防御特化とお屋敷3。
「とりあえず……攻撃されてるけど大丈夫そうだし。ちょっと見てみようかな」
メイプルは毛玉をかき分けて頭を出し、周りの様子を確認する。
すると、ちょうどメイプルへと一本の剣が飛んできているところだった。
剣は毛玉に弾かれたものの空中に静止しており、しばらくすると再びメイプルに向かって飛んでくる。
「えっ!?投げてるわけじゃないんだ……」
メイプルは投げ尽くして隙が生まれたりすることはないと理解して、他にも何かがないか目を凝らして探し始めた。
「んっ。あの豪華な鎧」
メイプルはもともと気にしていた豪華な鎧を注視する。
メイプルは豪華な鎧は青白い光を纏っており、直接攻撃することもなく静かに佇んでいることに気づいた。
そしてメイプルはその光と同様のものが、飛んでくる剣や槍にも見えることにも気づいたのである。
「あの鎧を倒さないとっ!【全武装展開】!」
毛玉から伸びる黒い支柱。
手足のように伸びた何本ものそれには一つの例外もなく銃や砲がついている。
「【攻撃開始】!」
メイプルが銃撃を開始すると、浮かんでいた剣や槍が射線に割り込み、高速回転して弾を弾いていく。
「すっごい……じゃなくて、なら【毒竜】!」
先程の攻撃は加減をしていたと言わんばかりに、剣を飲み込んで毒竜が突き進んでいく。
それは奥の豪華な甲冑に突き刺さり、地面を毒の海に変えながら甲冑を蝕んでいったのである。
浮かんでいた武器は地面に落ちて、メイプルを攻撃していたものは全てなくなった。
「あっ、鎖も外れた。よーし、羊毛はもういいかな」
メイプルがアイテムを取り出し羊毛に火をつけると、メイプルを覆っていた毛はパッと消える。
メイプルはゆっくりと体勢を整えて、地面へと飛び降りた。
「よっと。よし!何があるかなー」
そうしてメイプルが一歩を踏み出そうとしたところで、毒竜の直撃で崩れてしまっていた豪華な鎧から青白い光が溢れて空中に集まっていく。
「何だろう?」
メイプルが特に構えることもなくその光景を見ていると、光はやがて形を成し、さらに色が変わっていく。
そうして、青白い光が薄れていった空中に浮かんでいたのはまだ幼い少女だった。
屋敷の雰囲気からは綺麗すぎる明るい緑を基調とした洋服に、長い銀の髪に緑の瞳。
少女はメイプルを見るとくすくすと笑った。
メイプルが慌てて盾を構えると、後ろ側からすうっと手が伸びてくる。
メイプルがばっと振り返ると、そこには明るい赤の洋服を着た同じ見た目の少女がいた。
「だめだよ。もうこんなあぶないものはすてておこう?」
メイプルの盾や鎧が外されてふわりと浮かんでいく。それは薄い紫の光に包まれてすうっと消えていってしまった。
「あそびましょう?おねーちゃん」
緑の服の少女が空中でくるくると回りながらそう言うと、青白い光を纏った甲冑がガシャガシャと音を立てて起き上がりすうっと空中に浮く。
「たのしもう?おねーちゃん」
赤い服の少女がそう言うと、地面は歪み壁は崩れて空間が滅茶苦茶に書き換えられていく。
存在しなかった廊下が何本も伸び、床や天井に扉が現れて、屋敷は元の形からかけ離れていった。
「「10かぞえたら、もういいよ」」
二人はそれだけ言ってそろってくすくすと笑うと、それぞれに青と紫の光に変わって壁をすり抜け消えていった。
二人はメイプルにほんの僅かでも反応のための時間を与えることはなかったのである。
「えっ!?え?ええっ!?」
メイプルが慌てて周りを見渡すと、青白い光を纏った甲冑が足並みを揃えて近づいてきているところだった。
「あっ、えっ【毒竜】は駄目で、えっと【暴虐】も無理だし……そうだ【全武装展開】!」
【機械神】で事前にコストを払っておけば使えることを思い出したメイプルは兵器を展開する。
メイプルの体の表面に歯車やチューブが現れてそこから兵器が伸びていく。
「よしっ!」
「ああーだめだっていったのに。あぶないものつかってるー」
「つかってるー」
メイプルが安心したところで部屋に声が響き渡る。
そして、メイプルを青と紫の光が取り囲み、展開した兵器は砕けて消えてしまった。
「わるいこにはー」
「おしおきだー」
その声とともに青い光を纏った槍や、剣が床や天井からするすると生み出されたのだった。




