大丈夫なのか?これからの一か月
う、う~ん・・・。は!わ、私生きてる!?たしかボールをとって池に落ちたんじゃ・・・。私はとりあえず辺りを見わたす。そばにはすぐ池がある。そして小さな子がもめ合ってる。ん?・・えっ!?す、透けてる?私は目をこすってもう一度小学中学年ぐらいの二人を見る。や、やっぱり透けてる~!
「ゆ、幽霊!?」
思わず大きな声を出しそうだったので、口を押さえた。わ、私死にかけたことで目覚めた?れ、霊感に!
「ああ、もうどうすんだよ!」
「ナイトが先に人間に触れたのでしょう?」
幽霊なのに触れられるの?
「先生たちが人間界にくるまで、しばらくこのままってわけか・・・。」
このままってどのまま?
「あら?あの人間・・・起きてますよ。」
「えっ!?」
二人の幽霊は急いで私に駆け寄る。だ、大丈夫、幽霊なんていない、あれは妖精、妖精・・。
「きゃー!幽霊こないでー。」
私は急いで逃げる。霊感なんて目覚めたくないよー!
「ちょっと待てよ!あたしたちは幽霊じゃねえよ。」
「死神と女神なのです。」
え?死神と女神・・・?
「よく聞けよ。実は・・・。」
湖でおぼれてるおまえをあたしたちは、助けたんだ。で、その後すぐ近くの芝生におまえを運んだんだ。だが、おまえをはなした瞬間、激しい光と痛みに包まれ、気付いたらあたしたちはおまえの一部になっていた。
「は?ご、ごめん意味わかんない。」
「実はわたしたち、死神と女神は、人間に一分間以上触れたままだと、その人間に強制的に乗り移ってしまうのです。」
「そう。そのことすっかり忘れててさ。必死で。あたしたちの学校長が来るまで一ヶ月間、あたしたちはおまえの中にいることになる。よろしく!」
「え、えええ~!」
「あ、ちなみに今透けてるのは、あたしたちの魂が外に出たって感じだ。あんまり長く外にいられねえが、普段はおまえに乗り移ってる。」
私はとりあえず塾に行くことに・・・。ほんと、なんで私がこんな目に・・・。つまり整理すると、死神と女神が私の頭の中に入ってるっていうか、私と一心同体。ってことだよね?
『ああ、その通り!』
え?なんで私の思ってることがわかるの?口に出してないのに・・・。
『それは当然です。わたしたちは一心同体・・つまり、心も体も一つなんです。』
はあ、まさか死神と女神が本当に存在するなんて。塾の授業中、そして下交通も、ずっとそのことが気がかりで、もう雨なんかやんでること全く気付かなかった。
「おかえり。すず。」
お母さんの声が聞こえるけど・・。
「ただいま。」
もういつものように元気にいえない。お母さん、心配したかな・・。
私は自分の部屋で、考え事をしていた。私、これからどうすればいいの・・・。
『おまえ、すずっていうのか。名字は?』
橋立。ねえ、ナイトとチャームはどうしてこの世界に?
『わたしたち、試験に合格できなかった死神と女神なんです。言ってしまえば、落ちこぼれです。』
へえ、そういう試験があるんだ。あ!私みたいに数学のテスト二十点とかとるんでしょ?
『は?なんでおまえそんな低い点とれんだよ。小学生のくせに。』
『わたしたちはあくまでテストの点が悪かった訳じゃないんです。わりと九十点代が多い方です。』
じゃ、なんで?
『あたしは人間を殺せないから来た。』
『わたしは命の意味がわからないからきました。』
そうなんだ・・。二人とも入れ替わればいいのにね。チャームが死神で、ナイトが女神になれば、うまくいきそう。と、楽しく語っている間に、夕食の時間になっていた。
「すず~ごはんよ~。」
『お!人間界のメシか。』
うん。今夜はカレーだって。ちょっと軽く宿題してから行こうかな。
『何いってんだよ。早く行こうぜ。』
いや、カレーまだ熱いと思うし、おかあさん私が来るまでよそっておいて待っててくれるからだいじょーぶ。
『だいじょばねえ、あたしがおなかすいてんだよ。』
すると、自分の体じゃないみたいに、体が機能しなくったと思ったら、勝手に私の体が動く。
「おお!これはあたしがすずの体使ってるぞ!」
たぶんあたしたちは、すずの体をいつでも意識すれば使えるってことだな。
『うそ!聞いてない聞いてない!』
じゃあ、さっそくカレー食べに行こうぜ!あたしはどたばた廊下を歩いて行く。
『ちょっと、私そんな歩き方しない!』
ここがリビングか?
「あ、すず。今日はずいぶんと早いのね。おなかすいた?」
「ああ!すっげえ腹減った。」
「え・?す、すず?」
『わーーーー!やめてよ!』
はあ、え、えらい目に・・。
「すず、どうしたの?急に口調変わって。熱でも出たの?」
「え?あ、ああ。そ、そのテレビの見過ぎかな。悪者役のまねしててね・・あは、あはは。」
とにかく笑ってごまかそう。うん。
『悪者役ってなんだよっ!』
「そう?じゃあ、おなかすいてるんだったら食べなさい。」
「は、はあ~い。あはは。」
「今日は野菜多めにしたのよ。ちゃんと食べてね。」
「うん。おかあさんのカレー大好きだよ。うん。はは、はは・・。。」
『なにがおかしいのですか?それほどおもしろいことがあったとは思えませんが。』
だから、笑ってごまかすって言ったでしょ。言ってはいないか。私は、カレーを口に入れる。ねえ、二人とも味わえるの?
『うん。感じるな。味。カレーっておいしいな。地獄の食べ物は人間の焼き肉とか、人間の血入りスープとか、グロイもんばっかなんだ。』
そういうこと言わないでよっ!食事中に。
『あら、どんなあじなんですか?』
だから聞かないでよ・・・。
『とにかく、ずっげえまずい。』
答えなくていいっ!