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防御特化と雨エリア。

道中何度かモンスターに遭遇したものの、それらに苦戦するメイプル達ではない。

真っ直ぐに目的地に向かっていき、問題なく辿り着いた。


「んー、相変わらず降ってるねー。メイプル、傘出して」


「うん。分かった」

メイプルはインベントリから雲でできた傘を取り出した。後の二人も同じように傘を取り出す。


「傘のお陰で上からの雨は大丈夫だが、近くの地面に落ちて弾けた雨粒は避けるようにな」


「分かった!じゃあ、行こう」

三人は傘をさした状態で、ゆっくりと雨が降るエリアに足を踏み入れた。


「良かった。弾いてくれてるね」

メイプルは頭上の傘の向こうで雨粒の弾ける音がするのを聞き、少し安心したようにそう言った。

頭上のそれは傘らしくないとはいえ、きっちりと役目を果たしてくれている。


「まあ、あの店にある限り効果は保障されているってことだね……まだ少し移動時間があるし、メイプルにはボス戦でして欲しいことを言っておこうかな」

そうしてサリーはメイプルにボス戦での作戦を伝えていく。


「うんうん、分かった。大丈夫!」

メイプルはその作戦を一通り聞き終えると頷きながら返事をした。


「二人とも、丁度いい。着いたようだぞ」

カスミがそう言って傘をたたむ。

頭上には相変わらず曇り空が広がっているものの雨は降ってはいなかった。

メイプルとサリーも傘をたたんでそれぞれにやるべきことを確認する。


そうして最終確認が済み、三人はボスエリアへと踏み込んだ。


「来たぞ、ボスだ!」

三人の前方、雲の地面から滲み出るようにして湧き出した水の塊が徐々に人型になっていく。

ゆらゆらと揺れるその体の中には、より一層青い塊が浮かんでいた。


つまりはそれがこのボスの核であり、弱点と言うわけである。

ボスの体が完全に形作られたその時、曇り空に変化が現れた。


「また雨が来るよメイプル!」


「うん!予定通りに!」


「頼んだぞ二人共!」

三人がそれぞれに役割を持って動き出す。

それに反応するように、ボスは液体の体を変形させて腕を剣の形にする。

そして、びしゃびしゃと水を散らしながら三人の方へと向かってきた。


またそれだけでなく、空からはゆっくりと直径一メートルはあろうかという大きな水の塊が落ちてきている。


「さて、まずは【大海】!で、【氷結領域】!」

カスミがボスの方へと駆けていく中、サリーはその場でスキルを二つ使った。

サリーが生み出した水はたちまち凍りつき、白く輝く冷気が地面を這っていく。


「よし……【糸使い】【氷柱】」

サリーはさらに二つスキルを使う。

氷の柱が立ち上がり、メイプルの見ている中でサリーは手のひらから糸を射出してその柱を高速で上がっていった。


「おー……すごい……っとと、私も準備しないと【全武装展開】!」

メイプルは兵器を空に向ける。

メイプルの仕事は二つ。

一つはサリーが上空で凍らせている水の塊を破壊すること、もう一つはそれによってボスがメイプルを狙って来るため、それを受けきることである。


メイプルが空へと射撃を開始し、サリーが凍らせておいたもの全てを撃ち抜いていく。

上空で凍らせても落ちてこないため、こうして破壊するわけである。


先程の雨エリア同様、この水にも速度低下のデバフ効果が付いている。

それを封殺しようという訳だった。


「サリーすごいなあ、飛び回ってる……」

メイプルが呟く。

その視界には遙か上空で柱と柱を高速で飛び回り水滴を凍らせるサリーが映っていたのである。


「かっこいい!」


そう目を輝かせるメイプルだったが、綺麗に見えるものに水面下の努力はつきもので、それはサリーも変わらなかった。


「【右手:糸】【右手:収縮】【左手:糸】【左足:糸】【左手:収縮】【右足:糸】【右手:糸】【右手:収縮】【左手:糸】」

サリーは何らかの発声を絶え間無くつづけていた。

スキルとして糸を出し、それをある時は縮め、ある時はタイミングよく消す。

サリーは常に糸をミスのないように管理しながら空を駆けているのである。


サリーは氷柱の上に着地して一息ついた。


「ふぅ、これでとりあえず一段階目。地面に落とすとデバフ塗れになるし……後もキツイし、頑張らないとね」

こうして一定数の雨粒を破壊したことでボスの様子が変わる。

メイプルの頭を剣で殴打していたボスの中にある核が移動し、雲の地面にするりと入っていく。


そして、雲の地面から同じような核を持ったボスの写しが何体も現れた。

雨粒を地面に落とせば落とすだけ、この数は増えていき、核を攻撃し辛くなってしまうのである。


「よし、上手くいったんだな。なら【血刀ちがたな】!」

カスミが私の番だというようにそう言葉にすると、その手に持っていた妖刀が赤い液体となって溶けていく。

と、同時にカスミのHPが代償として半分以上減少する。


しかし効果は十分で、赤い液体でできた刃は滅茶苦茶に空中で伸び、あるいは地面を走り、雲の大地を赤く染めながら全ての核を攻撃していった。


「正解が分からないなら全て貫けばいいだけのこと!」

攻撃が終わると刀は元の形に戻り手元に収まった。

メイプルが本体を引きつけているからこそ安全に発動できるスキルである。


「さて、後三回繰り返すんだったか。なかなかやりごたえのあるボスだ」


「カスミ!ポーション!」


「ああ!」


こうして、この階層最後のボス戦は気の抜けない第二段階へと移行した。


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