防御特化とポルターガイスト。
随分遅くなってしまいました。
申し訳ありません。
ただ、色々あった時期も抜けましたので、本日夜も投稿できると思います。
時間は少し遡って、屋敷から逃げるように飛び出したメイプルは、たまに振り返りながらも屋敷から歩いて離れていく。
「何ともなさそう……?よかった……あ!結局欲しかったスキルはなかったんだっけ」
メイプルはミィから聞いた【アイアンボディ】と【ヘビーボディ】を探していたが、それはこの屋敷では見つからなかった。
「でも、そういえば何か持って帰ってきたような……えっと、どれだっけ……あ、これだ!」
メイプルはインベントリの中身を確認して屋敷の中で手に入れたものを取り出した。
それはあの屋敷で双子の片方が着ていた緑色の洋服である。
「【幽霊少女の洋服】?むぅ、装備品かあ。あ、スキルがある」
メイプルは付与されているスキルがあることに気づいてそれを確認する。
【幽霊少女の洋服】
【MP+30】
【ポルターガイスト】
MPを10消費して魔法、一部のスキルを自在に動かすことが可能になる。
最大十個の物体を同時にコントロール可能。
効果は五分間持続する。
ただし操作できるものは自身のものに限る。
「私はMPは低いからスキルはそこまで使えないかなあ。でも、この服はいいかも!」
メイプルは装備を変更して【幽霊少女の洋服】を装備する。
フリルとリボンがふわっと揺れてメイプルの装備が緑色の洋服へと完全に切り替わる。
メイプルはそれを確認すると、シロップを呼び出して顔の近くまで持ち上げた。
「えへへ、シロップとお揃いの色だよー」
メイプルはシロップに対してにっこりと笑いかける。
性能としてはメイプルにはあまり噛み合っていないものの、メイプルはこの装備を嬉しそうにしていたのである。
「一つくらいならいいよね!」
メイプルはこの装備はサリーにあげるのではなく、自分で使うことに決めた。
「んー……盾は外して、あとは……あった!」
メイプルは盾を外した代わりに小さな銀色の冠を頭に装備した。
ジャングルでペインと共に戦った時に手に入れたそれは、MPを50%上昇させることができるものである。
「これでいい感じになったかな?後は戦い方を考えればシロップと同じ色の装備で戦えるね!」
メイプルはどんな戦い方ができるだろうかとその場で考え始めた。
装備をほとんど外してただの少女となったメイプルだが、それでも防御力はトップのままである。
攻め方さえ考えればいつものメイプルと何ら変わらない。
「うーん……シロップと一緒に戦うとして……んー……んー」
メイプルはどうやって戦おうかと悩んでいたが、今回手に入れた装備に【ポルターガイスト】のスキルがついていたことを思い出した。
「あ、【毒竜】とかも操作できるのかな?」
メイプルが【毒竜】を擊ち出して【ポルターガイスト】を発動すると、青い光に包まれて毒の塊が空中でぴたっと止まる。
「おー!えっと、じゃあ動かすのはー、こう?」
メイプルが手を下に振り降ろすとぐんっと加速した毒竜が地面に叩きつけられて弾け飛ぶ。
「わっ!?上手く使うの難しそう……」
メイプルは驚いて咄嗟にすこし後ろに飛び退く。
そしてメイプルはすこし考えてから、何度も使うことができない【毒竜】の替わりに兵器を展開した。
「これで練習してみよっと」
メイプルは操作の練習をするものの、止めたものを同時に動かすことができるのは、今のところ二つが限界だった。
スキルの性能としては十個の物を同時に動かすことができるのだが、メイプルが完璧に使いこなす日は遠そうである。
「手の動きに合わせて動かすのは簡単なんだけど……うーん、暇があったら練習しないと駄目そう」
メイプルは巨大化させたシロップの上に座ると、練習を再開した。
銃弾を一つ操っては遠くに見えるモンスターに当てていくものの、それではコストと手間の割に与えられるダメージがあまりに少ない。
メイプルはMPポーションを飲みながら、ああでもないこうでもないと改善策を練りつつ、スキルの練習を続けたのだった。
メイプルはフィールドの端の方で練習していたが、プレイヤーが全く来ない訳ではない。
そして、ちょうどこのエリアにクロムとカスミがやって来ていたのである。
現在サリーとユイとマイが六層にいないため、行動するメンバーは偏っているのだ。
「ん、あれはメイプルか」
カスミが少し目を細めて確認しつつそう言う。
「あー、そうだな。シロップがいるし、背中から兵器は生えてるし間違いない」
そんな特徴的なプレイヤーは二人もいないことは間違いない。
クロムとカスミがメイプルに声をかけようと近づこうとしたところで、遠くに見えるメイプルの背中の兵器から空に向かって青白いレーザーが四本放たれた。
これだけなら今までも見てきた光景だったが、レーザーは消えることなくその場にとどまったのである。
そして少しの後に一本一本、まるで剣を振るうようにそれらが振り回された。
「「…………」」
二人は踏み出そうとした足を止めて互いに見つめ合う。
「聞きにいくか。カスミも来るか?」
「まあ、行くな。さて、何が出るか」
二人はボス戦に行くかのような雰囲気でメイプルの方へと歩いていった。




