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防御特化とペイン。

遅れました申し訳ないです。

メイプルとペインは深いジャングルの探索を続けていた。


「メイプル……」


「何か言いましたか?」


「いや……何でもない」

ペインは空を見上げた。

深緑の葉が空を隠しているが、その葉はペインが動かずとも流れていく。

つまるところペインは化物状態のメイプルの上に乗って移動しているというわけである。

メイプルは動きにくそうに木々の合間を縫って進んでいる。


「メイプル、左だ。右は何もなかった」


「分かりました」

他のプレイヤーが見れば即攻撃に移りそうな動きでメイプルが歩く。

場合によっては木の幹を掴み巻きつきながら木々を渡っていくようなこともあった。

ペインはメイプルにしがみつくことくらいは難なくできるため、メイプルが多少変な動きをしたところで問題はない。


二人の探索は特に問題なく進んでいた。


「モンスターです!倒しますっ!」

メイプルの言う通り前方からはモンスターがやってきていた。

近づいてきたのは、トレントというような木の形をとったモンスターである。


ペインはそのモンスターに見覚えがあった。

それはペインが僅かながらダメージを受けたモンスターだったのである。


「メイプル、足元から貫通する枝で攻撃してくる……」


「え?何ですか?」

ペインが話し終える前にメイプルの前方は火の海になった。

ゲーム内なため周りの木々に燃え移るようなことはなかったが、木の形をしているモンスターが耐えられるような生易しいものでは決してない。

トレントは消し炭となり地面にはアイテムがドロップした。


「いや……そうだな。アイテムを拾っておくといい」


「あー、そうですね」

メイプルの化物の手がアイテムを握り込み、それは消えていった。

ペインは静かに目を細めて、そして空を見上げる。細めた目で見た空は相変わらず木の葉で隠れて見えなかった。




途中何度かモンスターの襲撃を受けはしたもののそれらは全てメイプルがついでで轢き殺すなり、撥ね飛ばすなりしていった。

それだけ戦闘を任せられるのであればペインは別のところに力を割くことができるというものである。


「メイプル、止まれ。何か聞こえる」

ペインは辺りを警戒する余裕があったため、簡単に気づくことができた。

ペインの耳にかすかに聞こえるそれは羽音のようだった。


「行ってみます?」


「ああ」

メイプルに隠密というものはないため、気持ちだけこそこそと羽音の大きくなる方へ向かっていく。そうして二人の目に映ったのはジャングルの木の最上部にできた大きな蜂の巣。

またその周りを飛んでいる黒い帯のようなものである。

羽音はその帯から聞こえているため、二人には空中をうねるそれが何でできているのか、察することができた。


「なるほど。さてどうするか」


「私が引きつけて守りましょうか?」


「そんな簡単に……いや、そうか……」

ペインは少し考え、そして考えることをやめた。

メイプルは今回はHP制限があること、また相方がペインであることを考慮して【身捧ぐ慈愛】は使わないでおくことにした。


「では、行ってきます!」

メイプルが蜂の巣の真下、広くなった場所へと飛び出すと、蜂の巣の近くに四メートルはあろうかという大きな蜂が姿を現した。

また、その頭部には綺麗な王冠が乗っている。

それはまさに、女王蜂といった雰囲気である。


「昔戦った蜂より強そう?」

メイプルがそんなことを言っていると、女王蜂が何か音を発した。

すると黒い帯、蜂の塊は一斉に一本の矢のようになってメイプルに突撃を開始したのである。


高速で飛ぶ蜂達はメイプルに突撃し、例外なくその全てが弾かれていった。


「【挑発】!かかってこーい!」

女王蜂は次々に指令を繰り出し、一点突撃させたり、取り囲んだり、横から範囲を攻撃したりさせたもののメイプルに当たった蜂は弾かれて、フラフラと次の指令を待つだけになってしまう。


「……【ホーリーレイン】」

ペインが剣を抜き放ち木陰で呟くと剣が白い光を帯びる。

ペインはその剣を振り、纏っていた光を放り投げるように飛ばした。

それは五メートル程、つまりメイプルのいる広場の上空で止まると光の雨を降らせた。

それはメイプルに夢中の蜂を貫いて消し飛ばしていく。


ペインはメイプルが蜂に攻撃を躱されつつ戯れているところに、持っている範囲攻撃を順に落としていくだけのマシーンと化した。


「俺は今……何をしているんだったか……」

メイプルが蜂の針を化物の体で跳ね返しているのをチラッと見ながらペインは呟いた。

日常では見ない光景がそこにはあるのだ。


そうして、二十分ほどした頃ほとんどすべての蜂を落としきり、ペインはメイプルのいる広場へと出ていった。


「無傷か……当然か」


「ペインさん、女王蜂が降りてきてます!」

ペインとメイプルが上を見上げる。

メイプルの言うとおり、まさに女王蜂が少しずつ降下してきているところだった。


「一撃で切り捨ててやる」

ペインは雑念を振り払って剣を構えた。


「よーし、やるぞー」

メイプルは手足を動かし首を上へと向けた。


自ら死地に降りる女王蜂はとても勇敢、もしくは無謀だと言えることは間違いなかった。



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