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防御特化と刀。

申し訳ないのですが更新ペースを落とします。

これからは毎週土曜日に上げます。

文量を少し多めにして、一週間あたりのストーリー進行速度はあまり落とさないようにするのでご理解下さい。


メイプルが壺に入った日から十日経った日、カスミはギルド内の自室でステータスなど自身の情報を映し出す青いパネルを見つめていた。

いや、正確にはその中の一点を見つめていたのである。


「くっ……」

能力値には何の価値もない物品を買い続けたカスミは今まであまり使うことがないまま溜め込むこととなっていた所持金をほぼ全て使い切っていた。

【楓の木】約五個分である。


第四層の町は鳥居を潜るたびに中心に近づく、また中心に向かうという性質から新規開拓されるエリアは次第に狭くなっていくのだ。

とは言ってもかなりの広さのエリアである。

しかし、カスミはそこに点在する骨董屋を網羅していた。

そこで品物を眺める時間はカスミにとって至福のひとときだった。


その熱意が財布の紐を緩めるでは済まさずに叩き斬ったのである。


「よし……これで買えそうだ」

カスミはモンスターを追加で狩って用意した資金を持ってギルドを出ると、漆と書かれた鳥居を潜り一つの店に入った。


「よしよし、誰かが買ってなくなってしまうことがないのはいいな」

自室で眺めている物がもう一度商品として店に並んでいるのはゲーム特有だろう。

未だ自室に持ち込めていなかった唯一の品物を手に取り所持金はポーション一つすらまともに買えない状態に戻った。


「いつも贔屓にしてもらって……ありがとう」


「ん?あ、ああ」

今まで一度も余計に話したことのなかった店主からの声にカスミが少し戸惑う。


「一つ……そうだな、これをあげよう」

そう言って店主は一枚の古びた紙をカスミに手渡した。


「わしの道具保管庫だった場所の地図だ……わしはもうそこまではいけない……好きに使ってやってくれ。道具達もいつまでも眠っているよりその方がいい」

カスミは店主にお礼を言うと貰った地図を見ながら店を出た。


「フィールドの……端の方か?行ってみるか……?」

今の段階でこの町で買うことの出来るものは買い尽くした。

そして所持金もほぼゼロで死ぬことも怖くない。

となれば行くしかなかった。



暗いフィールドを時折地図を確認しながら端へ端へとひた走る。

そうしてカスミが辿り着いたのはぱっと見て特に何もない平地だった。


「この辺り……いや、もう少しこっちか?……ここか!」

カスミの足に地面から少しだけ飛び出していた取っ手が当たった。

地図で場所を把握していなければこの暗闇の中で見つけることは出来なかっただろう。

カスミは周りの土を払うとぐっと力を込めて持ち上げた。

砂煙を上げながらバカリと蓋が開き、より真っ暗な地下へと続く階段が目に飛び込んでくる。


「……行くか」

この町に来てから買った提灯のうちの一つをインベントリから取り出して階段を下りる。

赤い炎が周りを煌々と照らし出す空間にカスミの足音だけが響く。

階段を下りきった先には鉄製の扉があった。


「……よし!」

カスミは期待半分不安半分で扉を開けて中へと入り、提灯を掲げて辺りを照らす。


「何も……ない?」

だだっ広い空間には何一つ物がなかった。保管庫というには相応しくない状態である。


「何か条件でもあったのか?……分からないな」

その時、諦めきれないカスミの耳が破壊音を聞き取った。


「何か?いるのか?」

カスミは刀を抜き警戒しつつ部屋の奥へと向かう。

提灯の明かりが見えていなかった部分を照らして行く。

そこには幾つもの道具の残骸。

折れた刀、割れた壺、砕けた水晶玉。

そしてその中心にはふわりと空中に浮かぶ薄く紫がかった刀。


その刀が周りの物に触れるたび破壊音が響く。それはまるで刀が物を喰らっているかのようだった。


「……来るか!?」

刀がカスミに気付いたようにその切っ先を向けるとカスミも同じ様に自らの刀を向けた。

刀がカスミを敵と見なしたのか、その刀身が紫に輝く煙のように揺らめく光を纏った。

一瞬、刀が震えたかと思うと床と天井に紫の炎が現れ提灯無しでも十分に視界が確保出来るようになった。

カスミが素早く離れつつ提灯をしまうものの刀は攻撃を仕掛けてこない。


「来ないのか?……いや、油断は出来ない」

カスミは嫌な雰囲気をあの刀から感じ取っていた。

そしてそれは正しかった。

次の瞬間、刀が高速でカスミに向かって飛来してきたからである。


「ふっ……!」

カスミは短く息を吐き浮かぶ刀と斬り結ぶ。ただ、使い手のいない刀は変幻自在に動くことができ、軌道が読み辛い。


「シンの……相手をしたのが役立ったかもなっ…!ふっ!」

キィンと音を立てて浮かぶ刀が弾ける。

カスミは再び距離を取り相手の出方を伺った。

しかし、刀はカスミが油断なく見ているその中で一瞬で姿を消した。


「なっ…!?あ?」

次にカスミの視界に映ったのは自分の胸の中心から生える紫色の刀だった。

それも一本だけではない。

足、腹、腕、至る所に刀が刺さっている。

見覚えのある、いや、使った覚えのあるスキルに似た攻撃。


次に目を開けた時、カスミは第四層の町にいた。


「……ふっ。ふふふふ。面白い……誰かに取られる前にやってやるからな!刀に負けてなどいられない!」

悔しさ半分、やる気半分でカスミは対策を考え始めた。



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