表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/574

防御特化と進歩。

次の投稿は十月三日です。

カスミは一気に攻撃に転じるチャンスを待っていた。

シンは盾を持っているため、以前のイベントでサリーに放った【終ワリノ太刀・朧月】では受け止められてしまう可能性がある。

このスキルは発動後にステータスが大幅に減少し、一部スキルが使えなくなる。

その代わりに、高威力かつ高速だ。


一対一の場面でのみ使える奥義という訳である。

本当に、シンが盾さえ持っていなければ今すぐ発動しているところだ。


「はっ…!ふっ!」

カスミは体を捻り、刀を振るい飛び交う剣から逃れる。


カスミがシンに近づけないでいるのは何と言ってもこのリーチの差である。

加えて前回戦った時と比べて剣の操作が上達していたためでもあった。

このままではじりじりとやられていくことを実感したカスミは自ら打って出た。


「【四ノ太刀・旋風】!」

高速の四連続攻撃。シンはそれをきっちり盾で受け止める。

反撃の剣が飛んできてカスミのHPを減らすもののまだ耐えられる。

【崩剣】は一撃の威力と引き換えに手数を手に入れるものだ。

全ての剣がクリーンヒットしない限りはまだ生き残れる。


「【七ノ太刀・破砕】!」

ノックバック効果を持った大上段からの斬り下ろし。

シンはこれを受け止めて後退する。

このスキルの本当の性能は両者の装備に大きいダメージを与えるというものだ。

当然、敵の装備に与えるダメージの方が大きいが、自分の武器に返ってくるダメージも馬鹿にならない。


つまりカスミは自分のHPがなくなる前にシンの盾を破壊することで、一気に勝利することが最善であると考えたのだ。


「思ったより……っ、攻撃力上がってるねぇっ!!」

シンは押し込まれないようにカスミの背後から手元へと戻して牽制する。


そして。


「【崩剣】!」

二度目のスキル発動。

カスミの知らないシンの新たな力。

シンの剣はさらに小さく、二十本に分かれた。

シンはそれで面攻撃を仕掛けたのだ。

壁のようにして正面から剣が迫ってきたことが予想外だったのもあり、カスミはその多くを受けてしまった。


一つ一つのダメージが小さいとはいえ、回復している暇もないのだから、HPは既に限界だった。


「……仕方ない、か」

そう言って、カスミは全身から力を抜いた。


「今回は勝たせてもらうよ!」

先程と同様の面攻撃がカスミに迫る。


「【始マリノ太刀・うつろ】」

カスミの髪が白く染まり、瞳が緋色の輝きを放つ。

シンがその姿を見て強く警戒する。

前回負けた時は、この姿になったカスミにやられたためだ。


警戒するシンの前で、カスミの姿は消え去った。


「……っ!どこだっ!?」


「ここさ」


シンの真後ろから聞こえた声。

そして、シンが振り返るよりも早くシンの胸部から二本の腕が生えた。


正確には、背中側からカスミの両腕が貫いていた。


「……くそっ、また負けか」

そう言い残してシンは光となって消えていった。


「……今回は引き分け、いや、負けか」

一人残ったカスミは呟く。

先程のスキルにも【終ワリノ太刀】と同様に代償がある。

それはステータス減少などではない。


そう、それは装備の耐久値を大幅に削るというものだ。

そして既に消耗していたカスミの装備品は、装飾品を残して全て壊れた。

当然、刀も失っている。


「まさかここまで壊れるとは……少し消耗し過ぎていたか……」

この状態で他のプレイヤーと遭遇してしまうと危険である。

そのため、カスミは予備の武器を急いで装備して【超加速】を使ってギルドへと駆け戻ることにした。


「はぁ……大事にしていたんだがなぁ」

愛刀を失ったことで、カスミのテンションは下がる一方だった。




ギルドに戻り、イズに刀を作り直してもらえることとなったカスミのテンションが急上昇するまで後五分である。





カスミがシンとの死闘を終えた頃、メイプルは破壊を振りまいて歩いていた。


「次はー……こっちか!」

歩くのが面倒になったメイプルはシロップの背に乗って飛ぶことした。

当然非常に目立つ。

ギルドの近くまで行くと地上から叫ぶ声が聞こえる。


「【アシッドレイン】」

プレイヤーを蝕む雨が地面に向かって落ちていく。


「あーめーよーふーれー!」

そうしてしばらく雨を降らせていたメイプルはプレイヤーが減ってきたことを確認して地面へと飛び降りた。


「【捕食者】」

既にダメージを受けてしまっているプレイヤー達は化物が何度か攻撃すると倒れていく。


「では、オーブは貰っていきます」

メイプルは次の標的をマップで確認して崩壊したギルドを後にする。


「んー……【暴虐】で走っていきたいけどまだ駄目だし……サリーの素早さだけ借りれたらいいのになぁ」

そんな都合のいいことは今のメイプルには出来ない。

精々背負って走ってもらうくらいのものである。

サリーが寝込んでいる以上、それが出来るようになるのもいつになるかは分からない。


「やっぱりシロップに乗っていくのが一番早いかな」

メイプルは目立とうがどうしようが関係なく進むだけであった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ