死神と女神と人間がつながる時
「どけどけどけーー!」
あたしは神ごみの中をかきわけていく。今日は一次審査合格発表日。そして不合格した死神の中から一ヶ月間人間界にいく死神発表の日。死神学校の生徒玄関の隣の窓に、紙が貼られていた。合格者欄を見ても、あたしの名前はのってない・・・。ってことは不合格!?また一年勉強しないとダメってわけか・・。そこに誰かの声が聞こえてくる。
「ナイト!おまえ修行生だぞ!」
「は、は!?」
あたしは急いで修行生欄に目をむける。あたしの名前が・・・あった。学年約千人の中から選ばれた五人中の一人。ってことは、人間界で修行!?そしてその試練に合格できなかったら・・・死。
「修行生は1ー1へ来てください。」
い、行かないと!
1-1
「ナイトさん。」
「は、はい!」
そこにいたのは学年主任のグリムリーパー・ブルー先生だった。死神とは思えないほど、優しいが・・・時々他の先生の十倍は怖い。
「あなたは筆記テスト九十八点。とてもすばらしい点でしたね。ですが・・・。」
先生の目がだんだん怖くなってくる。そして目を細めていった。
「死神なのに、人間を殺せないのは異常ですよ?人間界に行って人間を三人だけ、殺してください。それがあなたの課題です。しかし、三人に達しなかったり、四人以上殺してしまった場合は・・。死!ですよ。」
一瞬あたしの体が身震いした。
「はい・・。わ、わかってますです・・。」
すると、先生の声の調子が明るくなった。
「では、人間界、地獄、天国それぞれの世界をつなぐ、死女神公園の噴水に呪文をかけて人間界に行きましょね。」
あたしはうなずくと、すぐさま公園にむかった。
ないです・・。学校の玄関に張られている大きな何枚もの紙をみても、合格表にわたしの名前が・・・ないです。どうしましょう。一年間、年下の生徒と勉強するなんて、正直・・・嫌です。最後の一枚に必死に願いをこめて自分の名前が書いてあることを祈るしかありません。ええと・・・。あ、ありました!ありましたけど・・こ、これは修行生欄!?もしかして私、修行生・・・?
「チャームさん。」
その優しい声は、ゴッデス・フラワー先生。千人もの生徒一人一人のことを応援してくれて、とても思いやりのある先生・・・。
「チャームさんは、魔法の成績が少し悪いみたいね。それはいいとして、個人差があるから。でも、あなたは、人間を助ける意味がわからないそうね?それは命の価値もわからないことにつながっていくの。あなたの課題は、命の意味をしっかり校長に説明すること。わかったわね?もし合格できなかったら、あなたは女神として活動できなくなってしまうの。でも大丈夫。あなたならできるわ。」
「はい。」
「死女神公園の噴水で、呪文をかけて人間界へ修行にいくのよ。少しでも学べることがあるはずよ。」
「わかりました。頑張ります。」
少しでも早く、人間界にいかなくては!
「ここが人間界!日がまぶしい!」
黒いワンピースに紫のフリルが所々にある、人間界仕様に服装にかわってんだな。コウモリの羽がアクセサリーなのか背中の方にあるんだけど。ま、いっか。この公園、死神がくるという噂で、来る人がすくねえんだな。さっきから人間が数人しかみねえし。
「!!。痛っ・・・。」
噴水の中から、白いワンピースに、黄色いフリルが所々にあるけど、天使の羽的なものが背中についているやつが出てきた。きっと女神だな。
「あ、あら・・。死神さん?」
「あ、あたしはナイト。」
「わたしはチャームです。」
・・・。時が・・・とまった。
「ああ、その・・・人間界きれいだな。」
「え?天国もとてもきれいなところですよ?」
「だよな。天国だもんな。」
と、あたふたしているあたしと、空を眺めてるチャームは何をしていいのかわからず、その場に呆然と立ち尽くしていると。少し離れたところの湖でドボン!って音がした。
「な、なんだなんだ?」
私は急いで駆け寄る。
「ええと、わたしもいきます。」
池をのぞくと・・
「に、人間がおぼれてる!」
私は迷わず飛び込むと、沈みかけた人間を持ち上げようとする。うっ。人間で言う小学三年生のあたしの体じゃ、とてももちあがんねー・・。しかも人間は意識を失ってるし。
「お、おまえいたのか!?早く女神ならこの人間を助けろよ。」
え?
「どうして、死にかけてる人間を助けようとするのですか?助けたって、何もいいことなどありませんのに。」
「そんなこと言ってねえではやく助けるぞ!考えるのは後だ後!」
ナイトはどうしてそこまで命を大切にあつかうのでしょうか・・・。死神のはずなのに、女神であるわたしより人間の命を大切にしてるだなんて。わたしもナイトも、この人間界で学ばなければならないことがあるようですねっ!わたしはいそいで池に飛び込むことにしました。
「はあ、つっかれたー。・・・!な、何この光!?」
「ま、まぶしい…ですね・・・。」
わたしたちは、人間を芝生におろすと、激しい光と痛みに包まれていて…。いつの間にか、わたしたちは意識を失っていたのです・・・。