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防御特化と決闘。

短め。

時間が経ち天の雫に続き、残り二つのキーアイテムもプレイヤーたちの探索により入手場所が明らかになった。

情報も出回っており、調べれば三つのキーアイテムや敵のことを知ることは容易である。

ソロでなければいけないという訳でもないが、それでも難易度は高く現状ではクリア出来るプレイヤーの方が少数派だった。


「んー……今はいいか、そのうち皆で行けたら、うん」

サリーはまとめておいた情報から一人では骨が折れると判断したのである。

周りには頼もしい仲間がいるのだから頼らない手はないのだ。


「さて、通行許可証のレベル上げかな」

サリーがギルドを出ようとした所でちょうどギルドの扉が開いた。

そこにいたのはサリーにとって最近よく見る人物。


「あ、ちょうど出かける所だったー?」

フレデリカである。

ちょくちょくやってきてはサリーに決闘を申し込んで、負けて帰っていくまでがワンセットである。

今のところサリーの全勝ではあるが、フレデリカも少しずつサリーに攻撃を当てることが出来そうになってきていた。


「まあね、通行許可証のレベル上げの為に雑魚狩りに」


「そっかー……待っててもあれだしー私も手伝うね。ささっと終わらせて、一勝負!」


「いいよ、ならささっと狩りにいこう」


「私も色々戦術を考えて来たんだよー」


「それいつも言ってない?」


「いつも新戦術が一回で打ち破られるから仕方ないよねー?一撃でいいんだけどなー」

フレデリカはサリーが一発で沈む耐久力だということを知っている。

そのためサリーも油断は出来ない。

サリーは今回はどうやって勝とうかと思考を巡らせつつフレデリカと共にフィールドへと出ていった。



「やっぱり魔法もいいなぁ」

サリーが一体一体切り刻んでいる内に、フレデリカは得意の弾幕で次々にダメージを与えていく。

そういうところを見るとほとんど魔法に手を伸ばさないままでいるのが勿体無いようにも思える。

今のサリーは壁を作って攻撃をずらすことくらいにしか魔法を使っていない。

MPもそこそこに【AGI】と【STR】メインへ舵を切ったのだ。


メイプルと比べレベル上げに力を入れていたサリーはメイプルとのレベル差を詰めてきていた。

今のサリーのレベルは34である。


「っと!これでラスト!」

サリーの攻撃がモンスターに吸い込まれていきそのHPをきっちりとゼロにした。

それと同時にサリーのレベルが1上がって

35になる。


「ん……んー、ふふっ」


「何か面白いことでもあったー?」


「ん、まあ、ね?用事も終わったし一戦やる?」

サリーが話題を変えるとフレデリカはすぐに乗ってきた。

二人は何度も体験した転移の感覚を味わい、外から遮断された空間が目の前に広がる。


開始までの時間を設定し、二人の間に戦闘前特有の緊張感が漂った。



決闘開始と同時にサリーが真っ直ぐにフレデリカへと向かう。


「っと?」

サリーは足を止められた。

フレデリカがいつものように弾幕攻撃を仕掛けてくるのならば対処は容易だったが、フレデリカの今回の初手はいくつもの壁を作って足を止めることだった。

水や砂の壁がサリーを囲むように立ち上がる。


「【跳躍】!」

別に何が来たという訳でもなかったが、サリーは左斜め前へと跳躍した。

嫌な予感、何となく危険な感じ。

それに身を任せたのだ。

素早い動きで壁の横をすり抜けた。


そうして、フレデリカの風の刃で壁を壊して巻き込んでの面攻撃が不発に終わる。

防御力、HP共に最低値のサリーならばこんな滅茶苦茶な攻撃でも当たれば倒すことができただろう。


「また、予知だよー!」


「そんなものではない、よっ!」

サリーは真っ直ぐにフレデリカへと駆ける。フレデリカも次のプランを即座に立てる。


「「あっ」」

それは唐突に起こった。

二人の声が重なったのは偶然だった。

フレデリカが再度壁を作った時にちょうどサリーの爪先の位置から壁が出てくる形になり、サリーがそれに引っかかったのである。

ルートを変えたもののサリーはバランスを崩している。


「【多重炎弾】!」

このチャンスを逃すまいと使い慣れた魔法が思考するより先に飛び出す。

サリーはそれを転がるようにして躱していた。

そこからの光景はフレデリカにとって酷くゆっくりと見えた。

最後の炎弾がサリーの肩に吸い込まれるように近づいて、そして弾けた。

実体があるということは【蜃気楼】でもない。

そこまでを一瞬で思考したフレデリカは遂に勝ったことに思い至った。


「やったああっ!」

ぐっとガッツポーズをして体を丸めて喜びに震える。




ようやくの勝利と、フレデリカは注意力が落ちていた。

故に、次に気付いた時にはサリーのダガーが深々と体に突き刺さっていたのである。


「あ、れ?」


「残念ながらぬか喜び」

防御体制を取るよりも先にフレデリカのHPはゼロになった。

元のフィールドに戻る前、フレデリカが最後に見たものは僅か一ミリさえも減っていないサリーのHPバーだった。




「うー?うぅー!?どうして?」


「貴重な手の内は教えない、敵同士だしね」


「そーだよね、うん。次こそ勝つから覚えてろー」

フレデリカはサリーにバイバイと手を振って離れていった。


「……危ない危ない、やっぱ気を抜いたら駄目だね」

そう言ってサリーは自分のステータス、その中の一点を見る。


【空蝉】

一日に一度致死ダメージを無効化する。

一分間【AGI】50%上昇。



レベル35までノーダメージであることを条件に得たスキル。



これがあったこともあり、サリーはいつもよりも集中力が落ちていた。

今までは絶対に被弾出来ないという状況にあり、それがサリーの集中力を高めていたとも言える。


「また回避の練習しておこう、うん。初ダメージは……【その時】まで取っておきたいから、ね」

そう一人呟くとサリーは早速雑魚モンスターに攻撃してもらいに向かった。

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― 新着の感想 ―
エピソード37「防御特化と下流探索」でサリーがダメージを受けたところを読み直しましたが、もしかして、あの時ダメージを受けたのはニセモノのサリーだった(既に入れ替わっていた)のでしょうか?そうだとすれば…
【空蝉】一日に一度致死ダメージを無効化する。一分間【AGI】50%上昇。 レベル35までノーダメージであることを条件に得たスキル。。 サリーは エピソード37「防御特化と下流探索」で 「白銀の全身鎧…
[良い点] アニメを観たこともあるけれど、文章から映像が想像しやすく、 毎度笑いながら楽しませてもらっています。 [気になる点] ダメージを受けたのに初ダメージは取っておきたいというのは おかしいので…
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