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防御特化と三日目朝。

そうして夜の間続いた破壊の行進は朝の六時に終わりを告げた。

手に入れたオーブを全てセットして自軍オーブも元に戻した所で今回の作戦は終了である。


「はー……疲れたー!こんなに走ったの初めてだよ……」

未だ化物形態のメイプルがそう呟く。

サリーの危機管理によりほとんどダメージを受けなかったメイプルだが、疲労は別である。

しかもここまで動いたのは初めてとなれば疲れるのも仕方ないことだろう。


「ちょっと寝てきてもいい?何かあったら起こしに来てくれたら……」


「うん、大丈夫」

そう言うとメイプルは元の姿に戻ることなく奥へと消えていった。

壊される前に解除するのは流石に惜しいため当然だろう。


「大規模ギルドが来たら予定通り誰も倒されないように適度に戦って終わりでいいな?」


「うん、それでいい。自軍オーブは持ってメイプルの所へ駆け込もう」

【楓の木】は小規模ギルドに分類されてしまうため、オーブを奪われたギルドは大きい減点は避けたいと考え何とか奪い返しにくる可能性が高い。

現状【楓の木】にあるオーブは十個。

そのうち七個が大規模ギルドのオーブである。


どのギルドもやってくるならば、目的地が同じなため【楓の木】に入る前に潰し合いになる可能性はかなり高い。

また全てのギルドが団結したとしてもそれは一時の結束に過ぎず、オーブを奪い合う相手が変わるだけだ。

取り返しに来ないというのならそれはどこかのギルドを襲っている可能性が高い。

十個のオーブがどう動こうと多くのプレイヤーがどこかで何らかの形で倒れるだろう。


展開を早めようとしている【楓の木】にとって欲しいのはオーブよりも潰し合いが起こる状況なのだ。

故に防衛が失敗しようと成功しようと大した問題ではなかったのである。


「今のままでも十位以内はいけそうだしな……スタートが良かったからな」


「僕達は逃げ切り狙いで……さて、来るかな?」

全員がそれぞれ入り口を警戒しつつ夜の間に溜まった疲れを抜くことに努めた。






七時を少し過ぎた頃、大盾を構えたプレイヤーを先頭にして防御を固めつつ七十人程のプレイヤーが入ってきた。


「……潰し合った後かな?」


「ああ、かもな。俺も人数が少ないと思うぞ」

それでも多いことには変わりはないのだが、大規模ギルドが攻めてきたにしては少ないと言える。


【楓の木】の布陣はサリー、クロム、カスミを先頭にしつつ続くユイとマイの正面を開ける形である。

ユイとマイの間にはイズがおり、最後方にカナデがいる。


ユイとマイの正面が開いている理由はもちろん鉄球を投げるためだ。


「「えいっ!」」

激戦を繰り返していた盾は繰り返し鉄球を受ければ砕けてしまう。


「追加よー」

かといって球切れを狙おうものならユイとマイの間で工房を展開しているイズから鉄球が次々と生産されるというのだから正気ではない。


ただ、それでも強力な盾と数の暴力で前へ前へと進んでくる。

ユイとマイの鉄球が必殺の威力を持っていても、全員に同時攻撃が出来るわけではないため全員を足止めすることは出来ないのだ。

そして当然派手に先制攻撃をしている三人は魔法の標的となり、三人に魔法が撃ち込まれる。


「【カバームーブ】!」

クロムが三人の前に移動して盾と体で攻撃を受け止める。

かなりのダメージが入るがそれでも盾とスキルの回復効果で持ち直す。

クロムは死ななければ立っているだけでも回復していくうえ、死ににくい要素を幾つも持っている。

メイプルがいるため目立たないことが多いが、厄介極まりないのは確かである。


「【氷雪大地】」

カナデが使った薄い青の魔導書が今まさに進もうとしているプレイヤー達の足を氷で地面に縫い止める。

行動不可になるのは僅かに五秒。

しかし、ただユイとマイの的になるには長過ぎるように感じられる時間だ。

一人、また一人と盾を叩き割られていく。死ななくとも装備にダメージを与えられるとこのイベントの性質上かなり厳しくなる。

既に損害は大きくなってきていた。


「朧、【影分身】」

サリーは適当に【影分身】で攻撃する。

サリーは多人数相手の防衛戦には向かないため、適度に援護しつつ相手を混乱させるようなスキルを使って精神的ダメージを稼ぐという戦法を取っていた。

カスミは前衛の盾持ちを瞬間移動で切り捨ては【跳躍】で離れるといったヒットアンドアウェイに徹している。


この七人はそれぞれに強みがあり、それを発揮している時はそれ相応のプレイヤーでなければ何人いても意味を成さないのだ。

一線を越えた強さがなければまともには戦えない。


そして、これだけ激しく鉄球のぶつかる音がしていれば入眠から一時間経つかどうかといったところの親玉も起きてきてしまうというものである。


奥の通路からのっそりと、眠りかけているのにうるさいと這い出してきた化物に侵入者達が露骨に嫌な顔になる。


「静かにして欲しいから!倒すよ!もう!」

一線を越えた者が何かを踏み外すことで出来上がる化物がさらに支援を受けている状態なのに、一線を越えてすらいない者がそれを倒すというのは流石にありえないことであった。




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