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防御特化と対面。

遅くなって申し訳ありません。

ペースは戻せそうです。

メイプルが燃やされてからおよそ二時間。

メイプルは荒い息を吐きながら、廊下を歩いていた。

体のあちこちには埃や煤がついており、汚れが目立つ。


「うぅ……落とし穴はもう嫌だよ……」

毛玉浮遊ができなくなったメイプルが二時間の探索中にかかった罠の数は数えきれない程である。

燃やされたこと数回、落とし穴に落ちたこと数回、現れた甲冑に斬りつけられもして、槍やギロチンは最早見慣れたものである。


その中でメイプルが最も嫌っている罠が落とし穴だった。

落ちた先には棘があり、それ自体はメイプルにとって問題なく、むしろ叩き折ることができるようなものだったが、穴そのものはそうはいかない。


折った棘を荒い壁に打ち込むことができたため、メイプルは何度か落下しつつも上に戻ってくることができたが、疲労はすさまじいものだった。


あまりの大変さに二度目の落下の時には、メイプルの目からスッと光が消えていたのである。


「サリーならどこに罠があるか分かるのかな……私には分からないよ……」

恐る恐る一歩を踏み出すメイプルの足元でガコッと音がして床が沈み込む。


「ひぅっ!」

メイプルが咄嗟にその場を離れようとするがそれより早くメイプルに向かって何かが飛んできた。


「……ん、よ、よかった。ただの毒矢だった……」

メイプルは紫色の液体がついた矢を拾い上げてそう呟く。

毒矢が飛んできて安心するというのもおかしなことではあるが、今のメイプルにとって脅威度は落とし穴がトップなのである。


「うーん……結構奥まで来たと思うんだけど……来てるよね?」

壁や廊下が歪んでおり、またそれだけでなく天井にも扉があったりするため、メイプルは攻略できているのかが不安になってきていた。


「じゃあ、こっち!」

メイプルは直感に従って扉を開けて歩いていく。

装備を失ってなお罠を弾き返すその体のお陰で、メイプルは百以上の罠の中を好き勝手に進むことができているのである。


歩く速度は遅いものの、まともに探索するよりは遥かに早いペースでこの迷宮を踏破していた。


そうして進むこと数十分。


「あっ!あの扉……!」

メイプルが目を細めて見つめる廊下の先には今までとは違った扉があった。

それはゲームをしてきた中で何度も見たボス部屋を示す扉である。


「よしっ!装備を取り返すぞー!」

メイプルはそう言って廊下をぱたぱたと走り抜けていく。

当然罠は発動するものの、突然飛んでくる槍や矢に慣れてしまったメイプルにとって、それらは驚かされることすらない程度のものである。


「無視無視、待っててね双子ちゃん!ふふー……もう許さないんだから」

そうしてメイプルが意気込んだのと、メイプルの足元がぱっと割れたのは同時だった。


「ぅえあ!?うっ……ぐ!」

メイプルはギリギリ扉側の床の端に両手をかけてぶら下がったが、その両手はぷるぷると震えている。

どうやっても体を持ち上げるには至らない。


「ううぅ……落ちる…っ」

メイプルがちらっと下を見るとそこには緑色に輝く液体が溜まっていた。

メイプルはそれを見て顔を青くする。

下に棘がなければ復帰できないからである。


「だれかぁ!たすっ……ああああっ!!」

メイプルが駄目元で助けを呼ぶよりも先に腕の限界がきてしまい、メイプルはそのまま穴の底へと落ちていく。


バシャンと音を立てて緑色の液体に背中から落ちたメイプルは、憂鬱そうな表情で遠くなった天井を見上げる。


「はぁ……どうしようこれ……とりあえずこの毒っぽいのは大丈夫だけど。うぇ……ネバネバだ」

メイプルにとって溜まっていた緑色の液体には、ひんやりとしている以外の感想はなかった。

それよりも今解決すべき問題はどうやって上に戻るかである。


「ここまできてログアウトは嫌だなあ。考えないと」

メイプルは目を閉じて何か解決策はないかと考え始めた。

メイプルはしばらく考えていたが何かを思いついたのかぱっと目を開いた。


「うーん……そうだ!【全武装展開】!」

メイプルの体から兵器が伸びそして消えていく。

だが、メイプルは残念がるよりはむしろその光景に喜んでいたのである。


「よしっ!さあ、お仕置きして!ほら!」

メイプルはそう言って上を見るもののいつまでたっても剣や槍が飛んでくる様子はない。


「な、なんで?いいよ?お仕置きしてくれないと困るよっ!」

メイプルは飛んできた剣や槍を壁に刺して上に戻ろうと考えていたが、その計画はあっさりと破綻した。

あまりにゴールに近づいてしまったため、プレイヤーに要求されるのは罠を避けて部屋に入るのみだったのである。


それをただ何も考えず直進していては当然こうなるとも言えた。


「どうしよう……【天王の玉座】いっぱい出せたりしないかな……」

そうしてすっかり元気をなくしたメイプルの周りに変化が訪れる。

メイプルが粘つく緑色の液体だと思っていたものがゆっくりと動き始め、メイプルの体を覆っていったのである。


「あっ、スライム?ひんやりして気持ちいいよ。ちょっと落ち着くかな」

スライムはメイプルの体を溶かそうとメイプルの体を包んで蠢いている。


「…………!スライムさんありがとう!」

落ち着いたメイプルは何かを思い出したようで、一つ深呼吸をするとあるスキルを口にした。





メイプルが穴に落ちてから少しして、ボス部屋の扉が開け放たれる。


「あーきたきたー。みつかっちゃったー」


「うん。きちゃったねー、みつかっちゃったねー」

中にいた双子はそれぞれ空間を歪め物体を浮遊させつつ、くすくすと笑う。


「ふー……私の装備、返してもらうから」

そう言ったメイプルはふわひわと浮かぶ緑色の球体に浸かっていたのだった。


「物を浮かすくらい、私にもできるんだからね!」

念力サイコキネシス】で無理やり制御を奪い取ったメイプルは、スライムの形を操作し大きな盾と剣を形作ったのである。

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― 新着の感想 ―
[一言] スライムを武器防具に笑
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