調査開始!
―下校中―
ええと、戻ったよね?私の体。そんなことより、みのるは私に一度も相談してくれなかったな~。友達なのに。
『そりゃ、話しずれーだろーな。』
うん。わかってるけど…いくらナイトが体を使うとはいえ、私本当に人殺しに行くんだよね?
『そうでしょう。もうみのるさんの家に着いてしまったのですから。』
え?近くの家を見ると・・・。あ、あった!って、どうしよう。着い・・・
『どうしよう着いちまったー!』
あ、それ私が先に思ってたのに。それにしても大きいね~。二階建てでふつうの家の2倍ぐらいある大きさの青い屋根の家。ご、豪邸。
「絶対ここだよ・・・。」
『あ、あのさ。みのるも十分頭いいし、あ、あたしが殺さなくても生きていけるんじゃないかなあ~。』
『でしたら、確かめればいいのでは?魂の状態なら、壁も通り抜けられます。』
『あ、ああそうだな・・。』
じゃあ、頑張って見てきて!すると、ちょっとくらっとしたかと思うと、透け透け透明のナイトが現れた。
「あ、ナイト。頑張ってね!」
「う…できれば殺したくねえ。」
うわあ、人の家に勝手に入るなんて今まで一度もねーよ・・。
「お、おじゃましまーす・・。」
どうせ聞こえねーけどな。なんか暗いな。電気つけないのかよ。
「おいみのる、今日テスト返ってきたんだろ?」
「うん・・・。」
あの人間がみのるの父か。
「早く出してくれないか?今回は百点とれてるよな?」
みのるはうつむいたまま、父親に紙を渡した。
「・・八十八点・・なんだこの点数は!」
「ごめんなさい。」
みのるは目をつむって言った。
「今日はいつもより十分も帰りが遅いじゃないか!そんなに勉強が嫌いか?そんなになぐられたいのか!」
ドン!バタン!父親はみのるを殴って床にたたきつけた。みのるもなんかいえよ!
「私の子供が市の中学校に行くなんて認めないからな。どうせなら死んだ方がいい。こんなできの悪い子供に育てた気はないんだよ。」
「ちょっと、みのるに何するの!?みのる、大丈夫?」
「大丈夫。私が、百点とれなかったからこんなことになったんだもの。」
アザだらけじゃねえか!よく言うな。それに、八十八点で殴るなんて最悪だろ。
「うるさい!私はみのるにいい中学に入ってもらいたいんだ!」
父親は母親も殴る。すると母親はガラス窓に突っ込んでガラスが割れた。それと同時に母親の背中も血が出る。
「嘘よ。」
「なんだと!?」
「嘘よ嘘よ!私、頭のいい中学にいきたいなんて一度もいってない。幼なじみの友達のすずと一緒に中学生活をおくりたいの!だれも友達がいないところなんて行きたくない!」
みのる・・爆発したな。
「学校は子供が決めるところじゃない!口出しするな!」
そんなことないだろ。すると次の瞬間、バリン!父親はみのるを割れたガラス窓の破片のところへ突き飛ばした。
「もうみてらんねー!」
あたしはいそいで家から出た。
「すず。みのるの父は最悪の親だ!」
い、いきなり言われても・・そういえば、ガラスが割れた音がしたような。まさかみのるのお父さんが!?
「とはいっても、あたしに殺すこと何てきるのかよ。でも、このままじゃみのるとみのるの母が…。」
少しの間、静けさがやってきた。なんか・・死神って大変だね。
「でも、これも死神の仕事だ・・・。逃げてちゃダメなんだ。」
ナイトの目は、まっすぐだった。私は、それがみのるのお父さんを殺すと決心した目だとわかるまでは、少し時間がかかった。
バリン!
「なんだ!?」
ここからじゃ見えない・・・。中庭があるってことだよね?中庭なら近所の人にも見られないんだ。
「ねえ、あんな目にあっているんだったら警察に電話すればいいじゃん。」
「それが、家に電話なんてなくて、携帯も父親のところにまとめておいてあったんだ。公衆電話を使うにしろ、母親は家から出てはいけないみたいだな。みのるはお小遣いもらえないみたいだし。」
え?なんでそんなことまで知ってるの?
『死神は、人間の情報をすぐに察知できる能力を持っているのです。一目見た人間の情報は頭に入れておくのです。』
え?じゃあ私のことも?
『そうですね。』
「とにかく、あたしは覚悟を決めることにしたんだ。いいよな?」
「うん。人間としては、言ってはいけないことかもしれないけど。」
「体貸せ!」
そう言って、ナイトの透明な体はきえ、私の体に違和感を感じると、もうすでにナイトが私の体を使っていた。