防御特化とお屋敷。
短いです。
メイプルが地面から伸びる骨の手に足を掴まれたりしつつも南へ歩いていくと、以前入った幽霊屋敷にも匹敵する大きな屋敷が見えてきた。
「むぅ……探索したいけど、室内だと【暴虐】も使えないし……どうしようかな?」
メイプルは少し迷ったものの、中へと入ることにした。
「お邪魔しまーす。おお、広い……」
目の前には広いエントランス。
伸びる二階への階段と地下への階段。
そして正面の壁には男性の肖像画がボロボロになっているものの残っている。
「んー……どこから探索するべきかな。やっぱり地下かな?地下って何かありそうだよね」
メイプルは一階の探索をすることなく地下へ続く階段を歩いていく。
「何があるかなー!うぅうっ!?」
そうして意気揚々と進むメイプルの横の壁から、突然槍が伸びてきてメイプルの体を貫こうとしたためメイプルは驚いて声を上げる。
「な、なんだ……ふぅ。ちょっとびっくりした……」
槍はメイプルの体に当たった瞬間に止まり、ほんの僅かさえも体に食い込みはしなかった。
「あ。階段が少しへこんでる。罠だったのかな?」
メイプルは体を捻って隙間を作ると再び前に進んでいく。
階段の先には長い廊下が続いており、いくつもの扉が両側にあった。
「全部見ていこう。ちょっと大変だけど」
メイプルは一番手前の部屋に入ろうと足を進める。
そして、その足がピンと張られた細い糸をプツリと引きちぎってしまった。
「んっ?んん!?」
メイプルの頭上から轟音が響き、同時にメイプルには避けられない速度でギロチンの刃が落ちてくる。
そしてそれはきっちりとメイプルの頭に当たって直後に砕け散った。
「……?……??」
メイプルは頭を撫でてみるが特に何ともない。
軽く衝撃が伝わってきただけである。
周りには砕け散った刃が転がっており、メイプルはしゃがんでそれを拾い上げるとじっと見つめた。
「脆くなってたのかな?でも、地下に降りてきたのは失敗だったかも。こんなのばっかりだとびっくりするし……」
メイプルはまた急に何か起こったりしないかと周りを確認するが特に変わったところはなかった。
「とりあえず一旦上に戻ろうかな……あれ?」
メイプルがそう言って振り返るとそこには既に階段はなく、無機質な壁があるばかりである。
「な、なんで!?」
メイプルが壊せるかもしれないと大盾をつけるが、【悪食】が発動することもなくただの破壊不可能な壁でしかなかった。
「……仕方ないっ!じゃあ何か探そう。探してたスキルもあるかもしれないし」
そう言って、メイプルはまた迂闊にも足を踏み出した。
そして下ろした右足の下の床がガコッと音を立ててへこみ、メイプルの両側の壁が迫ってくる。
「ち、ちょっとっ!」
メイプルは咄嗟に走り出したものの長い廊下を走りきる前に壁に挟まれて動けなくなってしまう。
「潰される……ことはないみたい?でも動けないっ……うぐぐ」
メイプルは無理やり兵器を展開したり、【毒竜】を使ってみたりしたが、壁は壊れなかった。
しばらく両側から優しく押される感覚を与えられていたメイプルだったが、壁がゆっくりと元の位置へ戻り始めた。
「どうしよう。足下も空中も何かありそうだよ……」
メイプルはその場にじっと固まってしまった。
もっとも、メイプルが罠を気にする必要などどこにもないのだが本人はそれに気がつかない。
「解決法……んー……!」
そんなメイプルは少しして、何かを思いついたような表情を浮かべたのだった。




