防御特化と遺跡内部。
皆さんに大事なお知らせがあります。
この度、書籍化が決定いたしました。
詳しい情報は今後活動報告の方で出していければと思いますのでよろしくお願いいたします。
皆さん、応援本当にありがとうございます!
そして、これからもよろしくお願いいたします!
六人は明かりのない階段を降りていく。
階段は途中で折れまがり、地上からの光も次第に届かなくなってくる。
「ランタン、用意しますね」
ミザリーがランタンを出して暗い階段を照らす。
一つだけでも十分な明るさを確保することができていた。
「何も出てこないな……」
クロムは大盾を構えつつキョロキョロと周りを確認する。辺りには仄暗い闇に覆われた壁があるばかりだ。
「……!何か見えてきてる、っ……ように思うが?」
「ミィさん?」
ミザリーがチラッとミィの方を見る。
ミィは斜め下に視線を逸らしていた。
隣にミザリーがいるという安心感は恐ろしいものである。
「いや、ああ分かっている……もう少し下った先で階段が終わっている。扉があるな、要警戒だ」
そう言うミィの両目はうっすら赤く輝いていた。
ミィは暗視効果のあるスキルで他のメンバーよりはっきりと先が見えているのである。
ミィの言った通り、そこには石でできた扉があった。と言っても、手をかけて横へスライドさせるためのへこみがあるだけのものである。
クロムはそれに手をかけるとぐっと力を入れて扉を開けようとした。
「ん?……駄目だ。開かない」
「【STR】値要求かもしれない。代わろう、俺がやる」
ペインは剣を鞘に収めると力を込めて扉を動かしにかかった。
すると、ゴリゴリと石を引きずる音と共に扉がゆっくりと開いていく。
そして、同時に眩しいほどの光が溢れ出した。
その先にあったのは上下左右、乱雑に張り巡らされた通路や階段。
また、あちこちで輝く魔法陣や、一つだけある意味深な古びたレバーである。
一言で表すならば迷宮といったような、そんな雰囲気を漂わせる景色が六人の目の前には広がっていた。
「あー……どこから行く?」
クロムが隣のペインに聞く。
「選択肢が多すぎる。流石にこれはな」
ペインがチラッと左を見るとそれだけで魔法陣が五、六個は確認できた。
面倒この上ないと言える。
「どうする……僕はどこから行ってもいいよ?」
マルクスが【暴虐】メイプルに会った時の表情を半分ほど薄めた表情で言う。
つまりもうかなり帰りたくなっているのだが、そうしないのは最もいいと言えるほどのメンバーが集まっているからだろう。
「適当に侵入すればいい。モンスター程度なら問題はない。それに、考えていても答えなどない」
「ええ、そうですね。ミィさん。私も、とりあえず魔法陣かもしくはレバーを触ってみることを提案しますね」
「僕は道だけ記録しておくよ。迷って、どう進んだか分からなくならないように」
そうして全員の方針は固まった。
近くのレバーを切り替えてみるのである。
「おーけー、やるぞ?」
クロムがレバーに近づき手をかけて、五人の方を振り返る。全員が小さく頷いたことを確認するとクロムはレバーを逆方向に倒した。
その瞬間、張り巡らされた階段はゴトゴトと組み変わりその向きを変え、壁が開いて新たな通路ができ、先程までの通路が消えていく。
魔法陣は薄れて消え、別の場所で再び輝き出す。
レバーを一度倒しただけで、迷宮はその様相を完全に変えてしまった。
「ええ……」
マルクスが【暴虐】メイプルと会った時の顔でこぼす。
レバーを倒したクロムも渋い顔をしていた。
「どうするペイン。次に試す所を決めてくれても構わないが?」
「正直面倒極まりない。ははは、クロムどうする?」
前衛二人がどうするどうすると言っていたところでカナデが話し始めた。
「どの階段も通路も魔法陣も入れ替わったように見えるけど……一つだけさっきのままの通路があるしそこに行ってみるのはどう?」
カナデは先程の光景をそのまま全て覚えていた。
五人が見つけられずとも、カナデの目には違和感としてはっきりとその通路が映っていた。
その提案に反対する理由もこれまたなく。
全員がカナデに指示された方向へと向かう。
カナデの言う通路を通った先にはまた一つ似たような作りの部屋とレバーがあった。
「これの繰り返しとなると……ほとんどはトラップなのかもしれませんね」
「カナデ、頼む」
「もちろん!」
こうして六人は進む。
凶悪なモンスターや即死クラスの罠をするりするりとすり抜けて。
遺跡内の罠全ては一人のプレイヤー、カナデによって崩れ去っていった。
遺跡を守る叡智はさらなる叡智に敗れたのである。
六人は地下へ地下へとゆっくりと下っていき、そして今までとは明らかに雰囲気の異なる部屋へと辿り着いた。
部屋の最奥、金と宝石で飾られた大きな棺があるだけで他は何もないのである。他はサラッとした砂が乾いた石の床を覆っているだけで、地面そのものに異常は見られない。
地面に横たえられたその棺は五メートルほどあり、中にまともなものが入っていると思った者は六人の中には一人もいなかった。
そして、その予感は的中する。
六人の存在を感じ取ったのか、ゆっくりと蓋がずれ音を立てて外れた。
中から出てきたのは未だ輝きの残る王冠を頭に乗せ、金でできた杖を携えた骨の王だった。
目の部分、暗い穴の向こうからその穴を拡張するように黒い炎がなびいている。
「来るぞ、構えろ!」
そのペインの声と骨の王の行動は同時で、戦闘が始まった。




