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防御特化とジャングル。

女王蜂が蜂の巣とメイプル達の間まで降りてきたその時、突然、女王蜂の真上に位置していた蜂の巣が次々に崩れて落下してきた。

女王蜂はそれを軽々と躱し、蜂の巣の残骸はメイプル達の所まで真っ直ぐに落ちていく。


「【カバームーブ】【カバー】!」

メイプルは数少ない体に染み付いた動きでもってペインを庇う。

落ちてきた蜂の巣はぐしゃりと潰れると中に溜まっていた蜂蜜を辺りにぶちまけた。


「んん……?う、動けない」

ねばねばとした蜂蜜はメイプルの動きを完全に止めた。実のところメイプルにある程度【STR】があれば脱出することもできたのだが、元がゼロでは【暴虐】状態でも流石に値が足りなかったのである。


女王蜂はそんなメイプルに張り付くと、噛みついたり針で攻撃したりと頑張り始めた。

HPもまだ満タンなため行動もそこまで複雑なものがなく、他の攻撃と言えば風属性の魔法を使うくらいにとどまった。

しかし、当然それらがメイプルに与えるダメージなどなく、健気で無意味な努力に過ぎなかった。


「俺がやるか」


ペインはメイプルの巨体の下から出ると蜂蜜の上を何の問題もなく歩いていく。

そうして少し距離をとり、剣を抜いた。


「【跳躍】!」

ペインはメイプルの背中に飛び乗るとそのまま女王蜂の真後ろまで近づいていく。

流石にそこまで近づけば女王蜂もペインに標的を移しその毒針を突き出してくる。

しかし、ペインはそれをいとも容易く盾で弾くと体勢の崩れた女王蜂に向かって斬りかかった。


「【断罪ノ聖剣】」

光り輝く剣が横薙ぎに振るわれ、蜂の胴体を切り裂いて抜けていく。

ペインの攻撃は、過去のイベントでメイプルに放ったそれに劣らないくらいの威力だった。


蜂がそれを受け切れるなどということも起こらず、そのまま胴は真っ二つに引き裂かれ、たった一撃で光の粒となって消えてしまった。

それと同時、メイプルを捕らえていた蜂蜜も同じように光となって消えていく


女王蜂が消えた後、地面には蜂蜜が入っている瓶がいくつかと、冠が二つ残っていた。

ペインは二つの冠、そして瓶の効果を確認する。


「蜂蜜瓶は……料理スキル持ちにでも売るか。冠は、MPの最大値を割合で上昇させると」

二人はドロップアイテムをきっちり分けると移動を始めた。

メイプルは冠を今すぐ役立てることはできないと分かっていたものの、その綺麗な見た目だけで十分に嬉しかった。


「あっちの方へ行ってみませんか?」

そう言ってメイプルは手足のうちの一本を動かして行きたい方向を指し示す。


「ああ、そうだな。このジャングルは広いからな……何かは見つかると思うが」


「では、行きますね」

メイプルはペインを乗せて木々の隙間をぬるぬると進んでいった。




メイプルがいて、ペインがいて。

この二人だけということはもちろんない。

具体的には、サリーもまたジャングルにいたのである。それはメイプルとは遠く離れた場所だったが、サリーにそれを知る方法はない。


そもそも合流しようにも目印一つないこのフィールドでは困難なため、この際気にすることではないと言える。


そんなサリーはジャングルを身軽な様子で走り回っていた。


「なーにかないかなっと」

倒木を飛び越えてひょいひょいと進んでいくサリーだったが、視界の端に何か見慣れないものがあったような気がして立ち止まった。


「んー?あれは……」

サリーは目を細めて遠くを見つめる。

鮮やかな緑の先に僅かに白い何かが見えるが、流石に距離があり過ぎるため、サリーにはそれが何なのかよくは分からない。


「よし、行くか」

サリーはダガーを抜くと茂みをガサガサと揺らして道なき道を進んでいく。

そうして近づくと見えたものが何なのかはっきりとしてきた。


「うげ……蜘蛛の巣。糸を使うタイプの蜘蛛と戦うのは苦手なんだけどなあ」

サリーは顔をしかめるが、それでも歩みは止めない。それほどサリーはスキルに飢えていた。


「やばそうなら逃げるとして……さあどんな感じ?」

サリーは蜘蛛の巣のそばまで近づいてあたりを観察する。

何本かの木々を繋ぐように糸が伸びており、地面にも白い糸が続いているが、蜘蛛の姿はどこにも見えない。

また、白い繭が地面にかたまって置かれているのをサリーは見てとった。


「罠っぽい……けど、急げば確認くらいはできるかな?」

サリーは行動を決めると、よし、と一つ呟いた。


「【超加速】!」

サリーは木の陰から飛び出すと地面に置かれた繭に触れた。


「アイテム、スキル……じゃない!くっ……」

案の定それは罠であり、サリーもその可能性を考慮してはいた。

サリーにとって想定の範囲外だったのは、地面から広がった糸が【超加速】状態でも回避しきれないほどの広範囲をカバーしていたことである。

結果、サリーは右足を絡め取られた状態で逆さに宙吊りにされた。


「前にもどっかでやらかしたっけ……!だから嫌いなんだよね……くそっ」

逆さになったサリーの視界には大きな蜘蛛が映っていた。







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