防御特化と闇の中2。
遅れて申し訳ありません。
あと、近々投稿ペースを二日に一回にするかもしれません。ご了承ください。
しばらくして、情報を集め終わったというよりは、ようやく【暴虐】を解除する覚悟の決まったメイプルが足を止め、化物の皮を破って地面に降りる。
「とりあえず【全武装展開】!」
全力でとにかく離れる準備は整ったため、メイプルは次はシロップを呼び出し、巨大化させた。
「シロップ!【精霊砲】!」
メイプルが逃げ回っているうちに思いついた攻撃方法である。
シロップの放った白い光の筋が暗闇を照らして突き抜け、途中にいる小さな霊を飲み込んでいく。
「おっけー倒せる!シロップありがとうっ!」
貫通攻撃は変わらずあるため、【身捧ぐ慈愛】は安易には使えない。
メイプルはシロップを本来の大盾使いらしく盾でもって守ることにしたのだった。
「盾よし!塩よし!」
メイプルはアイテムを持つと、シロップが切り開いた場所を一直線に飛んでいく。
爆炎の尾を引いて暗闇の中を吹き飛んだメイプルは、ボスにありったけの塩を投げつけると地面に落下した。
「うぐっ、暗いと着地が難しすぎるよ……」
メイプルはそのまま今度は玉座の方へ向かって吹き飛ぶと、転がり込むように玉座に座った。
シロップは玉座の近くに待機させており、小さい霊が使うスキルの心配はない。
「ふぃー……とりあえずシロップの攻撃が一番だから、また撃てるようになるまで気長に待つしかないね」
メイプルは近づいてくる小さい霊はアイテムで対処した。
そしてボスが手を伸ばしてきた場合は、そのまま玉座の上で爆発して上空に打ち上がることで、緊急避難することにしたのである。
「よしよしこの調子で……シロップっ!」
メイプルが小さい霊を撃退しているその最中、ボスはシロップに向けて貫通効果のある攻撃を試みようとしていた。
「えっ、あっ、【身捧ぐ慈愛】!」
目の前に溢れる小さな霊のために玉座から離れられないメイプルは咄嗟にシロップを守ろうとするる。
「うぅっ……ぁあ、め、【瞑想】!」
玉座から持ち上げられなければ、【瞑想】と玉座の自動回復で回復が間に合う。
つまり、シロップを狙われたところで負けはやってこないのである。
ただ、回復しているだけでダメージは入っているという事実がメイプルにとって大問題だった。
「うぅう……びりびりするぅ」
メイプルの体には持続的に痛みがやってくる。
メイプルは玉座の上で悶えながら攻撃が止むのを待っていた。
しばらくすると霊は攻撃を止め、離れて配下である小さい霊の召喚に移った。
「シロップ大丈夫?うう……どうしよう、何回も耐えられないよ」
数値上は受けきれていても、メイプルには耐えきれない攻撃なのである。
このままシロップを狙われると厳しくなってしまう、そんなことを考えるメイプルに閃きが走った。
ただ、それは閃きと呼べるような大層なものとは言い難かったかもしれない。
「……シロップを指輪に戻せばいいだけだよ……馬鹿」
メイプルがシロップを指輪に戻すとメイプルを襲っていた痛みは綺麗になくなった。
何もシロップにいつも横にいてもらう必要はないのである。
「安全な時だけ呼べばいいんだ。よし、反省!」
メイプルはすぐに切り替えて前を向く。
敵はまだ消え去っていないのだ。
貫通攻撃を持っている以上、無駄なことを考えている時間はないのである。
「とりあえずもう一度離れてシロップを呼ぼう。【精霊砲】がないと厳しいや」
メイプルは玉座の上で兵器を広げ、爆発しそれらを壊しながら吹き飛んで、限界まで霊から離れた。
「よし、シロップに出てきてもらおう」
メイプルはシロップを呼び出して、【精霊砲】が再び使用可能になるまでの間、守りを固める。
「シロップ【精霊砲】!」
そうしてシロップが攻撃できるようになれば攻撃し、それまでは小さいサイズのシロップを抱え、【身捧ぐ慈愛】でメイプルが飛ぶ際の爆炎から守りつつ、ひたすら逃げ回る。
これを繰り返して、メイプルは珍しく攻撃を受けないようにモンスターと戦っていた。
「結構ダメージ与えたけど……っ!?」
メイプルはここで明確な変化が起こったことに気づいた。
今までは暗闇とはいえ自分の体は見えていたり、ボスは見えていたりと、表すなら月明かりのある夜といったような暗さだった。
しかし現状、メイプルには巨大化させて近くにいてもらっているシロップも、放置したままの玉座も、霊の姿も見えていなかった。
目を閉じているのと変わらないほどの深い闇がメイプルを包んでいたのである。
「ど、どこっ!?シロップ!」
メイプルはシロップを一旦指輪に戻すと、しゃがんで体を大盾に隠してキョロキョロと辺りを確認する。
「どこから来るの?ううん……」
メイプルは目を細めてみるものの自分の手元すら確認できない暗闇は変わらない。
「そうだランタン!」
メイプルはインベントリからランタンを取り出して明かりをつけようとする。
しかしその明かりは闇に包まれて、蝋燭の火が拭き消されるようにふっと消えてしまったのである。