みのるの涙
―放課後―
で、どうしようかなあ・・。私は教室で委員会にいっているみのるを待っていた。帰っちゃおうかと思ったけど。そんなことしたらたぶん絶対嫌われる。
『話せばいいじゃないですか。』
『話したら、そいつからいろいろ聞けるかもしれないしな。』
『ナイトは三人の人を殺さなくてはならないので、みのるさんからいろいろ聞き出せるかもしれないですよ?』
殺すって・・・なんかやだなあ。どうせ魔術的なものかけるの私の体なんでしょ?私が殺すみたいなもんじゃん。
『あたしだって嫌なんだよ。人間を殺すなんて。』
死神も大変なんだね。
『死神の使命なんだ人を殺すぐらいなら、自分が死んだ方がましって一瞬は考えたんだが、それじゃあ逃げてるみてえだからな。』
『殺すのなら、わたしは誰でもよろしいと思いますが。通行人などを三人殺せばそこで修行おわりですから。』
それは、つまり私がその通行人だったら殺されるってことだよね。
『まあ、そうですよね。』
チャームが死神じゃなくてよかったよかった・・。
「ごめん。委員会の仕事遅れちゃった。で?ここなら二人だけだし、秘密のことなら話せるでしょ?幼稚園の頃に・・」
「わかったわかった。たぶんそれ給食の時に聞いたから。」
「で?何?隠してることって?」
目を細めて質問する。深呼吸。すう~はあーす~はー。
「あのね・・・。」
私はしょうがなく、すべて話した。
「本当なの!?わあ。いいなあ。」
し、信じてる?しかもいいなあとか言ってるし。ねえ、みのるってカバなのかな。ふつうこんなあっさり信じないよ。
『そう言う方もいるんですよ。それと、カバじゃないと思います。』
『まあ頭のいいすずや、運動神経いいすずみったことなかったんだろうな~。』
というか、勉強できない私も、運動神経悪い私も、見てないでしょ、ナイト!
「ねえねえ。それだったら、死神になにかお願い・・できる?あ、やっぱりいいわ。」
『ちょっと体貸せ。』
ちょ、ナイト!
「ああ。なんだ?」
「え?すず?」
「あたしは死神のナイト。今人間界で修行中だ。すずにも許可をとって体をかりてる。」
『とってない!』
ちょっと引っ込んでろよ。
「で、あたしに何のようだ?」
「・・・。こんなこと思う私って、心が汚れてるのかもしれないけど。殺してほしい人がいるの。」
『みのるに・・・殺してほしい人?』
「だ、だだだ誰だ?」
あたしが人を殺すことがこんなに早く来るなんて。
「私の・・・お父さんよ。」
『え?お父さん?ねえ、もう私に変わってよ!』
いいや。死神の仕事は死神がするんだ!
『もう・・体を使いたいだけでしょ?』
「どういうことだよ。親を殺せなんて!」
「こんなこと思う自分って大嫌い。でも、お父さんはもっと嫌い。お父さんは有名大学〔黒卯羽阿大学〕所属なの。」
『うそぉ!くろうばあ大学ってあの超超有名校!?受験が厳しくって全生徒数は毎年三十人程度なんだって。』
それはすげーなー。
「そのせいで自分は偉いんだと思い込んでるみたいなの。お母さんはお父さんと出会ったとき、こんな人じゃなかったっていってたの。きっと、お母さんをだましたのよ。子供をつくるために。私が生まれるまでは、とてもいい人だったっていってたの。自分の名をあげるために、私まで黒卯羽阿大学に行かせようとしてるのよ。」
「いきたくねえのか?」
「私は・・・自分のいきたい中学校、高校、大学がいいの。お父さんの言う学校なんて行きたくない。どうせ私のことを思っているわけでもないのだから。」
急にみのるは泣き出す。
「ちょ、ちょっと、こんなところで泣くなよ!すずが泣かせてるみてーじゃねえか。」
『何を泣いているのです?たかが小さなことで。』
『ちょっと!たかがって何?私の親友だよ!チャームは人間の気持ちがわからないの?』
『申し訳ありません。全くわかりません。』
もーーー!うるせーな。
「ないてんじゃねえよ。あたしが何とかしてみせるから!ぶっ飛ばしてやるからな!」
「すず・・・じゃなくって死神さん。」
泣き虫の顔見るといつもうこうなるんだ。あたしに人殺しなんてできんのかよー!