盾を引き戻して、もう一度叩きつけるとモンスターは光となって消えていった。


「お疲れーメイプル、ナイス攻撃!」


「うん!サリーもありがとう!あっ、ちょっと待ってね」

メイプルは玉座を戻し、兵器をしまうとぽんぽんと鎧についた煤を落とす。


「うー、HPはそこまで高くないけど、ボスみたいだよね。ボスみたいなのがただの通路にいるってやっぱり難易度が高いってこと?」


「……皆もそう思ってたりするよ、きっと」

サリーは少し目を細めるとそんなことを言った。


「……?っとと、それはともかく。早く行こう!またあれが来たら大変だよ!」


「ん、そうだね。急いで突破しちゃおう」

サリーが罠を見つけつつ、避けられるモンスターは静かに道を変えて避けながら、二人は探索を続けるのだった。


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― 新着の感想 ―
ボスみたいなのが、ただの通路にいるって…お前だよっ!w
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