防御特化と靴探し2。
短めです。
「撃破ー!」
メイプルが赤い幽霊を全て撃破したところで、地面に素材が落ちる。
「むぅ……はずれかあ。そもそも落としてくれるのかも怪しいけど……」
メイプルとしては周りに人がいないこの場所での戦闘は楽で、目的の靴を落としてくれるのであればこれ以上ないことである。
ただ、情報がないため無為に終わる可能性の方が高いと言えた。
「他にもサリーが欲しそうなものが手に入るかもしれないし……素材はイズさんにあげようかな?いつも装備をメンテナンスしてくれてるし!」
また、メイプル自身のレベル上げにもなる。
ここ最近、集中してモンスターを狩るということをしていなかったため、たまにはいいかもしれないとメイプルは思ったのだ。
メイプルは玉座に座ったままあの赤い霊が近くに現れないか目を光らせる。
「あ!いたいた!結構いっぱいいるのかな?」
赤い霊はメイプルの方に近寄ってくると魔法で攻撃してきた。
「普通の魔法もあるんだ」
撃ち出された赤い光はメイプルの腹部に当たると音を立てて弾けて消えていった。
「おっけー!大丈夫大丈夫!ほらほら近づいてきてー」
メイプルは赤い霊に手招きをすると、近づいてきた霊をまたアイテムで燃やし始めた。
「やっぱり遅いなあ……最近はさくさく倒せてたからこの感じは久しぶりだあ」
しかしのんびりとした戦闘というのもたまにはいいもので、メイプルは特にストレスを感じることもなくモンスターを倒していく。
「撃破ー!お、次の人がきた」
メイプルはにこっと微笑んでまた手招きをする。
明らかに人ではない赤い霊はメイプルを倒そうと寄ってきては無意味な攻撃を繰り返して消えていく。
「あ、そうだ。私確か毒スキルに即死効果が……あったこれだ!」
メイプルはあまり効果を発揮しないため忘れかけていたスキルを思い出す。
それは四層の壺の中で毒をもつモンスター達の頂点に立った時に手に入れたものだった。
【蠱毒の呪法】
毒系統スキルに20%の即死効果を付与する。
「弱めのスキルで……即死を狙った方が速いかな?攻撃するためのアイテムも少なくなってきたし、やってみよう!えっと……【ヴェノムカッター】!」
近づいてきていた複数の赤い霊に向けて放たれた毒の塊は【毒竜】と比べるとか弱いものだったが、即死効果が発動すれば関係ないことである。
「倒れないかー……こっちはこっちでMPポーションがないと駄目だし……一人で戦うのって難しいんだなあ」
メイプルは今までサリーが一人でメイプルために集めてくれたものを考えて、靴だけではお礼が足りないかもしれないと考え始めた。
「この階層はサリーのために頑張る……っていうのもいいかも。プレゼントはきっと喜んでくれるはずっ」
そうして、メイプルは何度も毒を叩きつけて、ふと思い至った。
「……んん、即死しないなあ。運が悪いのかな?それとも君たち……効かないの?」
メイプルが目の前にいる霊の肋骨を、ぺちぺちと叩こうとしてすり抜けられながら言う。
メイプルは悪い予感が当たっていそうだと思いながらいつもと少し違う口調で尋ねたが、霊が答えるはずもない。
ただ、もっと根本的なところに問題があることにメイプルは気がついた。
メイプルの座っている玉座と【蠱毒の呪法】というスキルの相性についてである。
考えれば【蠱毒の呪法】の文字からは悪の要素が溢れ出ていた。
「あれ、これ多分発動しないよね?だめだ!発動しないよこれ!……やっぱりアイテムで地道に……もしくは誰かを誘ってみるのも?」
メイプルはアイテムが尽きるまではその場で戦闘を続け、一通りアイテムがなくなったところで霊に見つかる前にぱたぱたと走って開けた場所まで戻っていった。
「シロップ、帰りもお願い!」
メイプルはまた近いうちに来ようと決めて、いったん町へと帰ったのだった。
蠱毒の呪法は悪だろうということを失念するミスをしたので修正しておきました。




