防御特化と苔むした遺跡。
ペイン達を取り囲むゴーレムの中で、比較的外周にいたゴーレムが爆炎の中ボロボロと光に変わっていく。
ペインとクロムは何事かとそのゴーレムの方を向く。そこには炎を操り加速しつつゴーレムを相手取る一人の少女、ミィがいた。
ミィの周りにもゴーレムが湧き出ており、ペイン達のゴーレム発生と合わさって、今の量になってしまっていたのである。
ミィの方も戦闘音から、ペイン達の存在に気づいた。カナデやクロム、ペインの装備は遠目に見ても目立つ上に残り二人には近しいため、ミィは集団の構成をさっと把握することができた。
「二人がいるのか、なら」
ミィは大きな火柱でゴーレムを足元から燃やしていく。ミィの周りのゴーレムとペイン達の周りのゴーレムがそれぞれ巻き込まれていく。
流石に倒すまではいかないものの、それはゴーレムをよろめかせた。
ペイン達はその隙をついてゴーレムの足下を抜けてミィと合流した。
ミザリーとマルクスが提案したミィとの合流に乗ったのである。
ミィはマルクスとミザリーを確認するとミザリーに呼びかけた。
「ミザリー!」
「はい、分かっています!」
細かい指示など必要ないと、ミザリーは即座に行動する。
持てあましているMPをミィに譲渡したのだ。
「いくぞ……!」
ゴーレムの足音とぶつかり合う音でスキル名はかき消されてしまったものの、起こったことは強力なスキルを連想させた。
一瞬にしてミィ達全員の両側にできあがったのは揺らめく炎の壁、内側は一本の道となりゴーレムを隔離して真っ直ぐ続いている。
「【隠密の花】」
マルクスがその言葉を小さく口にすると、周りにいる全員の体に細いツタが一本巻きついてその頂点で白い花を咲かせた。
モンスターに視認されていない時に使うことができるそのスキルは、それなりに重い消費と引き換えに対象を三十秒間モンスターから見つからなくしてくれる。
効果が切れると花が枯れて落ちていくという風になるため持続時間は分かりやすい。
「ゴーレムはプレイヤーを見失って少しすると消滅するぞ」
ミィはそう言うとできあがった炎の道を歩いていこうとする。
「私達も行きましょう。炎の壁もそこまで長くはもちませんから」
ミザリーはそう言うとミィの近くまで行き耳元でこそっと話しかけた。
「私達と一緒に行きませんか」
「お願い……一人じゃ本当大変で……」
メイプルにバレてから少しして、気が緩んでいたミィは即座にボロを出してミザリーにもキャラ作りが露呈したのである。
ただ、ミザリーと楽に話せるため、ギルド内で過ごしやすくなりもした。
ミィの言葉を聞くとミザリーはペイン達の方を振り返って話す。
「ミィさんもついてきてくれるそうで、戦力増加ですよ!」
ミィは堅苦しいキャラを作っているため、それを理解して橋渡しをするミザリーは重要な役割を持っているのだ。
「僕の魔法攻撃は不安定だし、助かるな」
断る理由もなくすんなりと受け入れられたミィが、こっそりほっとしていたのに気づいたのはミザリーだけだった。
「ならもう行こう、時間がないんだろう?」
クロムがとりあえず話を切り上げて歩き出す。
そうして隠密の効果が切れる前にゴーレムの包囲網を抜け出すことができた。
ジャングルが燃え上がらないようにできていたことはミィにとって救いだっただろう。
一人も欠けることなく全員で進んでいく。
「見えてきたな」
守護者であるゴーレム達を突破したのだから、その先にあるのは当然守られている何かである。
ペインが指差す先には苔むした岩でできた遺跡があった。
その遺跡の奥、一際大きい建物が強い存在感を放っている。
遺跡の周りにはモンスターはおらず、順調に奥の大きな建物まで行くことができた。
六人の前には地下へと続く長い長い階段がある。
下りない理由はなく、全員が地下へと足を踏み入れた。
未だ突き止められていない、守られている何かを手に入れるために。