防御特化と予想外。
きりのいい所で止めますが、文量が少な過ぎるので、例外として明日に続きをあげます。
深夜一時。
サリーは一度も拠点に帰ることなくオーブ奪取に専念していた。
得られたものは多い。
サリーのインベントリには十個のオーブが入っていた。
それだけでも驚異的だが、サリーの目的はオーブを奪うことだけではなかったため、帰るわけにはいかなかったのだ。
しかし、その目的もようやく終わろうとしていた。
「ふぅ……そろそろ帰ろう」
ぐったりとするサリーはそれでも走り続ける。
止まれば追手がやってくるのはもう随分前から変わらない。
「……ん?」
サリーが立ち止まり岩陰に身を隠す。
もう一度集中し直すとはっきりと分かるプレイヤーの気配。
それも十、二十ではない。
もっと多く。
そう、百よりも多い。
「囲まれてる……!」
疲れのせいで気づかないうちに索敵能力がいつもより下がっていたのだ。
バラバラと広い範囲で物陰に隠れているプレイヤー達に居場所がバレていることは明白だった。
「………このオーブのどれかが、大規模ギルドと繋がってた……!」
サリーはその答えに辿り着く。
しかし、どれかは確定させられないためオーブを捨てて逃げるわけにもいかなかった。
「……逃してはくれない、よね」
サリーは手早くパネルを操作するとマップを確認し【楓の木】のメンバーの位置を確認し、メッセージを一つ送るとドーピングシードを五つ取り出した。
「……何としてでも帰ろう」
覚悟を決めたサリーのいるエリアが昼間のように明るくなる。
誰かの魔法が空に小さな太陽を浮かべており、これにより暗闇に紛れて逃げることも出来なくなった。
罠にかかったプレイヤーを確実に倒そうと準備をしていたのは明白だった。
「……相手としては、運良く大物がかかったってわけか」
サリーはドーピングシードを全て飲み込むと岩陰から出た。
囲んでいたプレイヤー達も次々に潜伏を止めてサリーを取り囲む。
攻撃がしやすいようにある程度プレイヤーごとに隙間はあるが到底抜けられそうにはない。
「よし、追い詰めた!いくぞ!」
声を上げて突撃しようとしたプレイヤー達はしかしその足を止める。
「追い詰めた?誰を?」
それはサリーの雰囲気が変わったためだ。
集中しているなどという生易しいものではない。
サリーから発せられるのは最早明確な殺気だった。
一歩動けば死ぬ。そう思わせるギラついた目と裂けるような笑みがサリーの顔に浮かんでいたのである。
自分達が不利なのではと錯覚する程の存在感がサリーにはあった。
サリー自身、疲れが吹き飛んだように感じていた。
一周回って限界を超えたところに普段以上の力の源があったのだ。
感覚は研ぎ澄まされ、身体が軽くなっていく。
「さぁ……生き残ろう」
サリーは心を奮い立たせてダガーを構えた。
メイプルが誰も襲ってこないために暇を持て余していたところにメッセージが届く。
「サリーから?何だろ?」
そこにはたった一行だけ。
多分死ぬ。ごめん。
とだけ、書かれていた。