防御特化とお手伝い。
定期的にクロムから大盾の使い方を学びつつ、メイプルは暇があれば六層の町を歩き回っていた。
「んー、サリーが欲しいっていってたアイテムも一応手に入ったし。何をするのがいいかなー?」
しばらくあてもなく歩いたメイプルは、次のイベントまでは特に何かをしなくてもいいかもしれないとそう結論づけた。
「のーんびりするのもいいかもね。幽霊と戦うのは大変だし」
メイプルが町のベンチに座って、空を飛んでいく白い影を眺めているとメイプルにメッセージが送られてくる。
「ん?誰だろう……あっ、ミィだ!」
メイプルが文面に目を通していく。
そこには今から時間があるなら、一緒にモンスター討伐をしてくれないかということが書かれていた。
「別に暇だったから大丈夫だよ……っと。待ち合わせは東の入り口だね」
メイプルはベンチから立ち上がると東門に向けて歩いていったのだった。
メイプルが東の入り口までやってくると、そこには既にミィがいた。
「ごめんね!待ったかな?」
メイプルがそう聞くとミィはチラッと辺りを確認してメイプルに話しかける。
「大丈夫だよ。それよりも急に誘っちゃってごめんね」
「大丈夫。やることもなかったし」
「そう。でも本当にありがとう。行こうか?」
「うん!」
メイプルはミィの後をついて町から出ていく。
外に出て町から離れていけばいくほど人の量も少なくなって、ミィものびのびとした表情でいるようになっていく。
「【暴虐】使わなくていい?すごくゆっくりになっちゃうけど……私はいいけどミィは?」
「いいよ。のんびり話しながら行きたいな」
二人はそれぞれ最近のことを話しながら目的地まで向かっていく。
前回のイベントはどうだったかという話から、六層の敵はどうだというようなこと。
ミィは町の雰囲気が少し苦手だったり、それならサリーと気が合うかもしれないだとか。
二人はそんなことを話しつつ、目的地にたどり着いた。
「うーん。お墓だ」
「そうだね。ここに人魂が出るんだけど……炎攻撃を強化するスキルが手に入るんだ。でも攻撃が広範囲で結構強くて」
「そういうことなら任せてよ!【身捧ぐ慈愛】!【天王の玉座】」
メイプルの背中から天使の羽が伸び、髪は金色に瞳は青色に変わっていく。
頭に輝く天使の輪が浮かんだところで、メイプルの背後に白い玉座が現れる。
メイプルはそこにすとんと座るとミィの方を見て微笑んだ。
「いつでも大丈夫だよ。あ、でもあんまり離れすぎないでね?」
「う?あ、う、うん。分かった」
ミィはメイプルから無理やり目を離すと湧き始めた青い人魂の方を向く。
「【炎帝】!」
ミィの周りに二つの大きな火球が現れ、人魂を次々に飲み込んでいく。
しかし、炎攻撃強化のスキルを与えるというだけあってミィの炎でも一撃で落とすことはできなかった。
「やっぱり無理か……ちょっとは強化してきたんだけどなっ!」
ミィが腕を振り抜いて火球を放ったのと、大量に湧いた人魂が青い炎で視界全てを覆い尽くしたのは同時だった。
「……っ!あっ、そうだった」
ミィが燃え上がる炎の中で後ろを振り返る。
そこには炎の中、攻撃を替わりに受けてなおフルHPのメイプルが玉座に座っていた。
不落の要塞がミィを守っている以上、ちっぽけな人魂がミィを倒せるはずがないのである。
「これなら時間をかけられるね」
ミィがその業火で人魂を倒しきるまで、そう時間はかからなかった。
湧いていた数十体の人魂を倒し切った所で、相変わらず座っているメイプルにミィが近づいてくる。
「ありがとうメイプル。助かったよ」
「もう大丈夫なの?すごかったねー!ずっと炎の中にいたよー……キラキラしてて綺麗だった!」
「それは……よかった?いいのかな?まあ、メイプルじゃないと見られない景色だと思うな」
「そう?じゃあラッキーだね!」
「そうかもしれないね。うーん……何かお礼ができるといいんだけどな……あ!そうだ」
ミィは何かを思い出したという風な表情を見せる。そして、思い出したことをメイプルに話し始めた。
「【アイアンボディ】と【ヘビーボディ】っていうスキルがあるって話を町の情報屋で聞いたよ。【VIT】とか耐性に関わるんだって。高かったのに南にあるってことしか教えてくれなかったから結構いいスキルだと思うんだけど」
「スキルの情報って買えるんだ……」
メイプルが目を丸くしてそういうと、ミィもメイプルの表情を写したように目を丸くする。
「知らなかった……?えっと、まあお金は結構かかるんだ。でもいいスキルもあったりするよ」
そう言ってミィはメイプルに情報屋の場所を教える。
メイプルはそれをメモまで取ってきっちり残すとミィにお礼を言った。
「私の方こそありがとう。何かあったら言ってね。絶対メイプルを助けにいくから!」
「うん、またね!」
メイプルはミィと別れるとミィに教えてもらったスキルを探すために南へと向かったのだった。