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防御特化とエリア。

サリーが新たな見所を探しているころ、クロムとカスミはサリーとは真逆の方向を探索していた。


クロムが攻撃を受け止めカスミが斬り倒す。

クロムが時折ダメージを受けるものの持ち前の回復力ですぐに持ち直す。

そうして何度目かの戦闘を無事にやりきったところでクロムは武器をしまいつつ呟いた。


「何というか、落ち着くな」


「ん?ああ……」

この二人での戦闘というのは【楓の木】内ではもっとも静かなものだった。

イズがいれば爆音が鳴り止まない戦場が出来上がる。

カナデがいれば魔法による閃光と轟音が次々に巻き起こる。

そして残りの四人は平常心を削りかねない。


平穏が今ここにはあった。


「まあ流石に私達だけではダンジョンボスの討伐は厳しいだろうから、ダンジョンは中の様子をある程度確認するくらいか?」


「そうだろうな、強そうならまた今度うちの誰かを呼べばいい」

イズは特殊だとして、残りは誰を呼んだとしても強力である。


「サリーは今日辺り探索に出るらしいから逆側の生の情報も集まるかな?」


「まあ何とかなるだろ」

そうして二人が話しながら歩いていると雷の音が聞こえ始め、前方の空が暗い雲に覆われているのが見て取れるようになってくる。

それぞれに警戒して武器を抜き、ゆっくりと辺りを見渡しつつ進む。

二人がさらに近づいていくとそのエリアの光景は細部まで難なく確認することができた。


その場所では青空は分厚い雲に遮られており、青白い電気の流れが断続的に地面と空を繋いでいた。

あちらこちらで落ちる雷。

それに規則性があるのかは分からないうえ、当たった際の危険性も今の二人は知らない。


「ほー……ここはメイプルだな」

クロムはすっと結論を出した。


「次いこうか。ここはこれ以上は無理だ」

くるっと方向転換して二人は文字通り雷雨の降るエリアを後にした。


雷地帯を避け、雲の坂を上って下って起伏をいくつも越えていったその先に見えてきたのは、先程の雷雲よりも少し色の薄い雲が広がる場所だった。

雲には手を伸ばせば届きそうなほどに垂れ下がっている場所もあり、地面の起伏と相まって見通しは酷く悪い。


その雲からはソフトボールほどの大きさの水滴がゆっくりと落ちてきていた。

無重力空間かのごとくふわりふわりと、しかし確実に地面に向かって落下してきているそれは、地面にぶつかるとゆっくりと弾けて八つの水滴に分かれて均等に飛び散り、地面までの短い旅を終えて吸い込まれて消えていった。


「避けた方がいいよな?」


「おそらく」

避けられないということもないが、落ちてくる量がなかなか多いため、当たった場合のデメリットを確認することとなった。


「俺が行く。ダメージ系なら生き残れる可能性も高いしな」

クロムは盾を構えながら遅い雨が降るエリアに踏み入りその雨粒一つを受けた。


次の瞬間。クロムの真後ろで水の砲台がゴポゴポと音を立てながら組み上がり始めた。


「クロム後ろだ!」


「ん?動け……は?」

クロムの体は動いているもののその動きは降り注ぐ雨粒のように遅い。

砲台が組み上がるのも遅いが真後ろでは間に合うかどうか怪しいくらいだった。


そうしているうちに隣の地面で跳ねた八つの水滴のうちの一つがクロムの足に当たる。

それと同時、クロムの斜め後ろで新たな砲台が音を立てて組み上がり始めた。

何とか振り返りつつあったクロムは、もしも自由に動けるならば額に手を当てて空を仰いでいたかもしれない。


「おいおいマジか……」

砲台から水の塊が打ち出されクロムの肩に命中し、砲台が崩れて消えていく。

その威力はこの層のモンスターの標準より二回りは低いくらいであり、ダメージとしてはたいしたものではなかった。


「お?動けるぞ!」

クロムは体の自由が戻ってきていることに気づくと体を捻って転がって何とか雨のエリアを抜け出した。

クロムがエリアを抜け出したことで、組み上がりつつあった二つ目の砲台はバシャっと音を立てて消滅した。


「あの砲弾に当たれば元の速度に戻るのか、んで雫に当たる度に砲台が出来上がると」


「そんなに動けないのか?」


「ああ、あれは無理だな。ゴリ押せねえわ、すぐ次に当たる」


「とりあえずここも保留と。一度町に戻ってみようか?雷にしろこの雨にしろ打開できるような何かがあるかもしれないしな」

カスミの提案にクロムも乗って、二人は一旦探索を切り上げて帰路につくことにした。




モンスターを倒しながら順調に歩みを進める二人だったが、突然背後から日陰に覆われて薄暗くなったことで立ち止まり空を見上げた。


「ただの雲……じゃないな」


「私もそう思う」

空を覆う雲はフィールドを突っ切って通り過ぎていく。

それからは今回の探索で二つ見つけたエリアと同じ雰囲気を発していた。

特徴的な雲のオブジェクト。

それがこの階層での何かしらの目印になっていることに二人は思い至っていた。


「あれは、どうやって行くかだな」


「シロップはどうだろう?」


「それは対策されてそうだけどな、アレは裏ルートだしな」

とりあえず今は結論の出しようがないことだったため、二人は思考を切り上げてまた町へと歩き出した。



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