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防御特化と封印。

メイプルはその後しばらく街をうろうろと歩き回り、さらに何か新しいものを手に入れることもなくギルドホームに戻った。

入り口の扉を開け中に入ったメイプルに反応したのはユイとマイである。


「あっ!メイプルさん!」

ユイがメイプルの方向に駆け寄ってくる。


「なに?なにかあった?」


「ちょっとクエストで私達では勝てないモンスターがいて……手伝ってくれませんか?」


「お願いします!」

そう言って二人揃ってペコッと頭を下げる。


「うん、いいよ!ちょうどやることがなかったんだ」


「ありがとうございます!クロムさんとカナデさんは一緒に出掛けてしまって、どうにもならなくて……」

現在ギルドホームにいるのは二人を除けばイズだけだった。

イズはモンスターを倒しにいくためには心細い助っ人と言えるため仕方がない。


「じゃあ早速行こう、案内して?」


「「はい!」」


シロップの背に乗ってフィールドを進むことおよそ十分。

メイプル達は目的地まで辿り着いた。


「えっとですね、ここに出てくるモンスターなんですけど、物理攻撃が効かないみたいで……お願いします!」


「んー……毒竜ヒドラでいけるよね?」


「多分大丈夫だと思います」

モンスターの情報を聞いたメイプルはシロップを地面に降ろすと【身捧ぐ慈愛】を発動させ、ポーションでHPを回復すると戦闘態勢に入った。


「モンスターは……あれだね!」

メイプルの見ている先にはあちこち破れているローブと、錆びてボロボロになっているロングソードがふわふわと浮かんでいた。

見るからに幽霊といったその姿は確かに物理攻撃が効かなさそうな見た目である。


「よーし、ヒド……あれ?消えちゃった」


「あのモンスター消えるんですね……ごめんなさい、知らなくて」

ユイとマイはあっさりと二敗したところで諦めて助けを呼ぼうと考えたのでモンスターの行動を把握しきれていなかった。

メイプルもユイとマイも積極的に情報を仕入れるタイプではないため、このモンスターの情報など物理攻撃が効かないこと以外持っていない。


「近い!?」

透明になって急接近したモンスターの剣が振り下ろされ反応の遅れたメイプルに当たった。

その時、パリンと音がして【身捧ぐ慈愛】によって輝いていた地面が元に戻る。


「えっ?ちょっ、と【カバー】!」

ユイに斬りかかったモンスターの攻撃を最近はほとんど使っていなかった【カバー】でなんとか防ぐ。

モンスターは距離を取り再び姿を消して見えなくなってしまった。


「身捧ぐ慈愛!は、発動しない?……そっか封印!」

メイプルはサリーと町を探索した際に封印に対抗出来るお札を買ってはいたものの守る対象としたスキルは防御力を上げている三つのスキルである。

【身捧ぐ慈愛】にまでは手が回らない。


「えっと……そうだ【発毛】!」

メイプルが毛玉状態になる。それにピンと来たのかユイとマイは武器を手早く外し潜り込んだ。

メイプルは前からポンと顔を出すとユイとマイに向かって話しかける。


「じゃあ、お願いするね?」


「「はい!」」

二人は毛玉の中でゴソゴソと動いて横向きになったメイプルの真下に着くと丸まっていた体を伸ばしてメイプルをぐっと持ち上げた。

毛玉からずぼっと顔までが抜け出た状態である。


「マイ、左に出たよ!」


「うん!」

ユイとマイがメイプルの頭の出ている場所を左に向ける。

モンスターは再度ユイに斬りかかった。


「はいっ!」

ユイとマイが毛玉を下に降ろしてその中に潜り込む。

これによりユイを狙っていたモンスターはメイプルの頭上の羊毛を斬りつけるだけで終わってしまった。


「【毒竜ヒドラ】!」

メイプルが毛玉から突き出した手、握られた短刀から毒の奔流がモンスターに向かう。

それは至近距離のモンスターをきっちりと捉え、そのHPバーを削りきった。

即死効果が発動せずとも倒せる程度の相手だった。


「ふぅ……倒せたよ!えっと、何体倒せばいいの?」


「十体です、お願いします」


「了解!じゃあ、このまま行こうか」

メイプルが方針を示し、そのままユイとマイはメイプルを持ち上げると上を見てしっかり支えられていることを確認しつつそのまま歩き出した。





そして目の前の毒の沼に足を突っ込んで死亡した。




「うわっ!?えっ、どうしたの!?」

メイプルはビシャッと音を立てて地面に落ちた。

何があったのかユイとマイに声をかけるものの返事はない。


「ん?あ……」

メイプルの眼下に広がる紫の海。

少し遅れて原因を理解したメイプルは慌てて【暴虐】を発動させて二人を迎えに戻っていった。






その頃ユイとマイが頼るつもりだったクロムとカナデは、マルクスとドラグと共にモンスターを狩りに出ていたのである。


「いや、マジでいい盾職だぜ」

ドラグをメイン火力とし、クロムとカナデとマルクスでサポートするという形で狩りは進んでいた。


「そうか?盾ならメイプルの方が……」


「あれは盾じゃない……盾じゃない」

マルクスがぼそっと呟く。

マルクスの中では大盾のナンバーワンはクロムだった。


「メイプルは僕達の中でもそんな位置付け……なのかな?」


「どうだろうな?ただまあメイプルもいつもイベントの時みたいなヤバイ感じじゃないからな。盾使いなのに隙は多いしなあ、まあ守る必要がないからだが」

メイプルは剣も槍も矢も魔法もその体で弾き返す。

誰よりも防御力を求めた結果誰よりも防御行動を必要としなくなったのだ。


「ペインはメイプルを倒すつもりみたいだが、俺は諦めたな。相性は悪くないと思うんだがな」


「そろそろ移動しない……?モンスターいなくなったし……」

マルクスの言う通りモンスターはあらかた狩り尽くされてしまったため、四人は移動を始めた。



そして次のポイントに向かっていたその時。

物凄い勢いで視界の端を化物メイプルが走っていった。


「いつもあんな感じじゃねえか……」


「そうだったかもな……悪かった」

しばらく時間が止まったように四人は立ち尽くした。


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