表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/574

防御特化と明日にむけて。

十月からどんどん忙しくなるため更新ペースを徐々に落とします。

ご理解ください。

取り敢えず十月は三日に一話でいきます。

カナデがオーブを奪う中、サリーは変わらず闇夜に紛れてギルドを襲っていた。


「朧、行くよ」

サリーは首元の朧に声をかけて静かに小規模ギルドへと忍び寄る。

屋外にあるギルドは松明などのアイテムによって明るさを保っていることが多いため、遠くから見ても場所が分かる。

襲われやすくなってしまうとしても、明るくしておく必要があるのはサリーのようなプレイヤーがいるせいである。


サリーも夜になってから、歩き回るプレイヤーが増えたことを感じていた。


「人数は……十五人か」

全員を倒すことも可能ではあったが、サリーは戦闘は避けたかった。


目立たないためにそうしようと決めたサリーだったが、心のどこかで、疲労が溜まっているから戦闘をしたくないとも思っていたのだ。


サリーは歩き回る見張りが背を向けたその一瞬で駆け出す。


「【超加速】!」

もつれそうになる足を動かして、オーブへと一直線に進む。

邪魔するものは切り捨て、魔法で妨害する。

一日の内に何度も繰り返した奇襲の動きは一回ごとに洗練されて無駄のないものになっていっており、元々のサリーの能力も相まって、少し強い程度のプレイヤーではもう打ち破れなくなった。


「【跳躍】!」

地面を蹴ってオーブに手を伸ばす。

インベントリにオーブが吸い込まれたのを確認して、そのまま台座を飛び越えて疾走する。

サリーは立ち止まることは出来ない。

現在、インベントリには今のを含めて三つのオーブが入っているためだ。

常に追手が襲いかかってくる危険があるのである。


「はあっ…!次っ!」

一つでも多くのオーブを得るために。

サリーは止まらないし、誰もそれを止められない。


「朧、【狐火】!」

サリーは朧の炎で先ほどのギルドの追手の足を止めてさらに距離を離す。

ギルドを防衛するのは基本足の遅いプレイヤーだ。

【楓の木】がメイプルを防衛に置いているのもその為である。

となると、一度奪ってしまえばサリーのようなプレイヤーにとって逃げるのは容易いのだ。


追手の足を止めて、暗闇に紛れて見失わせて、後は奪われたオーブの位置をマップを見て確認している内に攻撃の届かない場所まで行ける。

それでも追ってくるようであればどこかのギルドに突っ込めばいい。


「次……次は……ん?」

サリーの視界の端に映ったのは松明に照らされて煌々と輝くエリア。

防衛のメンバーが一人も見えないというこの上なく手薄なギルドだった。


「いける……!」

サリーは進行方向を変えてそのオーブを取りに向かった。

罠かもしれないと警戒しつつ、それでいて迅速に近づいたが、結局一人のプレイヤーも出てこなかった。


「……奪われたオーブが再生したところだったかな?地形から見るに中規模ギルドだね」

このギルドのプレイヤーが戻ってきてしまうと面倒なことになるため、サリーは足早にその場を去った。



その頃メイプルはカナデが持ち帰ったオーブの防衛をしていた。


「【水晶壁】!」

シロップの背中に乗るために跳ね上げられた時に使ったきりだった【水晶壁】は今回のイベントで素晴らしい活躍を見せている。

目の前にいきなり障害物が現れ立ち止まった所を撃破、このパターンで数を減らし、次にメイプルによって死ななくなった前衛をぐいぐいと押し付けていく。


メイプルのサポートがこの上なく強力なのだ。ユイとマイは何度も何度も攻撃を受けているし、クロムも囲まれている。

なのに、崩壊するはずの前線はいつまでも残り、回避を捨てた攻撃により命を失ってしまう。


メイプル側には回避という行動がほぼない。それに対し、攻撃側は相手の攻撃を避けなければならない。

ここに殲滅力の差が生まれる。

攻撃に使える時間が圧倒的に違うのだ。


メイプルを倒せなかった彼らは当然のように敗北した。


「ふぅ……終わったね」


「そう……ですね……」


「疲れました……」


「そろそろ一日目が終わるしな。交代で眠るか?」

クロムの提案に全員が賛成する。

サリー、イズ、カスミは現在外出中なためローテーションに組み込めないので、人数を考えると二人ずつ短い時間休むのがベストということになった。


「ユイとマイからにする?私は基本はいた方がいいかな?」


「んー……メイプルがいない間は僕が防衛に入るよ。範囲支援も出来るしね。後は、僕も二人からでいいと思うよ」

ユイとマイの疲労はピークである。

そろそろ休む必要があった。


「じゃあ、早速休んできて」

眠る時間を決めて、二人を送り出す。


「イズとカスミはそのうち帰ってくるだろうしな」

二人が帰ってくれば防衛がより楽になるためユイとマイを今休ませても特に問題はなかった。


「ここからが大変なんだよね」

防衛人数が嫌でも減る時間帯に差し掛かっている。

ここで隙を狙って攻撃に転じるか、堅実に防衛に徹するかはギルドの人数と現在のポイントによって変わるだろう。

【楓の木】はポイントを稼ぎつつも、防衛は絶対に成功させるいう面倒なことをしなければならない。

それも八人でだ。


「頑張ろう。五日目まで生き残るために皆を守る。うん、そう」

メイプルは決意を新たに深夜を迎えた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ