防御特化と報告。
つなぎの話なので短いです。
メイプルの攻撃は甲殻を失ったモンスター達にしっかりとダメージを与えることが出来た。
モンスター達がメイプルにダメージを与えることが出来ないために、何事もなく戦闘はメイプルの勝利で終わることとなった。
「よっし!最後の一匹!」
メイプルの銃弾が最後のモンスターを仕留めた所でメイプルの視界は暗転し、気付けば元いた店の中へと戻っていた。
「店の人……いない?おっと!」
メイプルの目の前にクエスト達成のパネルが現れる。
メイプルが得たものは一つのスキル。
「【蠱毒の呪法】?何だろう?」
【蠱毒の呪法】
毒系統スキルに20%の即死効果を付与する。
「おー……おー?なるほど……一応【毒無効】も乗り越えられるんだね」
【毒無効】や【毒耐性】を備えたプレイヤーやモンスターが増えてきているために使い辛くなっていた【毒竜】は、その範囲の広さで多人数の【毒無効】を持つプレイヤーを巻き込みその内何人かを倒し、対メイプルの情報を歪める力を手に入れたのだ。
「そのうち試してみようかな……今はとりあえず……」
メイプルは店主がいなくなった店を出ると、軽いとは言えない足取りで一つの店へと向かった。
「うう……許さないからね」
メイプルは壺の中のモンスター達に恨みをぶつけながら買ったばかりだった着物を再度購入する。
「満喫するからいいもん、いいもん!」
必要経費と割り切ってメイプルは再び町へと繰り出していった。
そうして各自存分に探索を行い、それから数日後、ギルドに全員が集まっていた。
そしてそれぞれが成果を話し合う。
「じゃあメイプルは?」
サリーがメイプルに話を振る。
「私は即死効果を手に入れて着物買ったよ!」
「……うん、後でゆっくり話すとして」
サリーは情報をまとめて話し始めた。
サリーが話し始めたのは通行許可証のことだった。
通行許可証がなければこの町での探索は十分に行えない。
そして、その通行許可証のランクを上げるためには面倒なクエストをこなしていかなければならないという訳だ。
クロムやカスミなども既に知っていたが、その手の情報を積極的に集めることがないメイプルにとっては初耳となる話だった。
「じゃあ私達の通行許可証は凄いってこと?」
「まあ、かなりのアドバンテージになると思うよ」
多くのプレイヤーが必要とする工程を何段階も飛ばしているのだから有利なのは間違いなかった。
その後、それぞれがここにこういったクエストがあるなどを話し合ったが、メイプルの受けたクエストに挑戦したそうなメンバーは出てこなかった。
「じゃあまた何かあれば!」
メイプルがそう言ったことで話は終わり各自やりたいことに移っていった。
カスミはギルドの中、割り当てられた自室へと入り扉を閉めた。
「はぁ……幸せだ……」
カスミの部屋に所狭しと並んだ物は全て第四層に入ってからここ数日で購入したものである。
見た目に惹かれた陶器や刀など、戦闘には一切関係させることのない物達だ。
現実とは違いこちらでなら多少荒い金の使い方をしても問題なかった。
それ故にカスミは多少、いやかなり買い過ぎたとも言える。
「もう一度買いに行くか!……そろそろ稼がないとまずいな」
青いパネルに表示されるゴールドの額が心許ない数値になってしまっている。
カスミの買っているものは決して安くはない。むしろ高いのだ。
それでもカスミは今までで最も楽しんでいた。
「誰より早く奥へ行きたいな、ふふ」
カスミはそう言って、取り出した陸と書かれた通行許可証を眺める。
「よし、行くか!時間が惜しい」
通行許可証をインベントリに戻すとカスミはギルドを飛び出した。




