防御特化と少数精鋭。
短いので、明日もしくは明後日にもう一話あげます。
文章を修正。
もとは静かだったジャングルのあちこちで戦闘音が響いていた。
ジャングルにいるプレイヤーも次第に増えてきており、そのうちの一人がペインだった。
「はっ!」
ペインは盾で攻撃をいなし、剣でモンスターを切り裂いていく。
ペインの周りを取り囲んでいたモンスター全てを倒しきるのにそれほど時間はかからなかった。
「よし。さて何かあるか」
ペインはドロップアイテムを確かめてみるもののこれといってよさそうなものはなかった。
ペインは既に、苔むした岩でできた遺跡の跡をいくつか見つけていたものの、そこでも特に何かを手に入れることはできていなかった。
「慎重にいかないとな」
ペインのHPは既に三割ほど削れている。
まともに直撃を受けてはいないが、数の暴力により少しずつHPを削られてしまっていたのである。
ここでは回復ができないためダメージはできる限り避けなければならないのだ。
ペインは何かしら新たなものを探し求め、再び歩き始めた。
ペインが歩いているとその耳にかすかな戦闘音が届いた。ジャングルにはそれなりに長くいるペインだが、戦闘音を聞いたことは数回しかない。
情報をフルに使った上で探索は難航していた。
「何かあるかだけ確認しておこうか」
ペインは戦闘音の大きいところまできたものの、そこには深くさらに背の高い茂みが広がっており、中の様子を確認することはできない。
しかし、ペインには中に何か普通でないものがあるという確かな予感があったのである。
ペインが今までに見たことがない深い茂みを怪しいと考えたことは、不思議なことではなかった。
「……中を確認してみるか」
ペインが茂みをかき分けてその中へと入ろうとした時、ちょうど戦闘音がやんだ。
それと入れ替わるように茂みを揺らす、がさがさという音が、自分の方向へ向かってきていることにペインは気づいた。
ペインは盾を構えて剣を抜き、戦闘態勢をとると、茂みから離れて近づいてくる何かを迎え撃つ準備をした。音は大きくなり、そして何かの先端が茂みから飛び出した。
「来たか!」
そうしてペインの目の前に顔を出したのは、見覚えのある。いや、忘れることのできない化物の顔だった。
「あぁーつかれた……あれ、確か……ペインさん?」
茂みから突き出た瞳のない化物の頭部。
そこから発された声にペインは聞き覚えがあった。
それは紛れもなくメイプルの声だったのである。
出会った二人はそのまま少し歩いていき、少し開けた場所で地面に腰を下ろした。
メイプルはまだ化物の姿のままである。
回復に制限がある以上貴重な外皮を捨てるわけにもいかないのだ。
ペインは木の根元に座り込み、メイプルはその木を中心にして長い体を横たえた。
「なあ、そのままでいるのか」
「……?はい、まあ」
「そうか……」
どこか胸の奥の方がざわっとするペインだったが、そのままでいるというのであればそれは干渉するわけにもいかず仕方ないことだった。
二人が今一緒にいる理由は簡単で、二人はともに探索をすることにしたのである。
この広いフィールド、誰かと出会うことの難しい場所で偶然出会った強者二人、となればこのチャンスをメイプルはともかくペインが見逃すはずもなかった。
ペインはメイプルに話を持ちかけ、メイプルがそれを断ることもなかった。
メイプルはペインの提案について特に深く考えることをしなかった。
思ったことといえば、先ほどのように囲まれた時に、誰かがいた方が早く抜けられるかもしれないということである。
そうしてここに少数精鋭のチームが生まれたのである。